Rauber Kopsch Band2. 459   

下枝は眼窩の外側壁に沿って下方に走り,頬骨神経との交通枝Ramus communicans cum nervo zygomatico(図514)によって三叉神経の第2枝(上顎神経)に属する頬骨神経と結合する.この吻合部の前方に凸を画くがわからは涙腺神経と頬骨神経とに由来する多数の細い枝が発して,これらは涙腺に入る.

2. 前頭神経N. frontalis(図512, 513, 517, 519).3終枝のうちで最も太い前頭神経は眼窩の天井および眼窩骨膜のすぐ下で,上眼瞼挙筋の上を前方にすすむ.そして眼窩の中央部よりうしろで内側に向かって走る細い滑車上神経N. supratrochlearisをだし,次いで内側枝Ramus medialisと外側枝Ramus lateralisとに分れる.

 滑車上神経N. supratrochlearisは上斜筋の上縁に沿ってすすみ,滑車の内側面で上下各1本の終枝に分れる.

 その上枝は滑車の上を越えて眼窩を去り,眼輪筋ならびに前頭筋を貫き,枝分れして上眼瞼,鼻根およびこれにつづく前頭部の皮膚に達して終る.

 下枝は滑車のところから下行して,常に鼻毛様体神経から出る滑車下神経と結合している.前方に凸を画いて吻合するこの弓状部からは細い枝がいくつか発して内眼角の皮膚と結膜とに向かっている.

 内側枝Ramus medialisは内側前頭切痕Incisura frontalis medialisの中を,外側枝Ramus lateralisは外側前頭切痕Incisura frontalis lateralisの中を通って前頭部に達する.これらの両神経は眼輪筋,皺眉筋および前頭筋を貫き,前頭部の皮膚のなかを頭頂部にまで広がる.また両神経はそれぞれ外側に向かって下行する1枝を上眼瞼の皮膚と結膜とにあたえている.内側と外側の両前頭切痕のところで前頭神経は前頭骨とその骨膜とに枝をだしている.

3. 鼻毛様体神経N. nasociliaris(図512, 513, 516,  517, 522).この神経は動眼神経および外転神経といっしょに外側直筋の両起始束のあいだを通って眼窩に達する.そして視神経の上,上直筋の下を通って眼窩の内側壁に達する.そして眼窩頭蓋管のあたりで滑車下神経N. infratrochlearisと前篩骨神経N. ethrnoideus anteriorとの2終枝に分れる.この分れる前に毛様体神経節の長根Radix longa ganglii ciliarisすなわち知覚性の根,ならびに1~2本の長毛様体神経Nn. ciliares longiおよび後篩骨神経N. ethmoideus posteriorをだす.長毛様体神経は視神経の内側面に接して眼球に達し,後篩骨神経は翼口蓋神経節からの眼窩枝とともに眼窩篩骨管に達する.鼻毛様体神経の2終枝は次の経過をとる:すなわち

a)滑車下神経N. infratrochlearisは上斜筋の下で眼窩の内側壁に接して前方にすすみ滑車にいたり,各1本の上枝と下枝とに分れる.その上枝は滑車上神経と結合して,上眼瞼に達する.これが上眼瞼枝Ramus palpebralis superiorである.下枝,すなわち下眼瞼枝Ramus palpebralis inferiorは(もともと皮膚の一部であるところの)涙嚢に,また涙丘に分布し,そのうえ細い枝を内眼角の皮膚へも送っている.

b)前篩骨神経N. ethmodieus anteriorは眼窩頭蓋管を通って頭蓋腔に達し,硬膜に被われて臨板の上を前方にすすみ,前方の1つの孔(前篩骨孔Foramen cribro-ethmoideum)を通って鼻腔に入る.ここで鼻腔の粘膜にゆく内鼻枝Rami nasales interniと鼻の皮膚にゆく外鼻枝Ramus nasalis externusとに分れる.

α)内鼻枝Rami nasales interniには鼻中隔の粘膜の前方部に分布する中隔前鼻枝Rami nasaleg anteriores septiおよび外側前鼻枝Rami nasales anteriores lateralesとがあって,後者は篩骨の上鼻甲介と中鼻甲介の前端のところを通りすぎて鼻腔の外側壁の前方部の粘膜に広がる(図516).

β)外鼻枝Ramus nasalis externusは鼻骨の後面にある溝のなかを下方に走り,次いで鼻骨孔の1つあるいは鼻骨と中隔鼻背軟骨の鼻背板とのあいだを通って鼻の皮膚に達し,鼻尖にまでのびて,そのあたりの皮膚に分布する(図516, 517, 522).

S.459   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る