Rauber Kopsch Band2. 236   

成熟した精子の構造(図306, 307)

 人の精子は糸状のものであって,その長さは58~67µである.頭部Kopf,中間部Mittelsttück,尾部Schwanzの3つの主要部分からできている.

 頭部は広いほうの面からみると卵円形(ほとんど楕円といえる)で,側方からみると西洋ナシの形である.細くなっている端は頭部の前部である.頭部は細胞形質性のきわめて薄い被膜に包まれている.この被膜には微小粒体や原線維がある(図307).頭の後部はドングリの実がカラのなかにはいっているように被膜に包まれている.この被膜の前縁には縁輪Randreifenがある.(頭帽Kopfkappeは人では存在しない).

 中間部Mittelstückは頚部Halsと結合部Verbindungsstückとからなりたっている.頚部は前方の中心子(頚部小結節Halsknötchen)と均質性の中間物質Zwischensubstanzからできている.この中心子は2つの小粒からなっているらしくみえる.そのうちの1つからは1本の中心原線維Zentralfibrilleが出ている.結合部は前方で円板状の横板Querscheibeによって境され,後の境は後方の中心子の輪状の部分(終輪Schlußring)である.この部分の軸をなして中心原線維があって,これが尾部に続いている.軸糸の周囲には原形質性の薄い被膜があって,そのまわりをミトコンドリアからできたラセン糸Spiralfadenが8~9回まいている.ラセン糸は微小粒体をもった明るい中間物質のなかにうずまっている.ラセン糸は中間物質とともにラセン膜Spiralhülleを形づくるのである.ラセン糸の外側に原形質性の薄い鞘がある.

 尾部Schwanzは終輪のうしろで始まる.これは主部Hauptstückと終末部Endstückという2つの部分からなっている.両部とも原線維の集まりである軸糸をもっている.軸糸は終末部では露出しているが,主部では被膜がその上にある(図306).

 上に述べたのは,典型的な形の精子であるがそのほか異型も恐らく常に存在しているようである(Broman, Anat. Anz., 21. Bd.,1902). Bromanは次のような変つたものがあるという.1. 大いさの違い(過大精子と過小精子Riesen-und Zwergspermien);2. 頭部は1つで,尾が2本(1~2:1000),または3本(1~2:10000),あるいは4本(きわめてまれ)のもの;3. 頭が2つまたはそれ以上あり,それに対して尾が1本ないし2本以上あるもの;4. 大きさは正常であるが形が異様なもの.

精巣上体の構造

 精巣の白膜は精巣上体頭の高さで12本ないし15本の輸出小管Ductuli efferentesによって貫かれている.輸出小管は精巣上体頭のなかへ進み,その一部を形成している(図308, 309).

 精巣網から出た輸出小管は初めはまっすぐである.しかし精巣上体頭に近づくとともに,次第に強くうねって,かくして精巣上体小葉Lobuli epididymidisを形づくる.この小葉は円錐形をしていて1列をなしてたがいに並んでいる.円錐の底は精巣上体頭の方に,尖端は精巣のほうに向いている.上に述べたことでもわかるように精巣上体小葉は同時に精巣小葉とは反対の位置にある.精巣小葉と精巣上体小葉とはおのおのの基底面をたがいに反対に向け,尖端をたがいに向け合っている.これら2つの小葉の合するところに精巣網ができている.

 精巣上体小葉のうち最も大きいものは,ほぼ12mmの長さで,それぞれ1本の管がはなはだしくからみ合ってできた輸出小管円錐Conus vasculosusからなりたっている.この管の長さは16~20cmである.輸出小管のうちいちばん上方にあるものがまがるところから精巣上体管Ductus epididymidis, Nebenhodengangがはじまる.この管は数多くのうねりをなし途中で中断することなく下方に走っている(図308, 309).1精巣上体管は2~10cmの間隔でこれに合流するすべての小葉の端を受け入れている.しかし精巣上体管じしんが強くうねっているので各円錐の開口部はたがいに接近している.精巣上体管はこのようにうねったままで精巣上体の体と尾に続いている.体と尾はこのうねった精巣上体管だけからなっているのである.

S.236   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る