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1. 関節端の表面の被いは,たいてい硝子軟骨の関節軟骨Cartilago articularisでできている.(例外:胸鎖関節・顎関節などでは関節面が一部線維軟骨で被われている).関節軟骨は粗面をもって骨に固着し,その軟骨細胞は多層をなしており,軟骨細胞の配列の方向は重層扁平上皮における細胞のかさなりぐあいを想い出させる.すなわち深層では軟骨細胞が垂直方向の列をなしているが,表層では扁平になっている.関節軟骨の表面は肉眼でみると平滑であって鏡のように光つている.しかし顕微鏡でしらべると磨滅の徴候がたくさんに見られる(Hammar).また硝子軟骨の層が直接に骨につづいているのではなく,その間に石灰化した軟骨の層が介在している.

 軟骨層の厚さはまちまちであって,同一の関節の中でも一定でないし,体の各関節のあいだでも異っている.Wernerによれば最も厚い軟骨層(6mm)は膝蓋骨の後面を上下に走るたかまりにあり,最もうすいのは0.2mmである.概してその厚さは0.2~0.5mmというところである.

 関節軟骨はBrauneおよびFischerが証したように著しく変形できるのであって,実際の利用面は(たとえば膝関節において)運動が起ってから初めて生じるのである.--関節窩の軟骨は関節頭のそれより軟かい.(Bär, Arch. Entw.-mech.,108. Bd.,1926)

 軟骨の構築方向・張力分布・裂隙方向についてはHultkrantzの興味ふかい研究がある.彼は丸い錐のような尖った器具で軟骨の表面を刺して孔をつけ,孔のまるい形がゆがんでゆく方向をしらべた.この裂隙方向から関節軟骨における線維の走向と張力の模様を知ることができるのである.一硝子軟骨の機能的構造についての綜説をBenninghoffがErgeb. Anat. u. Entwickl., 26. Bd.,1925 にのせている.HolmdahlおよびIngelmark(Acta anat.1948)

は家兎において,はたらきつつある関節では関節軟骨の厚さが増すが,過度のはたらきと無活動ではいずれも組織破壊が起ることを示した.生きている人についてEkholmとIngelmarkが研究した所によると(Holmdahl, Ann. med. int. fennicae, Bd. 42,1953を参照せよ),関節の活動時には軟骨が急に("momentan")厚さを増し,その後もとの形にもどるというのである.

 2. 関節包Capsula articularis. Gelenkkapsel. 2つの骨の正常な結合を可能にしているのは,両関節端を共通に包むふくろ状の膜(ピンと張っていることもゆるんでいることもある)すなわち関節包である.

 関節包は単純に1つの関節面の縁から起って,もう1つの関節面の縁につく場合と,関節軟骨の縁よりうしろにある骨の一定部分を被うたのち反転して第2の骨に向い.いずれかの様式でこれと結合する場合とがある.骨との結合は常に骨膜を介して行われる.すなわち関節包は骨膜と比較的疎に,あるいは比較的かたく接合して,結局これと融合し,また関節軟骨の縁から先では骨膜から遊離している.

 関節包には滑膜層Stratum synoviale, Gelenkinnenhaut od. Synovialhautとよばれる内層と,線維層Stratum fibrosum, fibröse Schichtとよばれる外層がある.

 滑膜層は弾性線維のまじつた結合組織層で,その中に脈管と神経が存在する.その線維層の網のあいだにところどころ脂肪細胞が散在し,まれには軟骨細胞も存在する.腺はない.その反対に沢山あるのが関節腔のなかへ伸びだす突起で,これにはいくつかの種類がわけられる.

 a)滑膜皺襞Plicae articulares, Gelenkhautfalten, Synovialfaltenは脈管をもつ突起で,その脈管の豊富さは驚くほどである(図379).

 b)関節絨毛Villi articulares, Gelenkhautzottenはさらに小型の突起で,脈管にとぼしく,あるいはこれを欠いている.散在性の脂肪細胞や軟骨細胞をふくむこともある(図380).

 いくつかの関節にはかなりのひろがりをもった脂肪隆起Fettwülsteがあり,とくに大きなものが膝関節と股関節とにある.

 滑膜層の内面は以前に考えられたように内皮で被われているのではなく,結合組織が直接に関節腔に面している(図378) (Hammar, I. A., Arch. mikr. Anat., 43. Bd.,1894)

 関節包の線維層は関節により,また同一の関節でも場所によって厚さが違っている.

 この層を構成する強靱結合組織束はたがいに平行して,たいてい縦の方向に走っている.弾性線維はごくわずかしか存在しないことが多い.

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最終更新日13/02/03

 

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