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2. 脈管の位置

 最初の脈管,つまり初期の大動脈と横走する分節脈管は内胚葉の管の背側に発生する.この最初の脈管は吸収器官としての腸に当然もっとも密接な関係をもっている.太い脈管の幹はこの上腹部の場所を一生忠実に保っている.後にここから枝がほかの領域にのびていく.脈管の幹から出る臓側枝がいちばんはっきりとそのことを示している.脊椎動物の太い脈管の幹が体の屈側にあって伸側にないことも上述の関係から明かになる.

3.脈管壁の一般的な構造

 脈管壁の構造は,個々の部分に多様な差異があるが全体としてみるとある程度の一致を示している.

 脈管のすべて,すなわちあらゆる太さの動脈,静脈,リンパ管に1つの層がきまって存在する.それは最内部のいわゆる内皮細胞管Endothelrohrである.これはその不変性,もっとよく表現すれば常在性のために脈管装置のもともとの基礎をなすものといえる.しかしリンパ管系ではその例外がある.それは結合質中に広く存在するすき間,いわゆるリンパ間隙であって,これは内皮細胞の被膜の全部あるいは一部を欠くのである.

 毛細管の全系統では内皮細胞管がまったくそれだけで壁をなすか,あるいは内皮細胞管の外に接する支持成分があってその壁ができている.

 そのほかのすべての場所でもこのことはもともと同じであったのであって,脈管系は最初にはやはり単に内皮細胞管からなりたっていた.しかし次第にほかの層が加わって通常3層が区別できるようになる(図605609).

すなわち

1. 内皮細胞に密接している最内層で内膜Tunica intima.この名前は同時に内皮細胞層を含んでいてもよい.

2. 主に筋性の成分により構成されている中間層で中膜Tunica media,Muskelhaut,mittlere Gefäßhaut.

3. 主として結合組織からなりたつ外層で外膜Tunica externa, dußere Gefäßhaut(以前はAdventitiaといわれた).

 各層の強さ,配置は場所によっていくらか相違があり,詳しいことはおのおのの種類の脈管について記述することにする.比較的大きな特徴を短絡性の血管GefäSe der Kurzschlüsseがしめしている(504頁参照).

a)動脈

 動脈Schlagadern, PulSadernは心臓からここに押しだされる血液の圧力に耐えるために特につよく発達した壁をもつことが特色である.

α)直径

 ふつう動脈を大,中,小にわけて大よその概念をつけているが,この区別は太さばかりでなく壁の構造にも関連している.

 しかし数値ということも大切である.その詳細な報告はH. VierordtのDaten und Tabellen, Jena,1905にある.1つの分枝の所から次の分枝の所まで脈管はその管腔の太さを変えない.また個々の枝はそれが分れた本幹より横断面において確かに小さいが,一般的に云って枝の横断面積の総和は分枝をくり返すごとに増加していく.

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最終更新日13/02/03

 

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