Rauber Kopsch Band2. 281   

 肝臓の左縁の近くで肝臓と横隔膜のあいだにはしばしば小さな腹膜のくぼみがある.これは横隔肝陥凹Recessus phrenicohepaticus(v. Brunn) といい,横隔膜の腹腔面において肝臓と横隔膜との付着面の後界に沿って右から左に伸びている.それゆえその入口は右方にあり,盲端は左方にある.この陥凹は肝臓の左葉が生後その一部が退行して,この部分の前縁,まれにはその上縁が横隔膜と癒着するために生ずるのである.

[図352]肝臓の横隔面(破線)と内臓面の腹膜線(点線)

 1 右葉;3 左葉;3胆嚢切痕;4 肝切痕と肝鎌状間膜の両葉;5, 6肝臓の付着部の前界;7, 7 右と左の三角間膜;8(7から10まで)付着部の左の後界;9と10 (左)矢状裂の静脈管索部を下行し,さらに肝門をとりまく2つの腹膜線;9 小網の前葉の起始線;10 小網の後葉(すなわち網嚢の前壁)の起始線;11尾状葉の後端;11と12網嚢の後葉の起始線と付着部の後界;13(7から*まで)付着部の右の後界;14 尾状葉の領域;* 尾状突起.

[図353]肝臓の内臓面の腹膜線

 肝臓はその前縁を上方に向けている. 図352図353を合せて観ること. 1 右葉;2 左葉;3 方形葉;4 尾状葉;4'乳頭突起;4" 尾状突起;5胆嚢;6'膀静脈索とその後方の続きが門脈の左枝に合するところ;7 下大静脈;8,8,8 静脈管索;9 門脈の左枝;10固有肝動脈;11 総胆管;12 門脈の右枝;13肝鎌状間膜の2線が付着部に達して終るところ;14と15 付着部の前界;16~19と17~18付着部の後界;18と19 左右の三角間膜の付着する場所;20 腎上体圧痕;21~22と21~16小網の前葉の起始線;22と17から出て4のまわりをとりまく線網は嚢孔の天井と尾状葉を囲んでいる.これらは網嚢に属するのである.

2. 胃の腹膜嚢Magenkapsel

 胃の表面を被う腹膜は小弯において前胃間膜Mesogastrium ventraleに続き,後者の内部に肝臓がある.前胃間膜は前・右外側・左外側の肝間膜と小網とからなりたっており,肝間膜はすべて横隔膜と前腹壁にいたることはすでに述べた.胃の大弯からは後胃間膜Mesogastrium dorsaleが出ている.このなかには脾臓が包まれている.それゆえ横隔脾雛襞は後胃間膜の一部でもある.特別な樽造物としては大網と脾網がある.

1. 小網Omentum minusは横隔胃部と肝胃部と肝十二指腸部からなっている.

a)横隔胃部Pars phrenicogastricaは食道の右側で横隔膜から胃の小弯に達している.

b)肝胃部Pars hepatogastricaは肝門と肝臓の静脈管索部から小弯にいたるもので,2枚の膜からできていて,その後方の膜ば網嚢の前葉である:肝胃部はこれらの部分めあいだに透明なベールのように張られており,それを通して尾状葉がすき通ってみえる(図99).

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最終更新日13/02/03

 

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