Rauber Kopsch Band2. 059   

 口蓋扁桃へくる主な血管は顔面動脈からの上行口蓋動脈の扁桃枝R. tonsillarisである.しかし上行咽頭動脈,舌背動脈,口蓋動脈の枝がひにきていることがある.動静・脈吻合がv. Hayekによって記載された.

 内頚動脈は口蓋扁桃のはなはだ近くを通っているわけでないので,その手術のときに傷つけられるおそれはまずない.大きい出血はむしろ顔面動脈がひじょうに迂回した走り方をしている場合におこるのである.

 口蓋扁桃からでてゆくリンパ管は深頚リンパ節にいたる.しかも主として内頚静脈の上にある1個の大きなリンパ節に達している.口蓋扁桃にやってくるリンパ管は存在しないことをHoepke(Med. Welt 1934)が述べている.なおHoepkeは正常の口蓋扁桃から絶えずリンパが上皮を通りぬけて咽頭腔に達すると考えている.

 神経は三叉神経および舌咽神経からきている.

II.咽頭Pharynx, Schlund(図82, 88)

 咽頭は消化管と呼吸道の両方に属する部分で,一方は口腔と鼻腔,他方は食道と喉頭のあいだに介在している.咽頭の内部にある部屋は咽頭腔Cavum pharyngis, Schlundhbhleであって,これは大体においてまっすぐな管で,しかし前方に軽い凸をえがいており,前後の方向に圧平された形をしていて,上方は頭蓋底から下方は喉頭の下縁まで,すなわち第6頚椎の下縁の高さまで達して,ここで食道につづいている.

 咽頭の後壁は疎性結合組織(咽頭後結合組織retropharyngeales Bindegewebe)をもって深頚筋膜と結合されている.舌骨より下方で咽頭は,他の頚部内臓がそうであるように,中頚筋膜で被われ,そのさい最もうしろの場所を占めている.上方では咽頭壁は頭蓋底と結合している.また前方は上から順にいうと,後鼻孔の側縁,口腔および口峡の後方に向かった壁,ならびに喉頭と結合している.咽頭の長さはおよそ12cmである.その最も幅がひろいところは舌骨の大角の高さにあって,そこから上方へは幅が少しずつ減るが下方へは急に減ずるのである.その最もせまいところは輪状軟骨の高さに相当する.

 後鼻孔に向かっている部分を咽頭円蓋Fornix pharyngis, Schlundgewölbeという.口蓋帆は後下方に向かって咽頭腔のなかへ突出していて,食物がとおるときは口蓋帆が咽頭の後壁に接着することによって咽頭の上部すなわち鼻部Pars nasalisが下部から分たれる.下部がまた口部Pars oralisと喉頭部Pars laryngicaの2部からなるのである.

 咽頭壁にはいくつかの層が区別される.それを内から外へ数えると,粘膜・結合組織性の基礎層fibröse Grundtage・筋層・結合組織性の外膜である.

1. 咽頭の結合組織性の基礎fibröse Grundlage des Schlzandes(図85)

 咽頭の結合組織性の基礎層は粘膜下組織および筋層と密に結合している薄いが丈夫な膜であって,頭蓋底に固く着いている(第1巻 図271).その起始線は後頭骨の咽頭結節Tuberculum pharyngicumから両側とも脊柱の前面を被う深頚筋群の付着部の前の線に沿って後頭骨の底部をこえてすすみ,錐体後頭軟骨結合Synchonürosis petrooccipitalisにいたる.そこから頚動脈管の外口に達し,またその前で蝶骨錐体軟骨結合Synchonürosis sphenopetrosaにゆく.ここから起始線は前内側にまがって,この軟骨結合に沿って耳管にすぐ接しつつ翼状突起の内側板の基部にいたる.耳管軟骨はかくして咽頭壁内にとり入れられる.後鼻孔の上外側の隅からこの起始線は翼状突起の内側板に沿って下行し,頬咽頭縫線Rhaphe bucipharyngicaに随つてすすみ下顎骨の顎舌骨筋線Linea mylohyoidea mandibulaeにいたる(v. Hayek, Verh. anat. Ges.,1928をみよ).

 この線維膜は頭蓋底の近くで最もよく発達していて,ここでは或る短い範囲で筋層によって被われずに露出している.この部分をとくに咽頭頭底板Lamina pharyngobasialisという(図85).

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最終更新日13/02/03

 

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