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この細胞をSchumacherは平滑筋細胞の変形したものと考え,Krompecher(Verh. Anat. Ges.1932)はそれに対して出生後まで残存している血管芽細胞と考えている.糸球の血管をまとめている結合組織のなかには平滑筋細胞の束がみられる.

f) 総腸骨動脈Arteria ilica communis (図662, 669)

 左右の総腸骨動脈は第4腰椎の下端で始まり65°(男)から75°(女)までの角度をなしてたがいに離れて下外側に向い,4-6cm走ってから仙腸関節の高さでそれぞれ1本ずつの内腸骨動脈と外腸骨動脈とに分れる.

 局所解剖:総腸骨動脈は腹膜と腸の一部によって被われており,また内外の腸骨動脈に別れる所の近くで尿管と交叉する.左の総腸骨動脈の前には下腸間膜動脈がある,総腸骨動脈の初まりのところは腰椎の上にあり,それより下方では腰筋の内側縁にある.右総腸骨動脈の起始部の下に下大静脈の初まりがある.左の総腸骨静脈は右総腸骨動脈の下にはいる.

 総腸骨動脈はその分岐部にいたるまでは,リンパ節・尿管・腰筋にいくあまり目だたない小さな枝を出すだけである.ときどきこの動脈から腎動脈の1本あるいは腸腰動脈が出ている.

 変異:左右の総腸骨動脈の分岐部がときとして上の方に移っていることがあり,またいっそうしばしば下方に移っている.たいていは左側のものがいくぶん下方にある.総腸骨動脈の長さが2cmにまで滅じていたり,8cmにまで増えていたりする.非常にまれなことであるがその分岐が欠如している(607頁参照).

 この動脈の2本の枝が直接に大動脈から始まっていることはごく珍しいことである.

I. 内腸骨動脈Arteria ilica interna (図668672)

 この動脈は短くて太い枝で,その長さは3-8 cmあり,仙腸関節の高さにある総腸骨動脈の分岐部ではじまり大坐骨孔の上縁まで伸びている.

 内腸骨動脈は成人では外腸骨動脈よりやや細いが,胎児では次の2つの理由から太い動脈となっている.第1の理由は下肢が小さいためであり,第2には胎児の血液が臍動脈を通って胎盤に導かれることに基ずいている.--この動脈の起始のところは腰筋こ接しており,それより下方では梨状筋に接する.動脈の後には内腸骨静脈と太い腰仙骨神経幹Truncus lumbosacralisがある.

 この動脈の枝には壁側枝臓側枝とがあって,その枝分れの順序にいくつかの型がある.内腸骨動脈の枝は,その全体の分布は非常に規則的であるが,しかし多くの枝の起る位置については著しい相違がみられる.たいていの場合,この動脈の幹は2本の主な枝に分れ,その1本は比較的後方に,ほかの1本が比較的前方にある.前方の主枝からは臍動脈を伴った上臍胱動脈・下臍胱動脈・子宮動脈と腟動脈・後直腸動脈・内陰部動脈・閉鎖動脈・および最後に下臀動脈といった諸枝が骨盤の内臓や骨盤の前壁,および陰部に向かって出ている.

 後方の主枝は骨盤の側壁と後壁および弯部に血液を運ぶもので,腸腰動脈・外側仙骨動脈・上臀動脈がその枝となっている.

 これから以下では,内腸骨動脈の枝をそれが体壁(および下肢)に分布するか,あるいは内臓にひろがっているかによって区別して述べる.

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最終更新日13/02/03

 

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