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踵骨の遠位および中関節面では,載距突起に属する近位部がいっそう上方にぬきんでているので,外転運動にさいして,距骨頭がどうしてもこの面の端へ登ることになる.しかしそのために靱帯が緊張して,この運動が抑制されることになる.

 2. 距骨と舟状骨の結合は一見したところ球関節のようにみえる.これは距骨頭が水平方向にも垂直方向にも凸の弯曲をなすからである.ところが実際には,これも1軸関節なのであって,その軸は距骨頭の中央を通らずに,距骨頭の上縁のすぐ上方からはいって,斜めに足底に向って走っている.従ってこの軸は舟状骨を通ることなく,その背側をよぎるのである.この軸の上端はさらに内側へも向いている.距骨頭の弯曲も正確には球面の一部ではなく,背側と内側から圧縮されている(榿の1種Pomeranxeに似るとHenkeはいう).

 3. 踵骨と立方骨の結合は踵骨の立方骨関節面がほぼ水平の方向に凸で,それと直角の方向に凹であるために,一見して鞍関節にみえるが,実際にはこれもまた1軸関節であって,その軸は踵骨では関節面の最内側でしかも最も後方にひつこんだ隅を通り,従って立方骨では踵骨のこの部分にはまりこむ下内側隅の栓状の突起を通っている.この軸は3つの軸のうちで最も平らな,すなわち最も水平線に近い軸であるが,遠位端が近位端よりも少し高い.

 中足基節関節および足の指関節の力学は手のこれらに相当する関節と同じであって,前者は球関節,後者は蝶番関節である.

 R. Fick, Über die Bewegung und die Muskelarbeit an den Sprunggelenken des Menschen. Sitzber. Akad. Wiss. Berlin 1931.

足の全体について

 下肢は足という,平板でなく円蓋をなすものを介して,地面をふみつけている.距骨はこの円蓋の要石ともいうべきもので,同時にまた骨性の関節円板をもなしている.

 足の円蓋には高い母指弓Großzehenbogenと低い小指弓Kleinzehenbogenがあることが容易に知られる.そして内側の母指弓から外側の小指弓へと弓なりに低くなっており,そのためNischengewölbe(半円蓋,Nischeは壁の凹所) (Szymanowsky)のかたちをしている.両足の半円蓋が対称的に並べて置かれると,完全な円蓋Kuppelgewölbeのかたちが生じる.そしてこのような円蓋に,大腿と下腿の骨を介して体重がかかるのである.

 半円蓋の支持点(脚)をなすのは踵骨隆起のほか,遠位方の主要な支持点として第3中足骨の小頭,側方の支持点としてその他の中足骨がはたらいている.なお第5中足骨粗面も,側方の支持点をなすものと見ることができる.母指と第1中足骨は,むしろ歩行のとき足を地面から離すのに役だつのである.

 生理学的な立場から,複雑な靱帯装置のはたらきを判定しようとするときドそして同時にこの円蓋が直立,と歩行に当っていろいろ異つたぐあいに役立つものであることを考えるとき,これらの靱帯は前に述べたのとは違ったまとめ方で分類されることになる.すなわちH. Meyerは以前に次の4つの主要な靱帯群を分けたのである:

 1. 指骨の横の結合と,遠位列足根骨の横の結合.

 2. 底側の縦走線維束.

 3. 背側の内側および外側の線維束.

 足の円蓋は静力学的にいろんなふうに利用されるが,それを分類するのはむつかしいことではない.

 1. 足底立ちSohlenstand :これはすでに述べた.

 2. 母指立ちGroßzehenstand:第1中足骨の小頭の上に足の円蓋をもち上げて立つ.

 3. 小指立ちKleinzehenstand:外側の小頭,とくに第3中足骨の上に足の円蓋をもちあげて立つ.

 これら3つの使用型はふつう用いられる範囲内のものである.これに対して足円蓋の普通でない使用型として,踵骨隆起の上にこの円蓋をもちあげるかかと立ちHackenstand,足の外側縁で立つ型,足の内側緑の突出した部分で立つ型などがある.

 重要なことは,これらの型のうち次の4つが足円蓋の病的変化として,足の病理学において大きな意味をもつことである,それは踵足Hackenfuß,尖足または馬足Spitz-oder Pferdefuß,扁平足Plattfuß,内反足Klumpfußである.

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最終更新日13/02/03

 

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