歴史的な偉大な解剖学書
皮膚が保護の被いとして有効である所以は,皮下脂肪組織の存在,皮膚の水分保有, 溶液または気体の状態の数多くの物質に対する強い抗滲透性,毛や爪の形成,皮膚の分泌作用,また表層からのたえまない剥離である.最後に述べた表層からの剥離は,皮膚にはいってきた異物が,その場にとどまつたり,さらに周囲にひろがったりするのを妨げるのに役だつのである.
皮膚はまた皮下脂肪組織によって貯蔵庫としてはたらいている.栄養のよい人では皮下に10~15kgの脂肪が貯えられていて,必要なときにはいつでも代謝の役に立てられるようになっている.
体温調節器としては特に神経系と深い関係をもって働いている.皮膚は寒いときにはちぢまり,温いときにはのびて血液の含有量を増し,液体がいっそう多く皮膚に滲み出て蒸散がさかんになり,その結果として冷却効果を招くのである.表皮とそれに属する構造物はすべて熱の不良導体で,よく発達した皮下脂肪もまた同様の効果をもつのである.
皮膚はひじょうに多数存在するいろいろな腺によって分泌および排泄器官としてはたらいている.乳腺もまた皮膚の腺に属するので,赤ん坊を養うのも強力な皮膚腺の活動にほかならない.腺組織とは別に,皮膚の表面がたえず剥離しているのも,また一種の排泄とみることができる.
皮膚はまた豊富な神経の分布をうけて感覚器として重要な活動を行なっている.膜迷路も嗅粘膜も発生学的には外皮に属するものといえる.しかし網膜は脳の壁の一部が末梢に移っていったものであって,視神経は中枢神経間の伝導路というべきものである.
皮膚は体の外面をつつんでいるものだから,その全形はからだの形そのものである.皮膚は皮下組織とともにすべての表在性の諸器官の上を被い,これらの諸器官とはいろいろな程度の移動性をもって結合している.また表在性の諸器官のあいだのへこんだ場所をこえてひろがるので,体の形に円みをつけることに大いに役だっている.
外皮の全表面積は平均1.6平方メートルである.
体の各部分がそのうちのどれだけを占めるかは第1巻95貞で述べてある.
皮下組織を除いて皮膚の厚さは一般に1mmと4mmのあいだである.
眼瞼の皮膚はごく薄いが,足底の皮膚は非常に厚い.一般に皮膚は頭・頚および胴の背側部ではそれぞれの部分の腹側部よりも厚いといえる.また体肢では伸側の方が屈側よりも厚い.足底と手掌では真皮と表皮がはなはだ厚い.女の皮膚は男より薄い.皮膚の厚さの決定には皮膚の各層がいろいろちがったぐあいに関与している.
健康な22才の1女性の外皮の重さは3175g,皮下脂肪組織は15670gであった.33才の1男性では皮膚り重さが4850g,皮下脂肪が125709であった(E. Bischoff).またある新生児(女)では皮膚の重さが337g,皮下脂肪組織が405gであった.
H. Vierordtによると皮膚と皮下組織の重さは新生児では全体重の19.73%,成人では17.77%である.また成人の表皮だけの重さをMoleschotは488.5gとしている.
表皮の比重は1100~1190,真皮は1116,脂肪層は971である.
最終更新日13/02/03