Rauber Kopsch Band2.640   

耳輪の下端と対珠とのあいだには対珠耳輪裂Fissura antitragohelicinaという鉛直の裂け目がはいりこんでいる.その深さは個体によってさまざまであって,これが耳輪の下端部を耳輪尾Cauda helicisとして分離している.

 外耳道軟骨は耳介軟骨とともに耳軟骨をつくるもので,すでに述べた耳軟骨峡によって耳介軟骨とつながる.しかし閉じた軟骨管をなしているのではなく,軟骨とい性外耳道の下壁と前壁を占める樋をなしているのである.樋のかたちに反つたこの外耳道軟骨の外側端のかどが耳珠をつくっている.外耳道軟骨には2ヵ所に窓のような裂け目があって,外耳道軟骨孔Foramina cartilaginis meatus acustici externiとよばれる.そのうち外側の大きい方の裂隙は外耳道の前壁にあり,内側の小さい方のは下壁にある.外耳道軟骨は側頭骨の外耳孔Porus acusticus externusの粗面と結合している,自然の位置では上方に向かって開いた樋のかたちであって,そこを弾性線維性の組織が閉じている.

 耳軟骨のいくつかの定まった場所に小さい軟骨島Knorpelinselnがある.これは軟骨膜によって耳軟骨と結合する小軟骨であって,ふつうは耳輪の下行部の自由縁にある.その最大のものはダーウィシの耳介結節に相当して存雄する.--耳軟骨はかなり多数の血管孔によって貫かれている.とくにそれは耳輪と珠間切痕のところに多い.--耳軟骨の厚さは場所によってまちまちで,0.9~2.8mmのあいだを変動するが,平均して2mmである.耳軟骨は組織学的には弾性軟骨に属するが,若干の場所では線維軟骨の性状をもつ.耳軟骨はその固さから推して当然外耳の形態を決定する要素であるようにみえるが,実は逆にこの方が決定されるものなのである.そのわけはまだ軟骨の痕跡すら耳介の内部にないときに,すでに主な皮膚のひだはすっかり出来上つているのである.

c)耳介の靱帯

 耳介は皮膚によって,また耳介軟骨と外耳道軟骨の結合によって,さらに弾性線維をふくむいくつかの丈夫な靱帯によって頭にしっかり付けられている.

 耳介靱帯Ligg. auriculariaは側頭骨の頬骨突起・側頭筋膜・乳様突起から起こって耳軟骨の軟骨膜に付着する.この結合はあまり固くはないので,耳介が耳介筋Mm. auricularesによっていろいろな方向に動かされうる.また耳介の諸筋が同時にはたらくと,耳介の内腔をひうげることはほとんどできないにしても,少くとも耳介を緊張させることはできるのである(図673).

d)耳介の筋(図673, 674)

 耳介には多数の筋があり,これには大耳介筋と小耳介筋とが分けられる.前者は耳介の付近から起り,後者は耳介そのものから起こっている.

 大耳介筋は筋学のところで述べた(第I巻410頁).

 小耳介筋にはおよび小耳輪筋M. helicis major, minor,耳珠筋M. tragicus,対珠筋M. antitragicus,耳介横筋M. transversus auriculae,耳介斜筋M. obliquus auriculae がある.なおそのほかに存在の不定ないくつかの筋がある:耳輪切痕筋 M. incisurae helicis,耳介錐体筋M. pyramidalis auriculae,茎突耳介筋M. styloauriculalis(図673, 674).

a)大耳輪筋は耳輪棘から起こって耳輪の前縁に沿って上行し,ついで弓状に方向を転じて外(後)面にある三角窩隆起についている.

b)小耳輪筋は耳輪脚にのっていて大耳輪筋のはじまる高さで,一部は軟骨の自由縁に,一部は皮膚に終わっている.大小の両耳輪筋は同一の筋原基が2つに分れたものである.

c)耳介斜筋は程度の差はあるがかなり貧弱な,平たくて短い1群の筋束よりなり,三角窩隆起と甲介隆起とのあいだに張っている.この筋は耳介横筋の一部がはなれているものとみられ,これと一緒になっていることもある.

S.640   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る