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隣りあう線維束のあいだに時おり大小不定のすきまがあり,そこから滑膜層が外へ向って伸び出して,小さい袋をつくっていることがある.外科医はこれをガングリオンGanglionとよび,また俗にはÜberbein(骨の瘤)とよばれる.

 関節包の線維層が付着するところは,関節面の軟骨の縁からかなり隔つていることも, あまり離れていないこともある.(関節面の縁のすぐきわに付いている例は指関節の関節窩であり,ずっと離れたところに付いている例は大腿骨の頚にみられる.またFickが"Kapselrinne"(関節包溝)と命名したところの1つの溝に付着することもしばしばである(たとえば上腕骨の解剖頚,寛骨の耳状傍溝).

 血管は非常に豊富で関節血管網Rete articulareをなしている.神経終末はファーテル小体のかたちで多数存在している.

 近隣の筋や腱が関節包をどのように補強し保護しているかは,非常に重要なことであるが,関節学と筋学の各論で述べることにする.また種子骨とよばれる介在骨についてもやはりそこで述べる.

[図378] 関節包の滑膜層の垂直断(Braunによる)

[図379] 関節皺壁(滑膜皺壁)の断面(Hammarによる)

[図380] かなり大きい関節絨毛(Hammarによる)

3. 関節腔Cavum articulare, Gelenkhöhleは裂隙状の毛細腔にすぎない.骨の関節端と,そのほかの関節内容物ならびに関節包は,たがいに密接しているからである.これらの諸部分のあいだには,ごく少量の関節滑液がはいっている.

 滑液Synovia, Gelenkschmiereは糸をひく透明な液で,酢酸で混濁し,粘液素(ムチン)をふくんでいる.

 この液の中にはバラバラになった細胞や,細胞のなごりや,脂肪顕粒が含まれていることがはなはだしばしばであるが,さらに絨毛がねじれ切れたりちぎれたりして,はいっていることもある.

 4. 関節における特殊装置の数は非常に多い.

 a)まず述べるべきものは,いわゆる補強靱帯Verstärkungsbänder(Haftbänder)という線維束や線維板が関節包の線維層を補強していることである.

 補強靱帯は関節の形に応じてそれぞれ特別の場所に存在していて,両骨の結合を保全したり,関節運動を確実にするものもあり(誘導靱帯Führungsbänder),あるいは過度の運動を抑え,従って運動範囲を制限するものもある(抑制靱帯Hemmungsbänder).

 関節靱帯もごくわずかの弾性線維を含んでいる.足の諸靱帯に弾性線維が存在することをH. Straub(Acta anat.11. Bd.,1950)が報告している.

b)関節の内部にある靱帯は関節内靱帯Binnenbänderとか骨間靱帯Zwischenknochenbänderとかよばれるもので,その機能によってやはり結合靱帯・誘導靱帯・抑制靱帯などに分けられる.

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最終更新日13/02/03

 

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