Rauber Kopsch Band2. 195   

 まれに膀胱の1側に2本の尿管が別々に開口していることがあるが,その場合には開口部はたがいに密接している.

 微細構造腎杯,腎盂,尿管は3層からできている.すなわち外方に結合組織性の疎な外膜Tunica externaがあって,乳頭縁で腎洞の結合組織に続いている.内方にはよく発達した粘膜Tunica mucosaがあり,その一部が乳頭に移行している.この2つのあいだに筋層Tunica muscularisがある.筋層は平滑筋の束からできていて,この束は豊富な結合組織によってたがいに分けられている.筋束はこれまで切片標本での所見(図259)から信じられていたような各層に分れでいるものではなくて,格子状に配列しており,わりあい小さい傾斜角をなして空間のあらゆる方向にすすむものが組みあっている.腎杯の出口には特別な括約筋は存在しない(Steigleder, Beitr. Chirurg., Bd.178,1949).

 粘膜はひろがっていない尿管では縦走する小さなしわがあり,横断面では内腔が星状を呈している(図259).粘膜は細胞に富む結合組織からなり,はっきりした境なく粘膜下組織に移っている.上皮は移行上皮Übergangsepithel (第1巻図49, 50)である.腎盂と尿管の上部とには離ればなれに小さな管状の粘液腺がある(Egliによると腎盂には1qcmあたり1個ないし2個ある).

 腎盂の動脈は腎動脈から直接にくるものと腎動脈の枝からくるものとがある.

 尿管の動脈は付近の動脈からくる.精巣動脈も1本の小枝を送っている.リンパ管はきわめて豊富である.神経は腎神経叢と精巣神経叢および腸骨神経叢から来ている.神経は外膜のなかで基礎神経叢を作り,そこから個々の線維が筋層と粘膜にすすみ,また粘膜では細い神経が上皮まで来ている.

 Eggeling, H. von, Anat. Anz., 20. Bd.,1901--Heiss, R., Z. Anat. u. Elltw., 67. Bd.,1923--Kneise-Schober, Röntgenuntersuchung der Harnorgalle. G. Thieme, Leipzig 1941.

[図265]右の腎盂と尿管 レントゲン写真,いわゆる腎盂像.

C. 膀胱Vesioa urinalis, Harnblase(図262, 266270, 275, 276)

 膀胱ほ筋性の壁をもつ貯蔵所で,尿管から尿を受け入れて貯えておき,ときどき尿道を通して尿を外に送り出す.

 新生児の膀胱はふくらんだ状態のときには紡錐形をしていて,その大部分が腹腔のなかにある.成人の膀胱は小骨盤のなかにあって,恥骨の後方,直腸の前方に存在する.女では子宮と腔が膀胱と直腸のあいだに入りこんでいる(図262, 266, 275, 276).

 膀胱は空虚なときには骨盤腔の深部にあってほとんどたかまりを生ぜしめない程度で存在し,正中断では三角形を呈している(図266).中等度に充ちているとかなり大きぐなって円みをおびている.強く充たされるときは骨盤の縁を多少とも越え,卵円形となって,下方の広い部分,すなわち膀胱底Fundus vesicae, Blasengrundは直腸と腔の方に向い,円みをおびた先端すなわち膀胱頂Vertex vesicae, Blasenscheitelは上方に向かっていて,前腹壁に現われる.

S.195   

最終更新日13/02/03

 

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