Rauber Kopsch Band2.643   

それは0.5~1mmの大きさの球状または卵円形の糸球であって,皮下の脂肪組織のなかで表面から2mmまでのところに存在する.腺管のまがりは少くて,子供ではこれが毛包内に開口し,大人では毛包のすぐそばで表面に開く.導管は多層の上皮細胞によって被われる.糸球をつくる管じしんは広くて,低い円柱上皮の1層の腺細胞をもち,これに平滑筋線維が接し,その外側には立派な基底膜がある.腺細胞は多くの色素粒子と脂肪滴をふくみ,しばしば明瞭な小皮縁をもっている.

 耳脂(耳垢)Cerumen, Ohrschmalzは脂肪をふくんだ半流動性の黄色い苦い分泌物で,主として耳道腺から産出され,色素粒子や脂肪滴のほか,脂肪の充満した細胞さえもふくんでいる.この細胞はおそらく脂腺からでてきたものであろう.

 脈管と神経:外耳道の動脈は後耳介動脈・顎動脈・浅側頭動脈から来る.静脈はとくに下耳介静脈に注ぐ.神経は耳介側頭神経N. auriculotemporalisの枝(外耳道神経N. meatus acustici externi)と迷走神経の耳介枝R,auricularis n. vagiから来ている.

3. 鼓膜Membrana tympani, Trommelfell (図666, 675677)

 鼓膜は円形に近いが,やや楕円というべき形の円盤で直径は後上方から前下方へ10~11mmあるが,これと直角の方向には9mmしかない.(松島伯一によれば日本人の鼓膜は長さ9.4mm,幅8.4mmである.医学研究4巻6号,1929. )

 鼓膜の厚さは約0.1mmしかないが,かなりの剛性をもっており,水銀柱100cm以上の圧力にも耐えることができる.これに反して弾性は非常に小さい.鼓膜はほとんど伸展不能であり,自然の位置においても強い弾性緊張の状態にあるわけではない.生体における鼓膜の色は煙のような, または中間調の灰色である.半透明で,やわらかな輝きをもっている.死体では表皮層が膨化して濁るために輝きと透明性が失われる.

 鼓膜の縁は鼓膜縁Limbus membranae tympaniとよばれ,全周の大部分が線維軟骨輪Anulus fibrocartilagineusによって側頭骨鼓室部の鼓室輪溝Sulcus anuli tympaniciにはめこまれている.上方では側頭鱗がその鼓膜切痕Incisura tympanicaのなかに鼓膜を受けいれている.鼓膜は鼓室輪溝のなかに固定されている範囲ではピンと張つた膜をなしており,この部分を緊張部Pars tensaとよぶ.これに反して鼓膜切痕によって受けられている上方の小さい領域はゆるんでおり,弛緩部Pars flaccida(またはシュラプネル膜Shrapnellsche Membran)とよばれる.緊張部は弛緩部より厚いから両部のさかい目が前後2本の細い境界線として見える.これを前および後鼓膜条Stria membranae tympani anterior et posteriorとよぶ.

 鼓膜の面の形:鼓膜はその固定枠のなかに1平面をなして張られているのではなくて,鼓膜に付着するツチ骨の柄および同じ骨の短突起のために,面の状態が大いに影響をうけている.すなわち柄によってツチ骨条が生じ,また短突起のために弛緩部と緊張部との境のところで膜が外方へ高まっている.ここがツチ骨隆起Prominentia mallearisとよばれる.一方,ヘラのようにやや広くなっているツチ骨柄の先端は,反対に鼓膜を内方へひっぱり,そのために鼓膜の外面がロート状にへこんでいる.これは鼓膜臍Umbo membranae tympaniとよばれ,その位置は鼓膜の中央ではなくて,やや下前縁の方に寄っている.

 鼓膜の傾斜:鼓膜の全体の傾きと,各4半部の傾きとが区別される.全体の傾きというのは鼓膜の付着縁によってきまる平面(これを鼓膜平面Trommelfellebeneという)の傾きである.鼓膜平面が正中面に対してなす傾きは著しいものであって,そのため鼓膜は外耳道の後壁と上壁から自然に続いているように見えるが,外耳道の下壁とは鋭角をなしているのである.いっそう正確にいうと,鼓膜は水平面に対しても正中面に対しても傾いており,つまり2重の傾斜をしているのである.

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最終更新日13/02/03

 

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