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常在のものは肛門の筋層の上にある特別なリンパ節(肛門直腸リンパ節)に注いでいる.不定のものは大坐骨孔の近くにある1つのリンパ節に注ぐのである.肛門の粘膜からのリンパ路は同じく肛門直腸リンパ節にゆく.

c)仙骨リンパ叢は仙骨リンパ節とそれをつなぐ小幹からなっている.このリンパ叢は尾動脈と中仙骨静脈のそばで左方にあり,また仙骨の前面のところで直腸の両側にある.

d)膀胱のリンパ管は膀胱全体にわたって数層をなして広がり,内腸骨リンパ節腸骨リンパ節Lymphonodi ilici interni, Lymphonodi iliciにはいる.また前立腺および精嚢腺のリンパ管がこれとつながる.Bruhns(Arch. Anat. u. Phys.1904)によると前立腺と直腸とのリンパ路の間には多数のつながりがある.

 Gerota(Anatom. Az.,12. Bd.,1896)によると粘膜のリンパ管と筋層のリンパ管とを区別する必要がある.前者は細い小幹をなして集まり,これらの小幹は筋層を貫いて,その一部はほかのものとつながることなく,一部は務層のリンパ管とつながって骨盤側壁のリンパ節にゆく.--筋層のリンパ管は前方のものと後方のものとがある.繊細な網をなして始まり,合流して幹となり,この幹は膀胱の側壁にいたりそこから臍動脈に伴なって走る.途中で隣動脈に沿って存在するリンパ節(外側膀胱リンパ節Lymphonodi vesicales laterales, Gerota)にはいる.そのほかのリンパ節は恥骨結合のうしろで膀胱の前の脂肪組織のなかにある(前膀胱リンパ節Lymphonodi vesicales ventrales).臍部のリンパ管には浅層のものと深層のものとがある.浅層のものは皮下を走り浅腹壁動脈の道に沿ってすすみ,浅鼡径リンパ節に注いでいる.深層のものは下腹壁動静脈とともに走るが,そのさい若干の小さいリンパ節(下腹壁リンパ節Lymphonodi epigastrici caudales, Gerota)を通り,深鼡径リンパ節かまたは腸骨リンパ節に終わっている.また臍輪のそばで腹直筋鞘の後葉に被われて存在する小さいリンパ節へ注入することも幾度か成功している(臍リンパ節Lymphonodus qmbilicalis).この部分のリンパ管は肝鎌状間膜のなかを臍静脈とともに走るリンパ管とつづいている.

 人の膀胱の筋層は固有のリンパ管をもつが粘膜はそれをもっていない.しかし尿道の粘膜には多数のリンパ路があり,これが膀胱に向うにつれて次第に減少する.

e)腔のリンパ管(図721)は腟の下部からは浅鼡径リンパ節,さらに腸骨リンパ節にすすみ,また腔の上方2/3からは内腸骨リンパ節と腸骨リンパ節にいたる.

f)子宮のリンパ管(図721)は正常状態の子宮では細いが,妊娠中はその太さと広がりが著しく増す. その大部分は下方にすすみ,子宮と腟の太い血管の走行に沿って,腸骨リンパ節と腰リンパ節にはいる.少数の細いリンパ管は子宮鼡径索のなかを通って,鼡径リンパ節に達する.

 子宮底に属するリンパ管は一部は子宮広ヒダのなかを外側に走り,卵管と卵巣のリンパ管につながり,卵巣動静脈に伴なって骨盤から上方に出て腰リンパ節にはいる.

g)卵管のリンパ管(図721)は子宮体のリンパ管と吻合して卵巣の方に向い,卵巣から出てくるリンパ管といっしょになって卵巣動静脈に沿って腰リンパ節にいたる.

h)精巣のリンパ管(図717)は実質のなかとこの生殖腺の上皮下で始まっている.そして集まって次第に太い幹となり,精巣上体からの多数のリンパ管と共に上昇し,また精索のほかの成分と伴なって上方にすすむ.ついで鼡径管を通り精巣動静脈のそばをへて腰リンパ節にいたる.

i)骨盤のリンパ叢(図717, 721)はきわめてよく発達している.各側とも臀部から骨盤にはいる深層のリンパ管,および骨盤の諸内臓から出てくるリンパ管からなりたっている.これらは内腸骨動静脈の周りにおいて10~12個の内腸骨リンパ節Lymphonodi ilici interniとつながっている.

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最終更新日10/08/28

 

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