Rauber Kopsch Band2.601   

細胞体はその側面も基底面も小皮性のケラチン膜Keratinhülleで被われている.隣りあう細胞のあいだが明るい線(図627)で境されているのは,この小さい鉢か帽子のような小皮性の被いがあるためである.

β)毛様体色素上皮層Stratum pigmenti corporis ciliarisはいっそう単純な構造である.ここでは細胞の丈が低いばかりでなく,突起がなくて,ありふれた種類の色素上皮となっているのである(図620).

γ)虹彩色素上皮層Stratum pigmenti iridis.これに所属する低い円柱細胞は連続した単層をなして瞳孔散大筋の後面を被っている(図624).この層は虹彩の自由縁で網膜の虹彩部に移行する.

 白子Albinosでは色素上皮層のどの部分にも色素がない.

[図627]ヒトの網膜色素上皮層 平面標本

[図628]ヒトの網膜色素上皮層の細胞 側面からみる.睡毛状の長い突起と,色素を欠く頂と帽子状の部分がみられる.核は示されていない.(M. Schultze)

[図629]杆状体と錐状体の横断 ヒトの網膜をその面に平行に切った標本

5. 網膜Retina, Netzhaut

 網膜は視神経の侵入部から虹彩の瞳孔縁にまでのびている(図605).網膜には視部Pars opticaと盲部Pars caecaがある.視部は視神経の侵入部から鋸状縁までの部分である.また盲部は鋸状縁から虹彩の瞳孔縁までの部分であって,これがさらに網膜の毛様体部(鋸状縁から虹彩の毛様体縁まで)と網膜の虹彩部(虹彩の後面)とに分けられる.

α)網膜の虹彩部Pars iridica retinae(図624)は色素を多量にふくんだ単層の上皮細胞からなり,虹彩色素上皮層の上に直ちに接してこれとくつづいている.つまり虹彩は,2層の上皮がその後面すなわち内面に付着していることは,毛様体と同じである.虹彩ではこの2層のうち後方の上皮層は厚さが30~35µであって,その細胞はあまり多量の色素を含んでいるので,核が被いかくされ,細胞の境界もほとんど見えない.しかし色素を脱色した切片や,白子のばあいには,細胞の境界が容易にみとめられる.

β)網膜の毛様体部Pars ciliaris retinae(図620, 623)は,やはりその上皮細胞が単層をなすにすぎないが,ここには色素がなくて,細かい顆粒をふくみ,縦にすじがついてみえる.その上皮細胞の高さは大突起のところで約14µである.上皮細胞の高さは鋸状縁の方へすすむにつれて目立って増してゆく(40~50µ).さて鋸状縁より後方には:

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最終更新日13/02/03

 

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