Rauber Kopsch Band2. 018   

β)上の第2小臼歯は上述の第1小臼歯を荒つぼく模造した形で分化度がそれより低いものであるから,ここでは両者のちがいだけを述べておこう.そのちがいは主として歯冠の対称性がいっそう大きいことであって,それは咀嚼面の2つの咬頭の頂がほとんど同じ高さにあることと,歯冠の内側(前方)と外側(後方)の接触面が同じ程度に凸のまがりをしていることである.歯根が2分していることも第1小臼歯にくらべて少ないし,3分していることは極めてまれである.

b)下の小臼歯.a) 下の第1小臼歯.その歯冠の基本形は円柱状であって,“歯冠の逃避”がひじょうに目立っている.咀嚼面は舌側につよく傾いている.それは頬側の咬頭が強大であって,舌側のそれがずっと低いからである.頬側咬頭の咀嚼面がわによく発達した1つの中心隆線Mittelleisteがあり,またその後方に1つの副隆線Nebenleisteがある.舌側咬頭はごく小さくて,しばしば頬側咬頭の根もとに低い1つの高まりをなしているにすぎない.多くのばあい舌側咬頭はエナメル質より成る1つの隆線をもって頬側咬頭とつながっている.それによって咀嚼面の溝Kaufurcheがいっそう小さくて高い所にある前方部と,比較的大きくて低い所にある後方部とに分れている.辺縁隆線Randleistenがよく発達している.全体的にみて歯冠のあらわす個体的の変異が著しい.頬面(外面)には特別にいうべき点がない.ここでは弯曲徴はま正面に向かっている.歯冠の前後の接触面は凸をえがいていて,歯頚に向かって集中する.歯根は横断面がむしろ円に近くて,縦溝をもつことはまれであり,分岐もまれである.

[図21]下の左の第1小臼歯

[図22]下の左の第2小臼歯

β)下の第2小臼歯.これは下の第1小臼歯よりも大きくて,その歯冠の変異は後者のそれよりもなおいっそう多くみられる.歯冠の頬側部はいつも咬頭が1つあるが,舌側部にはしばしば2つの咬頭があり,時としてはこれが3つあることもある.舌側の咬頭がただ1つである場合には,この歯が下の第1小臼歯に似ているのである.しかし舌側咬頭がいつも下の第1小臼歯のそれより大きいので,そのために上の第2小臼歯ともある程度の類似を示すのである.もっとも上の第2小臼歯とのちがいとしては歯冠がむしろ円柱状であって,かつ“逃避”をあらわしていることである.歯根は横断面が円くて,下の第1小臼歯の根より長い.根の分岐はひじょうにまれなことである.

4. 大臼歯Molares, Mahlzähneは多数の咬頭をもつ歯である.それゆえ多咬頭歯Dentes multicuspidatiとよんで2つの咬頭をもつ双咬頭歯Bicuspidatenに対立させられる.大臼歯はすべての歯のなかで最も大きくて,大仕掛けのものであって,第2代の歯ができるときzweite Dentitionに初めて生じ,乳歯のなかにその前身をもっていない.大臼歯はその咀嚼面のひろいことが著しい.第1大臼歯がどこの列でみても最大であって,第3大臼歯が最も小さい.第3大臼歯は著しくおそく生えてくるので智歯Dens serotinus, Weisheitszahnとよばれる.上の大臼歯の咀嚼面は角のとれた菱形といえるような形であり,下の大臼歯のそれはむしろ正方形あるいは長方形に近い.咀嚼面は平らでなくて,4個あるいは5個の咬頭をもち,そのあいだをへだてる交叉した形の溝がある.この溝が上の大臼歯ではH字形をなし,下の大臼歯では十字架の形である.上の大臼歯では口蓋側(内方)の咬頭が高く,下の大臼歯では舌側(内方)のそれがいっそう高い.上の第3大臼歯では多くのばあい口蓋側の咬頭が合同している.その歯冠が他の大臼歯の咀嚼面にまで達していないことがはなはだしばしばであり,そのほかなおいっそう高度の退化現象が第3大臼歯についてみられるので,この歯は消滅しかけているものと考えられる.大臼歯の歯冠の接触面は前後とも歯頚に向かってせまくなるが,舌面(あるいは口蓋面)と頬面は歯頚に向かってひろくなる.大臼歯の根は分岐している.

S.018   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る