Rauber Kopsch Band2. 017   

3. 小臼歯Praemolares, BackenUihne.これは2つの咬頭をもつ歯であって,それゆえまた.Bicuspidati(双咬頭歯の意)ともいう.上顎に2本,下顎に2本ある(左右合わせると全部で8本).歯冠は咀嚼面Kauflächeをもち,ここに2つの咬頭があって,そのうち(頬側すなわち外方)にあるものが比較的に大きく,舌側(すなわち内方)にあるものが比較的に小さい.歯冠は長めの4角形をしていて,そのもっている諸面が切歯や犬歯の諸面とたがいに相応じながら別の名前でよばれるのである.すなわち頬面というのは切歯や犬歯の唇面に当たっており,内側の接触面がここではまた前方の接触面とよばれ,外側のそれは後方の接触面と称せられる.切縁あるいは咀嚼縁Kaukanteというかわりにここでは上述のごとく咀嚼面Kauflächeが存在する.

 最も重要な特徴は2つの咬頭をもつ咀嚼面である.すべての小臼歯で頬側の咬頭がいっそう強くて丈けが高い.下の2つの小臼歯ではしばしば頬側の咬頭が舌側のものを大きさにおいてはまりにもひどく凌駕するため,後者がほんの付属物のごとくみえるのである.上の第2の小臼歯では舌側の咬頭が頬側のものとほとんど同じ強さおよび高さに達していることがある.両咬頭は前後の方向(すなわち歯列弓の方向)に走る1本の溝によって分れている.しかし前後それぞれ1本の辺縁隆線Randleisteによってこの両咬頭がつながっている.下の小臼歯の歯冠は舌側すなわち内方に向かってまがっている.つまり“歯冠の逃避”をはなはだ明瞭に示すのである.上の小臼歯の根は深い溝をもっていて,時おり頬側(外方)の1枝口蓋側(内方)の1枝に長短いろいろの範囲で2分している.口蓋側の枝がさらに分岐して3根をもつ歯となっていることもまれにみられる.これに反して下の小臼歯の根は横断面が円に近くて,また分岐していない.下の小臼歯の根が分岐することは極めてまれである.それが2分しているときは,その2本は内側(前方)と外側(後方)に1本ずつであるか,もしくは頬側と舌側に1本ずつである.

[図19]上の左の第1小臼歯

[図20]上の左の第2小臼歯

a)上の小臼歯

α)上の第1小臼歯:咀嚼面には2つの咬頭が力つよく発達していて,その頬側(外方)のものが舌側(内方)のものよりいっそう丈が高くて大きいのである.2つの咬頭のたがいに向いあった面にしばしば中心隆線Mittelleistenがあり,時には副隆線Seitenleistenもみられる.またよく発達した辺縁隆線Randleistenが2つの咬頭をたがいにつないでいる.頬面(外面)は犬歯の唇面(前面)とはなはだよく似ているが,ただそれと違って,頬側咬頭の尖端がちょうど中央にあるので,それによって分たれた前後2つの咀嚼縁の長さが同じである.また前方(内側)の角が後方(外側)の角よりもいっそう口蓋側(内方)にある.この歯を咀ロ爵面からみるときにそのことが最もよくわかる.それゆえ弯曲徴が犬歯とは逆になっている.口蓋面(内面)はつよく円みをおびていて,特別な点を示さない.歯冠の接触面は長めの4角形で,前方の接触面は軽く凹,後方のそれは軽い凸をなしている.これはやはりこの歯を咀嚼面からみるときに最もよくわかる.歯根は扁平であって,その接触面は幅がひろくて,前面と後面に縦走する溝をもっている.根の頬面(外面)と口蓋面(内面)は円くなっていて,前者にはまれに1本の浅い縦溝がある.これらの溝は歯根がはなはだしばしば分岐することの前提とみなされるのであって,殊に歯根が分れていなくてもいつも2本の歯根管が存在することは注意を要する点であり,保存歯科学において重要なことである.根が2本に分れていることもはなはだ多い.歯根尖のところがわずかに分れているものから深く入りこんだ分岐までのあらゆる程度のものがみられ,いつでも頬側と口蓋側のそれぞれ1本になっている.上の第1小臼歯が3根をもつことはそれにくらべるとずっと珍しい.このときは頬側に2本(前後に1本ずつ)と口蓋側に1本ある.

S.017   

最終更新日13/02/03

 

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