Rauber Kopsch Band2. 333   

II. 小脳Cerebellum, Kleinhirn

(日本人の小脳の大きさ:最大横径(両外側角間の距離)は平均9.88cm,前後径は虫部において平均3.6 cm,前縁と後縁との中間点のあいだの距離は平均左4. 97cm. 右4. 95cm,背腹径は虫部で平均3.51 cm,半球前部で平均左4.82cm,右4.83cm,半球後部ではそれぞれ3.91cm,3.87cm,重さは平均男134.7gr,女122.2gr,容積は平均男128.6ccm,女117.0 ccmである.(小川鼎三,細川宏:日本人の脳,23~26,165~166,1953))

 小脳は横臥した楕円体が鉛直の方向におしつけられた形をしている.その長軸(9~11cm)は左右に,短軸(4~6cm)は前後に向い,その厚さの軸(約3cm)は上下の方向にある(図408, 409, 410, 417, 418, 426, 427).

 位置:小脳は延髄を被い,さらに両側に強く突き出て,後頭鱗の小脳後頭窩をほとんど完全に満たしている.上方は小脳天幕Tentorium cerebelliに接し,小脳扁桃は時として大後頭孔の中にまで入りこんでいる.

 小脳の重さは,男と女でほぼ同じであり,120~150grである.

 小脳に上面Facles superiorと下面Facles inferior,前縁と後縁とを区別する.その前縁には前小脳切痕Incisura cerebelli anteriorがあり,後縁にはそれより深い後小脳切痕Incisura cerebelli posteriorがあって切れこんでいる(図418).

 前と後の両小脳切痕のあいだにある小脳の中央部Mittelteilは,数多くの横走する溝があって環形動物を思い起させるので,虫部Vermis, Wurmと呼ばれる.背方では上虫Oberwurmが2本の浅い溝によって,腹方では下虫Unterwurmが2本の深い溝によって,小脳の外側塊,すなわち左右の小脳半球Hemisphaeria cerebelli(図426, 427)から分けられている.

 小脳の両面は円くふくらんでおり,殊に下面がいっそう強くふくらんでいる.しかし下面全体のふくらみが1つの深く落ちこんだ部分によって中断され,この部分は後方で後小脳切痕に移行している.この落ちこんだところは小脳谷Vallecula cerebelli, Talと呼ばれる.小脳谷の底には下虫がある.

 小脳は数多くの小脳溝Sulci cerebelliという切れこみによって多数の幅の狭い回転,すなわち小脳回Gyri cerebelliに分たれている.

 一つの小脳回は平均2~3mmの幅をもっている.そのあいだの溝は2~27mmの深さであるが,ある場所では溝がごく浅くて,その存在がやっと認められる程度である.

a) 小脳半球の小葉

 小脳半球の上面では,1つの深い溝によって四角形の部分が半月形の部分から分けられている.前者を四角小葉Lobulus quadrangularis(図418)といい,これが上記の深い溝にほぼ平行したいっそう小さい溝によって,前部Pars anteriorと後部Pars posteriorとに分けられる.四角小葉の前方には結合腕のすぐ上方に中心小葉翼Ala lobuli centralisがある(図427).

 四角小葉のうしろには上半月小葉Lobulus semilunaris superiorが続いている(図418).この小葉に隣接する下半月小葉Lobulus semilunaris inferior (図426)は主として小脳の下面に属しており,上下の半月小葉のあいだを境する小脳水平溝Sulcus horizontalis cerebelliは長くて深い溝であって(図418),この溝はなお両半月小葉の範囲を越えて橋腕にまで延びており,これをさらに越えて腹方の正中線にまでも達していることがある.この小脳水平溝にその他の大きな溝がみな合している.

 小脳半球の下面にはしばしば2つの部分よりなる二腹小葉Lobulus biventer(図426),および馬蹄形に並んだ小脳回の1群よりなる小脳扁桃Tonsilla cerebelliが続いている.二腹小葉と小脳扁桃の前方には,下葉の前部として片葉Flocculus, Flockeがある.これは橋腕の下面に接していて,これが内側は白い髄質の片葉柄Pedunculus flocculi, Flockenstielにつダいている.片葉柄は内側は1枚の薄い板,すなわち後髄帆Velum medullare posterius, hinteres Marksegelに続き(図427),後髄帆じしんが下虫の小節とつながるのである.

 しばしば片葉の外側にあたって,二腹小葉と四角小葉とのあいだの角のところに,橋腕の上に接してなお他の小脳回の特別な小さい1群があって,これは副片葉Flocculus secundarius, Nebenflockeとよばれる.

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最終更新日13/02/03

 

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