Rauber Kopsch Band2.620   

これは涙小管Ductulus lacrimalisという細い管が外へ開くところである.涙乳頭は上のものより下のものの方がよく発達し,またいっそう外側に寄っている(図653).

 モーコ系人種では内眼角と涙丘とが上眼瞼から斜めに内側へ走るひだによって被われている.このひだを瞼鼻ヒダPlica palpebronasalisまたは蒙古ヒダMongolenfalteとよぶ.ヨーロッパ人でも同じようなひだが一部の子供にみられて,エピカントゥスEpicanthusとよばれるが,(臨床では内眥贅皮とよぶ人が多いが,内眼角贅皮の方がいくらかでもやさしくなるだろう.epiは上, canthusは眼角を意味する.(小川鼎三))これは成長とともに消失する.

 前眼瞼縁Limbus palpebralis cutaneusに沿って睫毛(まつげ)Cilia, Augenxvimψernがはえている.これはいくつかの列をなして密生する毛で,上眼瞼のものの方が数が多く,長さもやや大で,上方へそっているのに対し,下眼瞼のものは比較的短くて下方へまがっている.腱毛は眉毛と同じように保護装置である.涙湖の周囲には腱毛がなく,眼瞼の前面に生えているのと同様な細くて短い毛があるだけである.後眼瞼縁Limbus palpebralis conjunctivalisに沿って眼瞼腺Glandulae tarseae(マイボーム腺Meibomsche Drtisen)という眼瞼の脂腺の変形したものが整然と1列をなして開口している.眼瞼の前縁と後縁のあいだの面は,眼を閉じたときに,上眼瞼のものと下眼瞼のものとがぴったりと接し合って,しかも眼球とのあいだにもすきまを残さないようにできているのが普通である.

 以前にはここにすきまがあるはずとされて,それは三角形の横断を示すであろうと考えられたので,それを涙河Rivus lacrimalisとよんだ.しかしこのすきまは後眼瞼縁のかどがとれている少数の例にしか発達していない.

 眼瞼はその中にある結合組織性の1枚の線維板によって,その必要な丈夫さをあたえられている.これがすなわち眼瞼板Tarsus palpebraeであって,この板は眼球の弯曲に対応してまがっており,眼瞼の自由縁に近い部分だけにあって,眼瞼結膜に属している.そのために眼瞼の内面はしわのない平滑な面をなしており,眼瞼が眼球にうまく密接するようになっている.上眼瞼じしんが下眼瞼より丈が高いので,眼瞼板も上眼瞼のもの(Tarsus palpebrae superioris)の方が下眼瞼のもの(Tarsus palpebrae inferioris)より丈が高い(10対5) (図653, 654).

 眼瞼板は眼瞼の中央部で最も丈が高く,内外両側へ次第に狭くなっている.長さは約20mmで,最大の厚さは全長の中央のところで0.7mmである.眼瞼板はフェルトのように固く組みあった結合組織束でできている.内眼角のところでは内側眼瞼靱帯Ligamentum palpebrale nasale(図662, 663)が眼瞼板に結合してその線維構成に移行している.内側眼瞼靱帯は斜めに立っている板で,内眼角から起こって上顎骨の前頭突起にまで伸びて,皮膚の直下で涙嚢の盲端部の前面にある.眼を閉じているときにはその前稜を容易に触知することができる.外側眼瞼靱帯Lig. palpebrale temporaleは眼輪筋と眼窩隔膜とのうしろ(Eislerによる)にあって,眼窩口縁の2~3mm後方で頬骨につく.

 眼瞼の外皮は他の場所と同様に表庫と真皮と疎性の皮下組織とがらなるが,脂肪組織がうすくてとぼしいことを特徴としている.真皮の乳頭はわずかしか形成されないが,ただ眼瞼縁のところは例外で,乳頭が高さと数を増している.小さい毛や脂腺や小汗腺が眼瞼の全表面に散在する.真皮には色素細胞と形質細胞が普通にみられる.

[図653]上下の眼瞼板(右)

後方(内側)からみる.上眼瞼の縁に瞼板腺の開口が多数の点としてみられる.

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最終更新日13/02/03

 

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