Rauber Kopsch Band2. 120   

 ElzeとGanterは造影用の粥で充たして小腸のうねりをレントゲン像でしらべ(図117),生体においても小腸は数メートルの長さがあるはずだということ,すなわち死体で研究したり手術のときにしらべて得られた腸の長さというものは大体に正当であることを確かめた.

 Lewke(Anat. Anz.,94. Bd.,1943)は固定して保存した死体で小腸の長さを腸間膜の付着するところで測つてそれが約3メートルであり,あまり少なくない範囲で個体的に変動することを知った.

脾臓Lien, Milz(図166, 170179)

 脾臓の形はコーヒー豆に似ている.そして軟くて,血管にはなはだ富み,たやすく拡大する性質がありジその色は青灰あるいは紫赤である.脾臓の長さは成人で10~12cm,幅は6~8 cm,厚さ3~4 cmである.重さは150gと200gのあいだである.(日本人の脾臓の重さはふつう70~130grである(男の62%,女の58%がこの大きさの脾臓をもつつ但し病理解剖のさい測つたもの).また硬化した死体で測ると,日本人の脾臓の大きさ(平均)は男では長さ99.7mm,幅72.3mm,厚さ33.4mm;女では長さ84. lmm,幅602mm,厚さ32. Ommである(鈴木文太郎:人体系統解剖学3巻上279~294,1920).他の計測によると日本人の脾臓は長さ105mm,幅65mm,厚さ25 mm,重さ97~106grのものが最も多い(西川義方,河北真太郎:東京医学会雑誌33巻23~95,1919).また山田によれば脾臓の重さは男(1129例)の平均131.5gr,女(755例)の平均122・4grである(山田致知:日本人の臓器重量.医学総覧,2巻14~15,1946).)40才を過ぎるとたいていその大きさが減ずる.

 脾臓には椎骨端Extremitas vertebralisと前端Extremitas ventralis,鋭縁Margo acutusと鈍縁Margo obtusus,横隔面Facles diaphragmaticaと内臓面Facles visceralisがある.

 横隔面(図172)は平滑であって,腹膜によって被われ,横隔膜に接している.内臓面(図171)は血管が入ってくる所に当たってへこみ,すなわち脾門Hilus lienisがあって,これにより前後の2部に分れ,両部ともその大部分がやはり腹膜で被われている.前部はいっそう広くて胃底に密接していて,それゆえ胃部Pars gastricaとよばれ,後方は腎部Pars renalisといい,ここは左の腎臓と腎上体ならびに横隔膜の腰椎部に接する.しばしば鈍い稜線が胃部と腎部を分け,かつ脾門をふくんでいる.膵尾と左結腸曲が内臓面の下部に達していて,ここは膵部Pars pancreaticaとよばれる.鋭縁は多くのばあい,それも主として前端の近くで,溝または切れこみをもっている.前端は横隔結腸ヒダの上にのっている.椎骨端は多くは鈍い円みを呈して終り,横隔膜の円天井に接している.脾門の位置は後胃間膜の胃脾部の付着部に相当する.

 局所解剖:I. 全身に対する位置の関係としては,脾臓は上腹部の左外側部にある.II. 骨格に対する位置の関係としては,脾臓の長軸はおよそ第10肋骨の経過に当たっている.椎骨端は第10肋骨の角と結節とのあいだにあって,第10胸椎の横突起から約2cm,その棘突起からは4cm離れている.前端は腋窩線を前方にこえている.脾臓の横軸は第9肋骨から第11肋骨に及んでいる.III. 近くの諸器官との位置の関係は,脾臓の横隔面が横隔膜と接し,内臓面は前方は胃に,後方は腎臓と腎上体に,下方は膵尾と左結腸曲に接している.

 変異:脾臓の近くにしばしば小さくて円い副脾Lienes accessorii, Nebenmilzenがみられる.副脾が1つあるいは2つあることはかなりしばしばである.まれにはその数が20個に達する.エソドウ豆の大きさからクルミの大きさまであって,多くのばあい脾臓の前端や内臓面のそばにある(図113).脾臓じしんの切れこみが深くなって,その一部が全くちぎれるまで,あらゆる程度の移りゆきがみられる.まれにはもっと離れたところに副脾がみられる(Witsche, Arch. path. Anat., 273. Bd.,1929).

[図170]脾臓の内臓面 他の器官との接蝕面をしめす.(1/3)

 構造.脾臓はまず漿膜で被われて,その内方に丈夫な被いがあり,この2つを合せて脾被膜Capsula lienis, Milzkapsel(図173)という.この2つの膜のあいだには漿膜下すなわち浅層のリンパ管網が入りこんでおり,両膜はたがいに密につながっている.白膜Albugineaは固い結合組織性の膜で弾性線維および多くの動物では)平滑筋をふくんでいる.それによって囲まれた内容である脾髄Pulpa lienisは軟くてたやすく切られる.脾髄の色は暗調の褐赤ないし青赤であって,空気にふれると明るい赤色となる.

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最終更新日13/02/03

 

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