Rauber Kopsch Band2. 215   

このようにゆるく固定されていることは病的な位置の変化をひきおこす傾きがあるが,その反面において妊娠のとぎ子宮が著しく大きくなるのを妨げない利点もある. 固定装置には次のもの示ある.

1. 腟とのつながり.腟は子宮の下方へのつづきが変形したものである.

2. 骨盤筋膜Fascia pelvisが部分的に腔,子宮へ移行している.

3. 子宮鼡径索(図275, 276).これは子宮の前面の両側で,卵管の付着部の下方からおこり骨盤の側壁を軽く前方に弓を画いて鼡径管にすすんでいる.この索の長さは約10~12cmで,男の精管と同様に鼡径管のなかにはいっていく.そして外陰部の前面においてその筋線維をふくむ束が広がって,恥丘と大陰唇の皮下組織といっしょになって, いる.

4. 腹膜.

子宮壁の各層(図286, 288, 289)

 子宮の壁は次の諸層からできている.すなわち漿膜である子宮周膜Perimetrium,子宮筋層Myometruim,粘膜である子宮内膜Endometriumの3つである.粘膜下組織は存在しない.

1. 子宮周膜 Perimetriumは膀胱底から子宮体の下部,または子宮頚の上部に達し,子宮の膀胱面に沿って上方にすすんでいる.子宮底のところでは漿膜は比較的固くついている.そこから子宮の直腸面を被って腟円蓋に達し,ついで直腸に移行する.子宮の両側縁から腹膜は子宮広ヒダPlica lata uteriとなって骨盤の側壁に向かっている.そのとき卵管と卵巣,および子宮卵巣索と子宮鼡径索とを包んでいる.その各部分をそれぞれ子宮間膜Mesometrium,卵管間膜Mesosalpinx,卵巣間膜Mesovariumという.腹膜は子宮の後方において両側で対をなしている横走のひだを作っている.その形は半月形で直腸子宮ヒダPlicae rectouterinaeといい,そのなかに直腸子宮筋M. rectouterinusという平滑筋をもっている.これらのもの,および子宮と直腸の間,子宮と膀胱の間にある体腔,ならびにヌツク憩室Divertikulum Nuckiについては漿膜嚢の項を参照されたい.また鼡径管の項, 第1巻376頁も参照のこと

[図286]子宮の上(17才)少数の線毛細胞をもった頚管の上皮(Stieveによる).

2. 子宮筋層Myometrium.子宮の筋層は平滑筋からなりつよく発達している.その筋束はいろいろな方向にからみあっているが,全体として消化管において認めたと同じ型で3層を区別できる.内方の縦走筋層は粘膜筋板に相当している.中央を占める輪走筋層は主として輪状の束からなり,他の層よりも断然よく発達していて,腔所の広い静脈叢がここにある.したがってこの層は血管層Stratum vasculosumとも呼ばれる.外方の縦走筋層にはその外側を縦走する束と内側を横走する束とがあって,漿膜のすぐ下にあり,血管上層Stratum supravasculareとも呼ばれる.子宮筋層の各層が最もはっきりと分れてみえるのは子宮頚である.

 Goerttler(Morph. Jhrb, , 65. Bd.,1930)によると子宮の筋線維はラセン状に走っていて,それらはみな壁の全体を外方から内方に貫き,左右の2方向からくるものが規則正しく交叉している.

 子宮の側縁に沿って筋層と腹膜の両葉の間にある場所と,その内容(主に血管,神経,および原腎管の遺残をふくむ結合組織)は子宮傍[結合]組織Parametriumという.

3. 子宮内膜Endometrium.子宮の粘膜は1.5~2mmの厚さで,粘膜下組織をもたないので,はっきりした境なしに筋層の間質結合組織に移行している.内膜は卵管の粘膜および腟の粘膜に続いている.

S.215   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る