Rauber Kopsch Band2.587   

 角膜のリンパ路としてはまず層板間に広くゆきわたっている液細管Saftkanälchenである.そして角膜内の多数の神経のまわりを鞘状につつむ隙間がこの液細管とつながる.角膜からのリンパは結膜のリンパ管につづいている.後者が角膜のリンパの主要な流出路をなしている.

 角膜の神経は毛様体神経Nn. ciliaresから来ている.この神経の角膜枝は,強膜の辺縁部でシュレム管より外方において,角膜縁をとりまく輪状の神経叢をつくっている.

 この神経叢から細い線維東が結膜に侵入し,ここで結膜に固有の神経と結合してから,角膜の前面近くの層に達する.しかし神経線維束の大部分は直接に角膜固有質の中に放射状の方向に入り,ここで角膜の基礎神経叢Grundplexusをつくる.そしてこの神経叢の存在する範囲は前方は外境界膜にまで達するが,後方は角膜の厚さの前から3/4のところより後にはない.角膜縁からはいって来る,リンパ鞘に包まれた神経線維束は非常に数が多くて,約60本に達する.そのうち最も細いものはほんの2, 3本,最も太いものがせいぜい12本の神経線維をふくんでいるにすぎない.これらの線維は角膜にはいる前に,すでに髄鞘を失っている.軸索は何度も枝分れし,遂には微細な原線維に分れる.神経叢の結び目のところに結合組織細胞の核がよりそっている.基礎神経叢(図611)の前方部から,何本もの原線維からなる神経線維が多数でて,前境界膜を貫通する.そして前境界膜と上皮とのあいだに,もう1つの神経叢が形成される.これは上皮下神経叢subepithelialer Plexusとよばれるものであるが,Boeke(Z. mikr.-anat. Forsch., 2. Bd.,1925)によれば “basales Geflecht”(基底神経叢)と呼ぶ方がよいという.その理由はこの神経叢は基底面の近くではあるが,最下層の上皮細胞の細胞質内にあるからである.この神経叢から多数の細い線維がでて上皮細胞間を縫つてはいりこんでゆき,そこで上皮細胞間神経叢interepithelialer plexusをつくっている.しかし本当の神経終末は上皮細胞の内部にある.すなわちごく細い神経原線維が上皮細胞の内部にまで侵入し,そこで微細な終末網をなして終わっている(第I巻図60).Boekeによれば角膜の上皮細胞のほとんどすべてが神経支配をうけている.また基礎神経叢のすべての線維が上皮に達するわけではなく,かなり多くの部分が固有質に分布して,そこで自由終末をなしている.固有質における終末は,皮膚の真皮における終末に相当するのである.Boekeによると,やはり微細な神経原線維が角膜細胞の原形質と結合しているという.しかし上皮細胞内におけるような終末装置は記載されていない.

b) 強膜Sclera, Sklera(図605)

 強膜は眼球外膜の約415をしめ,前方は角膜に移行し,眼球の後極より内側のところで視神経の外鞘につづく.比較的厚くできている場合は白色であるが,子供の強膜のように薄い場合には青味がかつて見え,また年をとると脂肪の粒子が沈着するために黄色を帯びてくる.視神経の近くでは1~2mmの厚さであるが,ここから前方へむかつて厚さを減じ,赤道部では0.4~0.5mmとなる.最も薄いのは外眼筋の腱が接している場所で,0.3mmしかない.しかし腱が付着するところはまた少し厚くなっていて0.6mmある.強膜は多数の開口で貫かれている.まず眼球後極の近くで視神経が侵入しているが,ここでは,視神経の線維だけがみたすような孔がポカリと1つあいているのではなくて,多数の結合線維束がこの口を仕切って強膜篩状野Area cribriformis scleraeというフルイ様の板を成し,このフルイの目を神経線維の束が通りぬけているのである(図626).

 さらに視神経の侵入部のまわりには,毛様体神経Nervi ciliaresや脈絡膜動脈と虹彩動脈Aa. chorioideae et iridisが通るための小さい口がたくさん開いている.また赤道のすぐうしろには渦静脈Venae vorticosaeが通るための,かなり太い管が4つ(あるいは5つ)あり,強膜の前縁近くには毛様体小枝Ramuli ciliaresのための開口がある.

[図609]角膜の上皮細胞を分離したもの×700

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最終更新日13/02/03

 

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