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上方の線維は前下方に,下方の線維は前上方に口角に向って走り,そこで交叉して,下方の線維は上唇に,上方の線維は下唇に達する.上下両唇の中に入っていった筋束は口輪筋の主要な基礎をなしている.常にいくつかのオトガイ筋束Fasciculus mentalisという筋束がオトガイ筋の起始する部分のすぐそばで,且つ小臼歯のある範囲で下顎骨の歯槽突起に付着しており,その一部はオトガイ筋に移行し,またよく発達しているときには頚部の皮膚にも達している.

 頬筋は上顎第2大臼歯の高さで茸下腺の導管,すなわち耳下腺管Ductus parotidicusにより貫かれる.この筋の内面は口腔粘膜と固く結合している.その外面には咽頭頬筋膜Fascia pharyngobucinatoriaがある.

 神経支配:顔面神経による.

 作用:口腔前庭が満たされているときにはその内容を押しだすはたらきがある.

3. 眼角筋M. levator nasi et labii maxillaris medialis. (図513519)

 この筋は上顎骨の前頭突起から起り,上唇の皮膚に固く着いているが,ここでは鼻から口角へと下行する深い溝,すなわち鼻唇溝Sulcus nasolabialis に一致している.内側の浅層の筋束は鼻翼溝のすぐ内方のところで鼻翼の皮膚に達するが,深層の筋束は外鼻孔のまわりで外側と後方の部分へゆく(Eisler).

 神経支配:顔面神経による.

 作用:この筋は鼻翼と上唇とを引きあげる.

 変異:この筋は欠けていることがあり,ときには鼻骨における起始が重複している.

4. 眼窩下筋M. levator nasi et labii maxillaris lateralis,(図513519)

 この筋は眼窩口のすぐ下方で,眼窩下孔の上ではじまる.これは長い四角形の筋で,眼角筋に被われてこの筋と同じ場所に停止する.

 神経支配:顔面神経による.

 作用:この筋も鼻翼と上唇とを引きあげる.

 変異:この筋は欠けていることがあり,眼輪筋および他の顔面筋からの線維を受けるし,またこの筋が重複していることもある.

5. 小頬骨筋M. zygomaticus minor. (図514519)

 この筋は頬骨の外面にはじまり,鼻唇溝に達し,眼窩下筋の下部の前方にある.

 神経支配:顔面神経による.

 作用:上唇を上後方に引く.

 変異:2つの筋束をもって姶まることがあり,眼輪筋と結合していることがある.

6. 下顎骨膜筋束Fasciculi periostales mandibulae,上顎骨膜筋束Fasciculi  periostales maxillae. (図515, 516, 518, 519)

 これらの筋束は以前には異常筋Mm. anomaliとして記載されていたが,必ず存在するものである.これらは骨膜にはじまり,骨膜に終る.上顎骨のそれは上顎骨の前頭突起からおこり,犬歯窩へと走っている.

 これらの筋束が眼窩下筋から来て犬歯筋に続いていることもしばしばである.

 E. Cords, Z. Anat, Entw., 65. Bd.,1922およびH. Virchow, 同誌,84. Bd.,1927.

7. 大頬骨筋M. zygomaticus major. (図513519)

 この筋は短い強い腱をもって頬骨側頭縫合の近くで頬骨から起り,前下方に走って口角に達する.ここでその一部が三角筋の線維と交叉し,上下両唇の実質内に筋束を送るが,主として口角の皮膚に放散して終る.

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最終更新日13/02/03

 

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