Rauber Kopsch Band2.603   

つまりこれは視細胞からなる神経上皮Neuro-Epithelであって,そのうちの核のない部分が杆状体錐状体層であり,核のある部分が外顆粒層である.

 網膜の外方の主要部ともいえるこの上皮性の部分につづいて,内方の主要部がまず外網状層äußere, retikuldire Schichtをもってはじまる.外網状層の内方には,それよりずっと厚い内顆粒層innere Körnerschichtが続き,さらにその内方に内網状層innere retikuläre Schichtがある.その次には多極性の大きい神経細胞の層がある.これは神経細胞層Ganglienzellenschichtとよばれて,網膜のたいていの場所では単層である.最後に色のうすい視神経線維の集まった層があり,この層は乳頭から鋸状縁へと次第にうすくなっている.これが神経線維層Nervenfaserschichtである.網膜はその硝子体に向かった内面を内境界膜Membrana limitans internaという特別の膜で境されている.第2の主要部(内方の主要部)は神経上皮(外方の主要部)に対して網膜の脳層Cerebralschichtともよばれる.神経上皮は脳室の上衣Ependymに相当し,脳層は灰白質と白質に当るのである.そして白質が皿状の網膜の凹面に沿って存在するわけである.網膜の血管は内方の主要層にだけ分布して,外方の主要層にははいってゆかない.

 網膜には支持組織Stützgewebeがかなり多量に存在し,またそれが特異な構造をしている.これは視細胞および神経細胞と同じ由来のものであるが,それらとは異なった方向に分化したのであって,細膜のグリアなのである.この支持物質としてもいろいろな部分があるが,その中で目立っているものは,網膜を放射状の方向に貫いて,外方の主要層までずっと深く入りこんでいる剛い線維であって,これを放線線維Radialfasern,支持線維Stützfasern, ミュレル線維Müllersche Fasernといい,この線維は網膜の内面でそれぞれ1つの円錐状のふくらみをなして始まっている.このふくらみ,すなわち放線線維円錐Radialfaserkegelの基底が前述の内境界膜にあるのであって,つまり各円錐の基底が密にくっつきあって1つのモザイクをなしているのである.基底面が小皮縁kutikulare Säumeをなして縁の方へ厚くなり,それによって硝子体から境されている.円錐が伸びたさきの柱は神経線維層・神経細胞層・内網状層を通りぬけて,内頬粒層の中では平板状のこまかい線維性の突起をいろいろな方向に送りだし,外顆粒層の中ではかなり散らばつた状態で細い線維と線条にわかれ,最後にフルイのように穴のあいた外境界膜Membrana limitans externa(この膜じしんも放線線維の産物に属する)と結合する(図632).

[図630]ヒトの細膜視部の横断(黄斑外周部)

右方の図は網膜の主要な3つのニューロンの形態と配列を模型的にしめすものである.S:アマクリン細胞Spongioblast.

S.603   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る