Band1.622   

7. 下行膝動脈Arteria genus descendens(図673, 674)

 大腿動脈の下部から出る長い動脈であって,大腿の前がわで大内転筋の腱の前を下方にすすむ(図673, 674)

 たいてい内転筋管裂孔のすぐ上方で始まり,2本の枝に分れるが,しばしばこの2本が別々に起こっている.2本の枝はともに膝関節に向かって下行するが,そのうちの1本は内側広筋のなかを通り,この筋に枝をあたえている.筋枝Rami musculares,関節枝Rami articularesおよび比較解剖学的に重要な伏在枝Ramus saphenusが区別される.

 大腿動脈およびその枝の変異.ときとして大腿動脈の幹が大腿深動脈を出してのち,2本の枝に分れ,内転筋管のところでふたたび1本に合して,それから下方では単一の膝窩動脈となっていることがある. また時には大腿動脈の一部が大腿の後がわを走る1本の幹でおきかえられている.この幹は内腸骨動脈から出ていて,非常に太くなった坐骨神経伴行動脈A. comitansns ischiadiciとみなされる(615頁参照).--大腿深動脈の位置が変化していることは少なくない.このことは本質的には脛側と腓側の大腿回旋動脈の大きさと起始の如何によるのである.2つの大腿回旋動脈の1方または両方の起始が大腿深動脈から大腿動脈の幹に移っていることがある.また腓側大腿回旋動脈が幹から出ている場合は,大腿深動脈の起始は内側にかたよっている.

 ときとして大腿深動脈の起始が上方に移って鼡径靱帯のところにある.この場合には2本の動脈のうち外側のものが大腿深動脈である.ほかの例ではその起始がいっそう下方に移っている.このときには両方の回旋動脈がたいてい大腿動脈の幹から出ている.起始が下方に移っていなくても回旋動脈が大腿動脈の幹から出ていることがある.

 Ruge, G., Morphol. Jahrbuch, 22. Bd.,1894--Spuler, A., Beiträge zur Kenntnis der Varietäten der Gefaße und der Muskulatur der unteren Extremitäten des Menschen. Erlangen ,1901.

膝窩動脈Arteria poplitea(図675, 677)

 この動脈は内転筋管の下端から膝窩筋の下縁まで伸びており,そこで前脛骨動脈と後脛骨動脈とに分れる.

 局所解剖:この動脈はまず大腿骨の内側面から下方かつ外側に向かって膝窩の中央部まで急な角度をなして下り,ついでほとんど垂直に膝関節の中央部の後を,この動脈の分岐部まで下行する.その全体を通じてはなはだ深いところを走り,またその初まりの部は半膜様筋によって後から被われている.膝関節のところでは関節包の後壁に密接していて筋に被われていない.それより下方ではかなりの長さだけ腓腹筋の下に隠れている.その下部はなおそのほかにヒラメ筋の上縁によって被われる.

 この動脈は膝窩静脈のうしろで少しく外側にある.脛骨神経はそれより浅層でもっと外側にあり,膝窩筋膜のすぐ下にある.しかし膝窩の下部ではこの神経は全く膝窩動脈の内側に位置する.総腓骨神経は大腿二頭筋の膝窩縁に沿って腓骨頚に達している.

 神経:この動脈の外膜には膝窩神経叢があり,そこには脛骨神経から2本の小枝がはいっている(HahnとHunczek).

 膝窩動脈の枝には筋枝と関節枝という2組があって,その筋枝にはさらに上部と下部が区別される.

 上部の筋枝は膝の屈筋の下端部と広筋群および大内転筋の後下部に分布するが,その数はまちまちである.またこれらは穿通動脈と結合する.

 下部の筋枝は腓腹動脈Aa. suralesとよばれ,これにはそれぞれ1本の内側枝と外側枝があって,いずれもかなり太く,膝関節のうしろで膝窩動脈の後壁から始まり,おのおの2本の枝に分れる.これらの枝のうち深枝は腓腹筋のなかにはいり,ほかの2本は細くて長い枝であって下腿の後がわをかなり遠くまで下方にすすみ,主に筋膜と皮膚のなかで枝分れしている.

 関節枝はたいてい5本ある.

a)脛側近位膝動脈A. genus proximalis tibialisは大腿骨の内側顆の上方で大内転筋の腱と内側広筋の腱の下を通り骨にそって前方に廻り膝関節動脈網にいたる.

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最終更新日13/02/03

 

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