Rauber Kopsch Band2. 484   

4. 迷走神経の舌枝Ramus lingualis n. vagiとの結合(478頁参照).

5. 2頚神経係蹄との交通枝Rami communicantes cum ansa cervicali secunda.第2と第3頚神経の枝は上方に走って舌下神経に達し,また一部は3. の項で述べた枝に加わっており,かくして舌下神経下行枝Ramus descendens n. hypoglossiをなす.このいわゆる下行枝はそれゆえ舌下神経線維を含むのでなく,下行頚神経N. cervicalis descendensと結合して頚部の大血管の外面にある舌下神経係蹄Ansa nervi hypoglossiという1つのわなSchlingeをつくる.このわなは下方に凸を画き,しばしば叢状の配列を示している.

 舌下神経係蹄の凸面からは胸骨舌骨筋・胸骨甲状筋および肩甲舌骨筋の下腹への運動性の神経が出る.肩甲舌骨筋の上腹には舌下神経下行枝じしんから出る枝が入る.しかし舌下神経下行枝には上行性の線維も含まれていて,この線維は末梢の方向に舌下神経のなかをすすんで,甲状舌骨筋およびオトガイ舌骨筋への枝としてふたたび舌下神経を去り,なおその一部は舌枝にさえ達している.それゆえ舌下神経下行枝は上行性の線維束と下行性のものとよりなっている.

 変異:舌下禅経係蹄からおこる心臓神経 N. cardiacusがまれに見られるが,おそらくこれは迷走神経あるいは交感神経の心臓枝が舌下神経のなかを通つたものであろうと思われる.

6. 舌神経からの交通枝Rami communicantes(467頁および図524参照).

b)舌下神経の枝

1. 硬膜枝Ramus meningicus.これは舌下神経管のなかで舌下神経から発し,一部は硬膜の小さい孔を通って骨の内部に,また一部は後頭静脈洞の壁に達する.

2. 血管枝Rami vasculares.この枝は1本ないし2,3本あり,舌下神経管から外に出たところで舌下神経の幹より発して,交感神経の上頚神経節から出る細い枝と合して内頚静脈に達する.

3. 甲状舌骨筋枝 Ramus thyreohyoideusは頚神経線維が上行してきたもののつづきである.

4. オトガイ舌骨筋枝Ramus geniohyoideusはHollによれば3. と由来を同じくする.

5. 舌枝Rami linguales.この枝は舌下神経の幹の続きをなし,舌骨舌筋の外面から茎突舌筋,オトガイ舌筋などに達する.舌神経との結合によって舌下神経の運動性の舌枝にはおそらくは知覚性の線維が混入している.

IV.脊髄神経Nervi spinales Rückenmarksnerven

概説

 脊髄からは31対の脊髄神経Nn. spinalesが左右にでる.

 脊髄神経は体幹の各部に次のように分布する.すなわち脊柱の頚部と尾部とを除いて脊髄神経の対の数は脊椎の数と同じである.つまり各側に胸神経は12対,腰神経は5対および仙骨神経は5対が数えられる.これに対して脊椎の数と違うのは頚神経の8対,尾骨神経の1対(あるいは2~3対)である.脊髄神経の第1対は後頭骨と環椎とのあいだで脊柱管を出るし,脊髄神経の第8対は第7頚椎と第1胸椎とのあいだから出るのである.それゆえ脊髄神経の対が頚部では第8対を除いていつもその下方にある椎骨の番号に従って命名される.そして第8頚神経だけは椎骨の番号によって名づけられていない.そのほかの脊髄神経はみなその上方にある椎骨の番号に従って呼ばれるのである.

 つまり第1胸神経というのは第1と第2胸椎のあいだから出る神経であり,第1腰神経と呼ばれるものは第1と第2腰椎のあいだから出るものである.第5仙椎と第1尾椎とのあいだの椎間孔をとおる脊髄神経は第5仙骨神経である.かくして脊髄神経のすべてが椎骨のあいだを通って脊柱管から出る.

 全部の脊髄神経は2をもって脊髄からでる.それは後方の受容性receptorisch(知覚性sensibel)の後根Radix dorsalisと前方の効果性effectorisch(運動性motorisch)の前根Radix ventralisとである.両根はすでに硬膜嚢の内部でたがいに近づき,1重あるいは2重の硬膜鞘に包まれて硬膜嚢からでる.次いでその知覚性の後根が多数の神経細胞を取り入れてふくらんで,脊髄神経節Ganglion spinaleという神経節をなす.

S.484   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る