Rauber Kopsch Band2. 011   

 粘膜部の前縁のところが成人で過度に発達しているときには2重唇Doppellippeと通称される見苦しい状態がおこる.その場合には正常の移行部のうしろに大きい粘膜の高まりがみえるのである.

 出産にま近い胎児や新生児の粘膜部は数多くの絨毛Zottenをもっている.この絨毛は結合組織性の中軸とその表てを被う重層扁平上皮とからなっている.生後第4週の初めからその退縮がはじまる.

 移行部の脂腺はLiepmannによると(Dissertation, Königsberg 1900)成人の50%にみられる.それも男の方が女よりもいっそうしばしばこれを示す,(63%:40.1%).移行部の脂腺は思春期に初めてあらわれるのであって,新生児には欠けている.(兼重孜(解剖誌4巻4号51頁,1931)によると,日本人成人の48%(男56%,女40%)において移行部に脂腺が存在する.この頻度はヨーロッパ人のそれと大差ないが,日本人では小児期にすでに7%以上の頻度を示すことを特徴とする.)

 動物界では口唇はただ哺乳動物のみがもっている.

しかも単孔類と鯨類(鯨類にも口唇はある.(小川鼎三))にはこれが欠けている.人間でも時として口唇が全く発達しないことがある.

[図12]よく発達した正常の歯列 成人,左側からみる(9/10)

 上唇と下唇はそれぞれ左右両半が合することによってできる.しかも上唇の左右各半は3つの部分すなわち胎児の中鼻突起と外側鼻突起ならびに上顎突起のいずれも下部が合して生ずるのである(図13).その個々の部分の融合が充分におこらないときには,いろいろな形の口唇や顎や顔面の破裂があらわれる.

Michio Inouye((井上通夫),もと東京大学教授) Anat. Hefte, 45. Bd.,1912.--Peter, K., Vierteljahresschrift für Zahnheilkunde 1922.

 Bucca, Backeは皮膚層,筋層,粘膜層からなっている.

 その皮膚は男では須毛の多数がここに生えている.顔面における頬の境は頬骨弓,外耳,下顎の下縁がそれである.

 頬の粘膜には上顎の第2大臼歯の歯冠の高さに当たって各側1つの低い乳頭状の高まりがあって頬唾液乳頭Papilla salivaria buccalisとよばれる.ここに耳下腺の導管が開くのであって,その開口の場所がこの高まりで明瞭に示されている.また頬粘膜の後部には各側1つの上下の方向に走るひだがあって,これが軟口蓋と頬との境となっており,翼突下顎ヒダPlica pterygomandibularlsといわれる.口を開いたときはこのひだが容易にみられるし,また手などで触れてその存在を知ることができる(図80).

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最終更新日13/02/03

 

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