Rauber Kopsch Band2. 019   

上の第1および第2大臼歯の根は3部よりなっている.頬側に2本あってそれがたがいに離開しており,口蓋側に1本太いのがある.頬側の2本は上顎洞に向かっており,口蓋側のものは口蓋に向い,同時に後方を指している.このものはしばしば溝をもっており,2つの尖頭に分れていることがある.下顎の第1および第2大臼歯はそれぞれ2根をもっている.前方に1つと後方に1つである.これらの根は押しつけられた形で幅がひろくて,向いあった面に溝がある.まれに分岐がおこっている.上および下の第3大臼歯では根が合一して円錐形の単一のものになっていることぶまれでない.

a)上の大臼歯

α)上の第1大臼歯:咀嚼面は菱形であって,ここに頬側に2つと口蓋側に2つの咬頭がある.これらの高まりが2つの縦溝と1つの横溝によってへだてられて,これらの溝がいっしょになって,歯列弓の方向に対して斜めにおかれたH字形をあらわしている.前方の縦溝は前方の接触面からおこって頬面に終わっており,後方の縦溝は後方の接触面から口蓋面にいたり,さらに口蓋側の根にまでつづいている.横溝はこれら2つの縦溝の中央をたがいに連ねる.H字形は咀嘘面のなかに対称的にあるのではなくて,後方かつ頬側にかたよっている.したがって前方の口蓋側咬頭が最も大きくて後方の口蓋側咬頭が最も小さい.しかし頬側咬頭は前後のものがほとんど同じ大きさである.しかしここに述べたような規則正しい形をしているのはむしろまれであって,次にいう2つの主な形がそのほかに区別される.その1つでは前方の口蓋側咬頭と後方の頬側咬頭とをたがいにむすぶエナメル質の1つの高まりの出現によってH字の横の溝がなくなっている.いま1つの主な形はカラベリ結節Tuberculum anomale Carabelli (日本人におけるカラベリ結節の頻度:29.3%(森),17.5%(山田),13.1%(馬).ヨーロッパ人では:11.2%(Terra),17.4%(Bolk),13.6%(Hillebrand).)とよばれる1個の小さい高まりが前方の口蓋側咬頭の口蓋面(内面)にある場合である.カラベリ結節の尖端はふつうは咀嚼面に達していない.頬面はほとんど鉛直に立っていて,中等度の膨らみを呈し,前方の接触面とは鋭い角をなして合し,後方の接触面とは鈍い角をなして合している.そのことは咀嚼面の方から歯冠をみると最もよくわかる.口蓋面はつよく膨らんでいて,後方の縦溝のつづきをもっており,時として第5の咬頭としてカラベリ結節をもっている.前後の接触面は平面的あるいは軽い凸をしめし,前方の接触面がいつも後方のものより大きい.ふつうに3つのが存在し,それは頬側に2つと口蓋側に1つである.これらの根は前後の方向に押された形であって,その向いあった面にそれぞれ1つの縦溝をもっている.口蓋側の根は横断面が円くて,舌の方に向かった面に1つの溝をもっている.前方の頬側の根が最も幅がひろくて,また最も短い.3根は歯頚からたがいに離開する.頬側の根の尖端は後方にまがり,口蓋側の根の尖端は頬側(外方)にまがっている.頬側の根のいずれか1つが口蓋側の根と合一していることがある.また3根より多くの根が存在することもある.歯髄腔は容積が大で,歯の頚部のなかにあり,咬頭の数と同じだけの数の尖った突出部をもっている.

[図23]上の左の第1大臼歯

[図24]上の左の第2大臼歯

[図25]上の左の第3大臼歯

S.019   

最終更新日13/02/03

 

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