Rauber Kopsch Band2. 012   

 丈夫な粘膜下の結合組織が糊莫を頬筋M. bucinatoriusの内面に付着させている.ここに少数の頬腺Glandulae buccalesとよばれる粘液腺が存在して,その腺体の一部は頬筋の外面にあらわれている.頬粘膜の後部では粘液腺の数がやや多くなり,ここでは臼後腺Glandulae retromolares, Mahlzahndrüsenとよばれる.これらの腺は口唇腺と同じように漿液性と粘液性の両部分をもった混合腺である.

 頬粘膜において脂腺はKrakow(Dissertation, Königsberg 1901)によればすべての個体の30%に存在し,しかも男では40%,女では20%である.これは口唇の脂腺と同じく思春期以後に初めてでぎる.

 顕微鏡でみると,口唇および頬の粘膜は3層からできている.1. 上皮Epithelは典型的な重層扁平上皮である.2. 固有層Lamina propriaは弾性線維の網を混じた固い結合組織の束からなっていて,多数の乳頭をもっている.すでに述べたごとく乳頭は口唇でははなはだ丈が高い.3. 粘膜下組織Submucosaは特別な境界がなく固有層につづいていて,丈犬な結合組織束と比較的に量の少ない弾性線維とよりなっている.上皮には多数の上皮内神経線維がある.

 頬の皮下脂肪組織のなかに1個あるいは2個以上の小さい頬リンパ小節 Lymphonoduli buccalesがある.まれにこのものが頬筋の外面あるいは内面にみいだされる.頬のリンパ管は顎下リンパ節と浅頚リンパ節にいたる.

[図13]顔面裂Gesichtsspatteの系統を示す模型

(Michio Inouye, Anat. Hefte. 45. Bd.1912)a-b口唇と上顎骨の裂け目Lippenkieferspalte;a-c-d およびa-b+c-d斜めの顔面裂schrdge Gesichtsspalteの2型.

2. 口腔Cavum orls, Mundhöhle(図6, 7880, 82, 84).

 口腔は粘膜で被われた裂隙の形であるが,広がることのできる空所であって.主として水平方向の広がりをもっており,前方は口裂Rima orisをもって外界と通じ,後方は咽峡Isthmus faucium, Schlundengeを通って咽頭腔Cavum pharyngis, Schlundhöhleとつづいている.そして上下両顎の歯槽突起および上下の両歯列によって,この空所は2部すなわち口腔前庭Vestibulum oris, Vorhofと狭義の口腔Cavum oris, im engeren Sinneとに分れている.

 口腔前庭(図82, 84)は上下の方向にのびていて,かつ弓状にまたがった隙間であり,外方は上下の口唇と左右の頬により,内方は上下両顎の歯槽突起および歯列によって境されている.この前庭に開口する腺は左右それぞれ頬唾液乳頭に開く耳下腺のほかに口唇腺,頬腺,臼後腺である.

 上下の歯列を咬みあわせたときにも前庭は歯の間にある狭いすきまinterdentale Spaltenおよび最後の大臼歯と翼突下顎皺襞との間にある左右各側のかなり広い場所retrodentaler Gangによって狭義の口腔とつづいている.

S.012   

最終更新日10/08/31

 

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