Rauber Kopsch Band2.642   

この筋と交叉する上行線維群が切痕の軟骨縁から起こって耳珠筋の線維にむかつてすすみ,たいていのばあい裂隙をかこむ耳珠縁のところで軟骨膜に終わっている.

i)茎突耳介筋M. styloauricularisは茎状突起から起り,この突起の外面に沿ってまっすぐ上方へのぼり,放射状の腱をもって鉛直堤の下方につく.

 耳介筋には顔面神経から枝が来ている,この神経の分枝をFujitaが非常にこまかく記載している(Anat. Anz., 78. Bd.,1934).

2. 外耳道Meatus acusticus externus, äußerer Gehörgang(図666, 672674)

 外耳道は耳甲介腔の底から鼓膜にまでのび,軟骨性の部分と骨性の部分とからなる.軟骨性の外耳道Meatus acusticus externus cartilagineusは耳介からすぐ内方へつづく部分で,外耳道の長さの約1/3を占め,骨性の外耳道が残りの2/3を占める.

 外耳道は内方へすすむあいだに角をなして前方へまがる.これは水平断してみると最もよくわかる.これに対して前額断(図666)でみると外耳道は上方に凸の円蓋をなしてまがっている.この円蓋の頂は,前方への最も強い弯曲点(前述)よりいっそう内方にある.すなわち後者は外耳道の軟骨性の部分に,前者は骨性の部分に属するのである.鼓膜は前にも述べたように斜めの方向に外耳道を閉じている.鼓膜はその方向を延長すると頭蓋の正中面のところで上後方に開いた角をなすのである.

 外耳道の長さはv. Tröltschによれば直線距離にして前壁2.7cm,下壁2.6cm,後壁2.2cm,上壁2.1cmである.(松島によれば日本人でもこの数値はほとんどちがわない.詳しくは岩田惣七, 東京帝夫医学部紀要11,1914. 松島伯一,医学研究4巻6号,1929を参照されたい.)ただしこのさい耳珠を前壁の限界としないで,外耳道の後壁の限界をとおる矢状面をもって外耳道の外方端と考えて計測の基準にしたのである.

 外耳道の広さは中央のところすなわち骨性管のはじまりの部分が最も狭い.横断の直径が最も大きいのは入口のところで8~9mmあり,奥の方では6~7mmである.やはりかなり著しい個体差がみられる.

 外耳道の軟骨については 640頁を参照されたい.

 骨性外耳道はその鉛直断が卵円形であって,外方の部分では卵円形の長軸が上下の方向にあり,内方部では斜めに向いている謂骨性外耳道は斜めに内前方へ走っている(図666).その壁をなしているのは主として側頭骨の鼓室部であるが,上方の小部分は側頭骨の鱗部がその境をしている.骨性外耳道は鼓室輪溝Sulcus anuli tympaniciという1つの溝で終わっており,この溝に鼓膜が付いている,全周のうち上部にだけこゐ溝が欠けており,そこには鼓膜切痕Incisura tympanicaという側頭鱗の切れこみがある.

 外耳道はうすい軟骨膜と骨膜のほか,さらに皮膚のつづきによって被われている.皮膚は鼓膜に近づくほど薄くやわらかくなり,骨膜とかたく結合している.この皮膚のつづきは鼓膜の表面に移行してその外方の層をつくっている.

 外耳道の軟骨性の部分と骨性の部分とは,軟骨性の管のひろくなった端と外耳孔の粗な外方縁とのあいだにある硬い線維塊によって結合されている.この靱帯(外耳道輪状靱帯Lig. anulare meatus acustici externi)は硬いながらも,やはり軟骨部と骨部のあいだに多少の運動性をゆるしている(図672).

 外耳道の皮膚は厚い扁平上皮をもっている.入口のところでは毛が生えていることはすでに述べたが,これは軟骨性外耳道の全部にひろがっている.骨性の部分では毛が小さく少なくなって,ついには全くなくなってしまう.外耳道においても毛は脂腺をもっているが,そのほかに耳道腺Glandulae ceruminosae, Ohrschmalzdrüsenという管状の腺がたくさん存在する.

 耳道腺の最も大きいものは軟骨性外耳道にあるが,小さいものは外耳道の奥にまでひろがっている.

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最終更新日13/02/03

 

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