Rauber Kopsch Band2. 418   

f)大脳半球の白質

 すでに365頁に述べたように,大脳半球の白質には次の種類の神経線維がある:すなわち交連線維と連合線維と投射線維とである.

1. 交連線維Kommissurenfasernは脳梁と前卒連のなかに含まれる.

a)脳梁線維Balkenfasernは非常に細いものである.この線維は前頭葉の底部と側頭葉の前方部と海馬足とを除いて(これらの部分には前交連が分布する),一側の大脳半球の皮質全体から始まり,他側の半球に終わっている.

 脳梁線維の多くのものははなはだ細いいく本かの側枝を出す.脳梁線維はおそらく大脳半球の対称的な2点をたがいに結合するだけではなく,それらの側枝によっていろいろな皮質層や皮質にある数多くのほかの細胞に影響をあたえるのである(図487).

b)前交連の線維にとっては脳梁線維のと同じ法則が適当に加減してあてはまるのである.

1. 連合線維Assoziationsfasernは大と小の錐体細胞および多形細胞の神経突起であって,これが白質の連合線維束に移行するめは(図439参照)多くは単純な形で行なわれる.しかしまたT字形に同じ大きさの2本の枝あるいは不同な大きさの2本の枝に分れるものもある(図488).後者のばあいには内方の枝が1本の脳梁線維となる.

 しかし到るところで次のことが確認される.それは多くの連合線維が皮質の一定点の細胞を他の数多くの細胞と結合するのであって,後者は1つの半球内で別の皮質領域にあり,おそらくは別の葉にさえも属しているのである(Cajal).人や高等な哺乳類では連合線維が白質の大部分をなしている.

 多くの連合線維にははなはだ細い側枝があって,これらの側枝は上行し,その上にあるいろいろな灰白皮質の諸層のなかを表在層にまで達して枝分れしている.これらの放線状側枝のほかに,白質内あるいは灰白質と白質との境のところに終るごとく見える側枝もある.白質にいたる側枝はたぶんそこにある数多くの下行性の原形質突起に接して終るのであろう(図489).

3. 投射線維Projektionsfasernは一部は求皮質性corticopetalに,一部は遠皮質性corticofugalに導いている.

a)遠皮質性の線維は(小さい哺乳動物の脳で研究した所によれば)皮質の全領域から起こって,集中して線条体を通りぬけ,大脳脚に達する.脳梁の高さでは1つの太い側枝を脳梁にあたえ(図487),次いで多くの束に分れて灰白質の集まっている部分を通過し,この灰白質に幾本かのきわめて細い側枝を送っている.また脳梁にも線条体の領域でも側枝をあたえることなく,その独自性を保って走りつづける軸索もある.上に述べた遠心性の線維はみな大脳皮質の大および小の錐体細胞から起り(図487C),またおそらくは皮質内の多形細胞の一部からも起るのであろう.それゆえこれらの線維の太さがいろいろと違うことが理解できる.

[図489]大脳皮質における神経突起の起始と終末 模型図(Cajal).

A 小錐体細胞;B 大錐体細胞;C, D多形細胞;E 他の中枢部から出てきた線維の終末;F 白質の側枝;G 白質のなかで枝分れする軸索(軸索の2分).

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最終更新日13/02/03

 

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