Rauber Kopsch Band2. 105   

膵体は第1腰椎の境のところで脊柱の前をこえる.膵尾は第11および第12肋骨の高さで終わっている.III. 近くの諸器官との位置関係としては膵頭は腹腔の大きい血管の幹と接近していて,まず膵頭のうしろに大動脈と下大静脈と右の腎静脈ならびに横隔膜の腰椎部がある.また膵切痕には上腸間膜静脈があり,時にはなお上腸間膜動脈もそこを通る.上縁に接するところで門脈が形成され,また膵頭の前方には胃十二指腸動静脈がある.膵頭の上縁に接して脾動脈が走り,またそこに多数のリンパ節とリンパ管がある.膵体の後面に接して,しばしばそこで特別な溝のなかに埋まって脾静脈がある.膵体の前面に胃が触れており,また前面の下縁に横行結腸間膜の根が付着している.

 前面は腹膜で被われて,網嚢により胃から隔てられている.総胆管は膵頭のうしろをすすみ,しばしば膵頭にそれがとおるための1つの溝または管ができている(図114).膵尾は左の腎動静脈の上にのり,左の腎臓の前面および腎門の前にある.膵尾は脾臓の膵臓面Facles pancreaticaに達している.

 膵臓の導管である主膵管Ductus pancreaticus majorは左から右へ,この腺の全長を貫いて走り,腺の実質のなかに完全に埋まっており,前面よりも後面にいっそう近いところを通っている.この導管は小葉群から出るたくさんの小さい管が合してできるのであって,小さい管が四方八方から主膵管に流れこむのである.膵頭では他のかなり太い枝のほかに,鈎状突起から1つの管がきて主膵管に合する.そこから主膵管は軽く下方にまがって,総胆管の左側に接し,これといっしょに十二指腸下行部の後壁の内側縁にいたる.この両管が相ならんで腸壁の外方の諸層を斜めに貫き,すでに78頁で述べたように両管が合同して,あるいは別々に[大]十二指腸乳頭Papilla duodeni(major)で開くのである.両管が合したところで臨床医家のよくいうオッディ括約筋Sphincter Oddiがそのまわりを輪状にとりまいている.この筋肉はヒトではあまりよく発達していない.括約筋のある内面のところが弁の装置になっている.この弁はいくつかのボケツト状の弁が集まった形をしているが,それにしても多くのばあい貧弱なものである.

 導管の幹もその枝も白い色をしているので,赤い灰色をした腺の実質からはっきり区別がつく.主膵管の最も広い部分は十二指腸の近くであって,その径は2~3mmである.

 変異:時として主膵管がその開口部に達するまで重複していることがある.しばしばこの膵管と総胆管とが合しないで別々に十二指腸に開いている.上方の1本の枝が独立して十二指腸に開くことがあり,その開口はたいてい殆んど目につかないような高まり(小十二指腸乳頭Papilla duodeni minor)においてである.このめだたない乳頭は主膵管の開口より2,3cm上方で幽門からは平均7cm(最大9cm,最小3.5cm)離れたところにある(Keyl 1925) (図114).ここに開口する副管すなわち副膵管Ductus pancreaticus minorが膵臓の主な導管になっていることがあり(Keyl,1925によれば全例の5~8%),そのときは下方の管が副管の形になっている.第3の十二指腸乳頭というべきものが4例いままでに報告されている.Keylによると副膵管が欠如しているのは全例の3%で,33%においてこの管が主膵管の1本の副枝にすぎないという形で存在し,4%でほ副膵管が顕微鏡でやっと分る程度の細い管腔をもち,5. 8%ではその十二指腸に近い部分が荒廃していた.大小の2管ぶ存在するばあいに,この2つがたがいにつづいているのが98%であった.

 脈管と神経(図114, 116).膵臓へくる動脈は脾動脈からの膵枝Rr. pancreaticl,肝動脈からの上膵十二指腸動脈,上腸間膜動脈からの下膵十二指腸動脈である.また膵臓からでる静脈は脾静脈と上腸間膜静脈とにいたる.リンパ管は膵臓の表面のいろいろの場所からでてきて,近くのリンパ節に注ぐか,あるいは脾臓からくるリンパ管と合する.臨床上に重要なのは膵臓のリノパ管と十二指腸のリンパ管がつづいていることである.神経は迷走神経と交感神経とからくる.

 微細構造.上下の膵臓は複合胞状腺であって,大小いろいろの不規則な多面形をした小葉からできている(図155).小葉のあいだは結合組織によって分けられ,同時にゆるく連ねられている.小葉間結合組織のなかを導管がとおる.この導管に多くの枝分れをもつ長い峡部がきて開口する.分泌作用の行われる終末部すなわち腺体は低い円柱状あるいは円錐状の細胞からなり,この細胞の腺腔に面した部分には光をつよく屈折する多数の顆粒(酵素原顆粒Zymogenkbrnchen)がふくまれている(図156).周囲の方の比較的明るい部分に核がある.顆粒に富む細胞体の部分の厚さが機能の時期によって変化する.

S.105   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る