Rauber Kopsch Band2. 275   

 他の漿膜と同様に腹膜にも体壁に属しているいっそう厚くて固い部分,すなわち壁側腹膜Peritonaeum parietaleと内臓の被いである臓側腹膜Peritonaeum visceraleとを分ける.

 壁側腹膜は前腹壁と側腹壁の内側の面をとぎれずに被っており,さらに横隔膜の腹腔面と後腹壁にも続いている.また小骨盤のなかにも入りこんでいて,その壁のかなり大きい部分をも被っている.

 前腹壁での腹膜の関係はもっとも簡単である.腹膜は臍のところからすでに述べたとおり前腹壁の後面を上行して横隔膜の腹腔面に達して,これを被っており,その筋肉部とは疎に,腱性部とは密に結合している.胎生期には腹膜が膀を通って伸び出しており,そのために体腔も外にでて胎児被膜のあいだに入りこんでいた.横隔膜の腹腔面を被っている腹膜は肝臓が横隔膜と付着する面の前界まで達して,ここで肝臓の横隔面に移行している.

[図348]定型的なヘルニア門 (Fr. Merkel) これと図349の正常図とを比較せよ.

 その経過のあいだに腹膜は前腹壁において膝静脈によるひだ,すなわち肝鎌状間膜Mesohepaticum ventraleを作っている.このひだの自由縁は下方に向かっていて,初めは矢状方向にあり,肝臓への付着部はわずかに右方にずれている.すなわちこのひだは臍からほぼ正中線を上行して横隔膜の腹腔面と肝臓の横隔面に伸びており,閉鎖した臍静脈,すなわち臍静脈索Chorda v. umbilicalisを入れていて,この索を臍から肝臓の内臓面に導いているのである(図100).

 臍の下方には3つのひだがあり,そのうちの1つは正中に,他の2つは外側にある.これらはみな臍に終わっている(図348, 349).中臍ヒダPlica umbilicalis mediaは臍尿管索Chorda urachiを含んでいる.外側臍ヒダPlicae umbilicales lateralesは膀胱の側面から内側上方にすすんでおり,左右それぞれ閉鎖した臍動脈,すなわち臍動脈索Chorda a. umbilicalisを入れている.これらのひだは翼のように突出していて,その突出する度合いは強いことも弱いこともある.外側臍ヒダのさらに外側には腹壁動脈ヒダPlica epigastrica(図349)があり,これは下腹壁動静脈を包んでいる.これらのひだのあいだにある外側・内側・膀胱上鼡径窩Foveae inguinales lateralis, medialis, supravesicalisについては第I巻,375頁から 378頁までと第I巻図497499を参照されたい.

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最終更新日13/02/03

 

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