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d)閉鎖静脈Vv. obturatoriae.これは常に1本の太い枝によって外腸骨静脈とつながっている.この枝がしばしば閉鎖静脈の根の唯一の流出路となっている.

e)外仙骨静脈Vv. sacrales laterales.これは中仙骨静脈から側方へでる枝とともに仙骨の骨盤面に接して前仙骨静脈叢Plexus sacralis ventralisをなし,またこの叢が近くの静脈と結合している.

臓側枝

 臓側枝は殆んどみなその分布の末端でよく発達した静脈叢をつくり,これらの叢が骨盤底の諸内臓のあいだを通じてたがいにつながり合っているのが特徴であると云える.

f) 内陰部静脈V. pudendalis interna.これは肛門の周囲の肛門静脈叢Plexus analisから出てくる肛門静脈Vv. anales,会陰や陰部からの血液をみちびく陰嚢静脈Vv. scrotales(陰唇静脈Vv. labiales)と陰茎深静脈V. profunda penis(陰核深静脈V. profunda clitoridis)を受けとり,同名動脈に伴なってゆき,下臀静脈にはいる.

 しかし筋膜下陰茎背静脈V. dorsalis penis subfascialis(筋膜下陰核背静脈V. dorsalis clitoridis subfascialis)は陰部静脈叢とつながり,それを介して血液を内腸骨静脈に注いでいる.

g)膀胱静脈叢Plexus vesicalis.膀胱の下部にある広汎な静脈叢であって,これは陰部静脈叢と直腸静脈叢に続いており,また若干の小幹をもって左右の内腸骨静脈とつながっている.女ではこの静脈叢が尿道をもとりまく(図693).

 R. Eiss, Beiträge zur Anatomie der Blasenvenen. Arch, Anat. Phys.1915.

h)陰部静脈叢Plexus pudendalis.この静脈叢は恥骨弓のすぐうしろで男では前立腺をとり囲み,膀胱静脈叢と続いている.また筋膜下陰茎(陰核)背静脈を受け入れている.

α. 筋膜下陰茎背静脈V. dorsalis penis subfascialisは亀頭冠のところで2本の静脈から始まり,遅かれ早かれただ1本の幹になって,これが陰茎海綿体の背側の中央にある溝を筋膜下で左右の陰茎背動脈のあいだを走っている.

 恥骨弓状靱帯の下でこの静脈は陰部静脈叢に達する.途中で海綿体, 陰茎の皮膚および陰嚢からの多数の小静脈を受けとる.

 筋膜下陰核背静脈V. dorsalis clitoridis subfascialisは男のこれに相当する静脈とよく似た配置をもっているが,はるかに発達がわるい.

β. 陰茎深静脈Vv. profundae penis.これは陰茎海綿体脚の上内側にでて,内陰部静脈にすすんでいる.

i)直腸静脈叢Plexus rectalis(図693)

 これは直腸,とりわけその腹膜に被われていない部分をとりまいて密な網をなしている幅の広い静脈の集りである.この静脈叢から上直腸静脈が下腸間膜静脈にいたり,またほかの何本かの枝が内腸骨静脈に行く.

 上直腸静脈が門脈系に属しているので,この直腸静脈叢を通じて門脈系が内腸骨静脈および下大静脈の系統に直接つながりをもっという重要な事実が生ずるのである(664頁参照).

 女では膀胱静脈叢と直腸静脈叢のあいだに次のものが介在する.

k)子宮腟静脈叢Plexus uterovaginalis(図693)

 これは特に子宮と腟の側方部を取り囲み,卵巣静脈および骨盤腔の静脈叢とつながっている.それから出る主な流れは短くて幅の広い子宮静脈Vv. uterinaeとなって内腸骨静脈に開口する.

 妊娠中に子宮頚の壁のなかに子宮頚静脈叢Plexus cervicalis uteriという静脈叢が生ずるが出産時には退縮する(Stieve,1927).

 骨盤腔にあるすべての静脈叢はたがいに多くのつながりをもち,こうして大きな静脈叢を作っており,その血液はあらゆる方向に流れて出るが,主として内腸骨静脈と門脈に注ぐのである.

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最終更新日10/08/28

 

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