Rauber Kopsch Band2. 282   

c)肝十二指腸部Pars hepatoduodenaliもは肝門と胆嚢から十二指腸の上部に達している.右方に向かったその自由縁には網嚢孔という網嚢への入口がある.肝十二指腸部は総胆管Ductus choledochus(右),肝動脈(左),門脈(前2者の後方で中央部にある)を包んでいるので,かなり厚くなっている.この部分の両葉のあいだにはなおリンパ管と神経もある(図113, 164).

2. 横隔脾ヒダPlicae phrenicolienalesは横隔膜から脾門に達している(図164).

3. 後胃間膜Mesogastrium dorsaleは横隔胃部・胃脾部・胃結腸間膜部からなりなっている.

a)横隔胃部Pars phrenicogastricaは三角形の短いひだで,横隔膜から胃の噴門の左側面に達している.

b)胃脾部Pars gastrolienalisは大弯の胃底部から出て脾門に達している.これは網嚢の前壁の左の部分である.

c)胃結腸間膜部Pars gastromesocolicaは胃の大弯と横行結腸とをつないでいる.

 大網Omentum majusは大弯と横行結腸から出ている.これは4枚の膜からなっており,そのうち外側の2枚は大きな腹膜嚢に属し,内側すなわち中間の2枚は網嚢に属している.大網はときには脾までしか達していないことがあり,また小骨盤のなかまで達していることがある.これは多量の漿膜下脂肪組織をもっていることがある.大網は左方で胃脾部に移行している.大網の上部が胃の大弯と横行結腸のあいだにあって,横行結腸と癒着しているのが胃結腸間膜部である.

 脾網Omentum lienale, MilznetzはBöker(Verh. anat. Ges.,1932)によると必ず存在している網構造Netzbildungであって,大網と同様に胃の大弯から出ており,胃脾部の前方にあるもので,左方,に向かっていて,3本から4本の指状をした葉状部をもって脾をかこむ形をしている.脾網は図体の大きいネコ科(Felidae)の動物できわめてよく発達しており,ときには大網よりも大きいことがある.(Schreiber)

3. 大腸の腹膜嚢Dickdarmkapsel

 横行結腸は初めは独立した腹膜のひだである横行結腸間腸Mesocolon transversumによって腹腔の後壁に固着している.その根,すなわち横行結腸間膜根Radix mesocoli transversiの付着線は十二指腸の下行部と膵臓の頭を越えて横走し,ついで膵体の下縁に沿っている.横行結腸間膜の上葉と横行結腸とが大網の脊柱に向かって戻ってきた後葉と2次的に癒着するために,横行結腸間膜はつまり4枚の膜からなりたつのである.

 すでにのべたように胃の大弯から横行結腸に伸びている大網の部分は胃結腸間膜部Pars gastromesocolicaといい,これによって大腸の腹膜嚢は胃の腹膜嚢とつながっている.

 その上に大腸の腹膜嚢は横行結腸だけを包むのでなくて,大腸の全体を包んでいる.それゆえこれには上行部横行部下行部が区別される.上行部は盲腸と上行結腸に相当し,横行部は横行結腸に,下行部は下行結腸とS状結腸,および直腸に相当している.各々の部分について腹膜の特徴を次に述べることにしよう.

 盲腸は前方と側方と下方を腹膜で被われており,後方はいろいろな範囲において結合組織によって腸骨筋膜に付着している.腹膜がかなり.完全に盲腸を被っていて,そのために盲腸は多少とも後腹壁から一はなれていることがある.盲腸の後面には上に向う1つの腹膜のくぼみがあり,これを盲腸後陥凹Recessus retrocaecalisといい,これには個体差がある.これは結腸の初部にまで達していることがある.

 この変化に富む陥凹のやや上方に下回盲陥凹Recessus ileocaecalis caudalisというもう1つのくぼみがある.これは多くの場合かなり大きい腹膜のひだ,すなわち下回盲腸ヒダPlica ileocaecalis caudalisによって外側を境されている.

[図354]S状結腸間陥凹 S状結腸を上方にあげて,S状結腸間膜の左側板がみえるようにしてある.1 S状結腸;2 S状結腸間膜;3 S状結腸間陥凹の入口.

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最終更新日13/02/03

 

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