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c) 心内膜Endocardium

 心内膜は場所により20~500µの厚さをもった光沢のある薄い結合組織性の膜で,その内面は内皮で被われ,心臓の筋肉の内面をそのすべての凹凸までくまなく包んでおり,しかも多くの場所においてこの膜をすかして筋肉をはっきり見ることができる.血管の開口部はどこでも心内膜が血管の内膜につづている.心内膜は本質的には膠原線維と弾性線維および少量の結合組織細胞からできている.

 動脈では内膜が心室のものよりよく発達しており,また左心は心内膜が右心よりいっそうよく発達している.心房では弾性組織が量においてまさり,そこにきちんと層をなして重なった弾性膜をなしている.心内膜の外面は心筋の間質結合組織とかたくくつづいている.

 弁の尖や帆は本質的には心内膜のひだとみなされる.これは線維性結合組織を中に有しており,との結合組織は房室尖では線維輪の結合組織とつづいている.房室尖はまたその起始部の中に一部は心室から一部は心房からくる少量の筋束をもっている.

心臓の脈管と神経

 心臓の栄養をつかさどる脈管については後にくわしく述べることにして,ここでは重要なことを大まかにあげておく.すなわち2本の冠状動脈は脈管壁を養っているすべての血管と同じ規則に従って,心臓自身から出ているのではなく,心臓から出る動脈の本幹である大動脈から,その最初の枝となっている(図633).

 心臓のリンパ管ははなはだ豊富である.外側および内側の表面にあるリンパ管の網は筋束や血管の間のすべてのすきまに含まれる深部のリンパ管系とつながっている(Sappey, 図631).

 特別な壁(内皮)をもったリンパ管が心筋層の内部にも,またその表面にも見られる.心臓のリンパの全部がわずか2本(右と左それぞれ1本)の太い幹に集まり,前縦隔リンパ節にいたる.この2本のリンパ管はそれぞれ心臓の左右の各半からおこるのであって,左右の冠状脈に沿って走っている.そして右の幹は大動脈弓の左面(前面)を,左の幹はその右面(後面)を通る.

[図631] ヒトの心臓のリンパ管 胸肋面(2/3) (Ph. C. Sappey. )

 心臓神経叢から心臓壁にいたる神経は器官の大きさに此べて細い.神経は迷走神経からと交感神経の3つの頚神経節および胸神経節の初めの5つ(時としては6つ)の神経節からも出てくる(Braeucker,1927).

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最終更新日13/02/03

 

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