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 Eislerが総括したところによれば,全身に存左する筋の数は次のごとくである.すなわち対,をなす骨絡筋327対と対をなさぬ筋 2個,さらに内臓および感覚器に属する対をなす筋47対,対をなさぬ筋2個である.骨格筋は,頭部に25対と不対のもの1個,頚部に16対,項部および背部に112対,胸郭に52対と不対のもの1個,腹部および骨盤に8対があり,また上肢には各側52,下肢には各側62の筋が存在する.

 筋肉が骨に対して,必然的に密接な,しかも重要な関係をものということは,筋肉と骨の両系統の機能的立場を考えればすぐ明らかとなる.この観点からすれば,骨は受動的運動器passiver Bexvegungsapparat,また筋は能動的運動器aktiver Bewegungsapparatである.ごく少数の横紋筋だけは外皮と密接な関係をもつのである.この筋は骨格の筋からは区別されて,皮筋Musculi cutanei, Hautmuskelnとよばれる.

 特別なものとしていわゆる"funktionslose Muskeln"(はたらきのない筋)がある.これは同一の骨の2点間,あるいは不動的にたがいに結合している骨の間に延びたまま張られているもので(顔面の種々の骨膜筋束Fasciculi periostales,翼突棘筋M. pterygospinalisなど),普通の意味ではその機能が考えられないのである(E. Cords. Z. Anat. u. Entw., 65. Bd.,1922).

2. 筋の形と付き方

 筋には短いもの,長いもの,幅の広いものがある.この点では確かに骨と似ている.そして骨の長さや幅がすこぶる多様であるように,筋の形もまた同様に種種雑多である,各筋に起始, 走向および停止が区別される.起始Ursprungとは,不動であるか,あるいは両付着端のうちで動きが少い方の付着端をいう;停止Ansatzとは,動きが多い方の付着端,または体幹からいっそう離れた付着端をいうのである.起始および停止は多くは腱の仲介によってできている.筋の起始部をCaput, Kopf,停止部をSchwanz,中間部をKörperまたはVenter, Baecchと呼ぶ.

 筋の頭はいつも1つだけというわけでなく,2頭性や多頭性の筋がある,例えば上腕二頭筋,上腕三頭筋,大腿四頭筋などである.同様に多くの筋が1個だけの停止腱をもつのではなくて,いくつかの腱をもっている(すなわち多尾筋mehrschwänzige Muskeln),例えば長指屈筋や長指伸筋がそれである.またいくつかの筋腹をもつ筋がある.例えば肩甲舌骨筋,顎二腹筋,腹直筋(図492).これらの筋は,1個あるいはそれ以上の数の中間腱, すなわち腱画Inscriptiones tendineaeによって2またはそれ以上の数の筋腹に分れている.これら多腹性,多頭性および多尾性の筋はすべて,単一筋einfache Muskelnに対して複合筋zusammengesetzte Muskelnと呼ばれる.

 筋はみな骨に始まり骨に終るとは限らない.多数のものは,その全部あるいは一部が軟骨,靱帯,線維性の膜,外皮に始まりあるいは終る.

 起始および停止の形は点状, 線状または面をなしていることがある.線状および面をなしている起始あるいは停止は直線的の境をもつこともあり,鋸状線または任意の複合線や面をなしていることもある.これによって腱の形も当然に影響される.

 両付着部のあいだにおける筋の走向は,一般にはかなり真つ直ぐなものである,しかし弓状あるいは円蓋状をなす筋もあり(例えば横隔膜),そういう筋は正にこの変つた走向により,特異な作用をあらわすのである.なおまた,長い筋ではしばしばその走る方向が途中で転換すること(Ablenkung)がある.この走向転換は,骨の突出部によるか,あるいはその腱を固く保持する靱帯の条によっておこる.

 筋はその筋が起つた骨の直ぐ隣りの骨に付着するか,あるいはその筋の停止が1個または2個以上の骨を越えている.それゆえ単関節性の筋eingelenkige Muskeln と多関節性の筋mehrgelenkige Muskelnとを区別する.

 筋肉が腱に対して如何なる関係になっているかは特に考慮を要する.筋線維は種々異なる様式で腱に付着するのである.

 腱は筋肉の側面を1つの面だけ,あるいは2つの面またはぐるりと全面を取り囲んで広がることがあり,また極めて多様な形をして筋肉の内部に入り込んでいることもある.その際,筋線維の走向は筋ならびに腱の縦走する方向と平行であったり,あるいはそれ等の長軸に斜めになっている.

 上述の点から次の分類がなされる,すなわち筋が両端に向って次第に細くなって腱に移行するときは紡錘状筋M. fusiformis. spindelförmiger Muskel;筋線維が腱の1側に停止するときは単羽状筋M. unipennatus. einfach gefiederter Musfeel;筋線維が両側から腱に付着するときは羽状筋M. bipennatus, doppelgefiederter Muskelという.

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最終更新日 13/02/03

 

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