Rauber Kopsch Band2.674   

顆粒性の原形質はこの細胞の節板突起のなかにまでも続いている.しかしダイテルス細胞の下端部はひじょうに明るい物質からできていて,ごくわずかしか顆粒性を呈さない.また各ダイテルス細胞は輝いた1本の細い糸によって全長を貫かれている.この糸はレチウスの糸Retziusscher Fadenとよばれ,細胞底のところで小さい足板をもって基底板から起り,この細胞の前面に沿って上行する.レチウスの糸は柱細胞の柱と同様に細胞形質が変化してできたものである.従ってダイテルス細胞も柱細胞であって,たずその剛い部分の形成が弱いだけのものといえる.

3. ヘンゼン細胞Hensensche Zellen(図710)

 これは基底板上でダイテルス細胞より外方にあって,ラセン器の外方の傾斜部をつくっている上皮細胞の大きな1群である.不規則な形で高さもいろいろと異なる細胞が単層をなして密に集合し,1つの高まりをつくっているのであるが,丈の高い細胞が低い細胞の上へかぶさるような位置をとることがあるために,多層配列と思えるような観を呈することがある.事実また上皮の圧力の関係によって上皮細胞の一部が他のものの上に完全に重なっていることもあり,これはラセン器の内方の傾斜部ではいつも見られる現象である.

 ヘンゼンの支持細胞は明るくて,顆粒も糸状構造もほんのわずかしかふくまれていない.この細胞はうすいけれども丈夫な被膜をもち,また球形の核を1つもっている.

 ヘンゼン細胞の外方には丈の低い上皮が続いている.これはクラウディウス細胞Claudiussche Zellen(図710)とよばれ,蝸牛管の外壁の上皮層に次第に移行している.

4. 網状膜Membrana reticularis(図712)

 これは個々の部分から組み立てられたきれいなモザイクをなしてラセン器の上にのり,たくさんのすきまがあって,そのすきまに外有毛細胞の自由端がはいり,これらの細胞を定まった位置に固定するのに役だっている,網状膜は第1~第4列の節板からなり,上述の外柱の舵はそのうちの第1列の節板に当たっている.節板の中央部はごく薄くて半透明であるが,縁の方は厚くなっていて,個々の節板にとっても,またそれらが相互に結合することによって板全体にとっても,かなり強い支柱となっている.節板の下面に,しかも節板の内方の広くなった部分に,ダイテルス細胞の節板突起が付いて,これに移行している.そのさい節板突起は蝸牛頂に向う方向で側方に傾き,それぞれが隣りの外有毛細胞と鋭角的に交叉して,節板の今のべた場所に固着するのである.節板の形は一般に8字形またはビスケット形であるが,弯入が小さかったり大きかったりするなど,いろいろの変異がみられる.第3列の有毛細胞の外方には節板のかわりに小さい多角形の小板があって,網状膜のいわゆる閉鎖枠Schlußrahmenをつくっている.その辺縁の糸は比較的よわいかまたは欠如している.閉鎖枠の小板にダイテルス細胞の第3(外方の)の上端が達している. 図712において閉鎖枠の外方にはヘンゼン細胞の上端面がえがかれている.

[図711]家兎の頂回転のダイテルス細胞

細胞を縦にみる(G. Retziusによる,多少改変)

S.674   

最終更新日13/02/03

 

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