Rauber Kopsch Band2. 245   

 これとともに浅腹筋膜Fascia superficialisの薄い続きが陰嚢のなかに達している.

5. 皮下組織Tela subcutanea.皮下の結合組織--しかし脂肪組織は含まれていない--も精索に伴って陰嚢にいたる.そしてここでは平滑筋線維を豊富にもっていて,これが主な構成成分となっている.

 この平滑筋線維の層は軟かくて厚くて,赤みがかつており,肉様膜Tunica dartos; Fleischhautと名づけられる,これによって精巣は陰嚢のなかで容易に移動させられるし,またこれが縮むことによって陰嚢の皮膚にひだやしわができるのである.

6. 皮膚Cutis.これは上に述ぺたいろいろな被膜のいちばん表面のもので,体の皮膚が突出してつくる1つの袋であり,左右の精巣と精索の終末部のまわりを包んでいる.この突出部はこれに属している皮下組織とともに陰嚢Scrotum, Hodensackという.

 陰嚢は体格のよい丈夫な人ではあまり引き伸ばされていないで,著しくしわがある.そして寒冷の作用によっていっそう強くちぢむ.虚弱な人,または病人ではゆるんでいて,かなり強くたれ下っている.その表面には中央部に低い高まり,すなわち陰嚢縫線Rhaphe scrotiがあって,陰嚢は左右の各半がたがいに融合してできたものであることを示している.この縫線は陰茎の下面から陰嚢と会陰の上をへて肛門に伸びている.会陰ではそれが会陰縫線Rhaphe perineiとよばよる.

 陰嚢の皮膚は薄くて,普通はその他の体の皮膚よりも黒ずんだ色をしている.ここには多数の大きな脂腺があり,また毛が散在している.毛包はたいてい小さい高まりの形をしていて,肉眼でもみえるし,あるいは触れることができる.また浅層の血管も薄い皮膚を通してすいて見える.そのほか陰嚢とその周囲には多数の汗腺がある.

 肉様膜は会陰,大腿の内側面および恥丘の皮下の結合組織にずっと続いている.ここには脂肪組織は全くないか,あってもごく散在するにすぎない.陰嚢の前方と側方にある脂肪組織は陰嚢じしんの周りに近づくと次第に減り痕跡的となる.それに反して平滑筋は増加する.肉様膜の組織は陰嚢の前部のほうがその後部よりも豊富であって,2つの部に分れておのおのの側の精巣を包んでおり,また両方のあいだに隔壁,すなわち陰嚢中隔Septum scrotiをつくっている.

陰嚢およびその内容の脈管と神経

 精巣・精索の被膜・陰嚢の3者はそれらの脈管の配置について興味のある関係を示している.すなわちたがいに3層をなして重つている脈管区域がある.それらの起りが全く異なっていて,これらの3部にそれぞれ相当する脈管圏がある.

 精巣はもともと腹腔の内臓であるから,その動脈は腹大動脈の幹からくる.精索の被膜は前腹壁がふくれ出たものであるから,そこへゆく血液は腹壁を養う血管からくるのである.陰嚢は皮膚の突出した部分であるから,そこの血管層は大部分が大腿動脈からと,内腸骨動脈の会陰枝からきている.

 精巣動脈A. spermaticaは腹大動脈の臓側枝で対をなしており,腰筋の表面を腹膜に被われて腹膜下鼡径輪まで下行し,精索のなかをへて精巣と精巣上体に達している.この動脈は内腸骨動脈から出る精管動脈A. deferentialisの反回する部分と吻合する.精管動脈は精管に伴って走っている(図319).

 精索の被膜の動脈は挙睾筋動脈A. m. cremasterisである.これは下腹壁動脈が腹膜下鼡径輪のところで出す1枝である.この動脈が鞘膜と精巣膜に出す枝は精巣動脈の枝が精巣上膜を養うものとつながっている.

 陰嚢動脈Aa. scrotalesは内腸骨動脈から出る内陰部動脈の枝である.それより細い陰嚢枝Rami scrotalesは大腿動脈から出る外陰部動脈の枝である.

陰嚢の皮膚にはリンパ管が豊富である.これは一部は前方に,一部は後方に流れている.

S.245   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る