Rauber Kopsch Band2.714   

 皮下の静脈は乳頭の基部に乳頭静脈叢Plexus venosus mamillaeという多角形をした吻合網をつくっている.これらの皮下静脈は近隣のいっそう大きい静脈に注ぎ,橈側皮静脈V. cephalicaにも注ぐ.また深部の静脈は動脈に伴なっている.

 リンパ管は乳腺を被う皮膚,とくに乳輪において細かい目の網をなしている.腺胞間結合組織のなかにもリンパ管がある.

 神経は皮膚と乳輪および乳頭には豊富であるが,腺の内部にはとぼしくて,ここでは主として血管神経をなしているとおもわれる.乳房の神経は閉鎖上神経,第2~第4肋間神経の前皮枝の内側乳腺枝Rr. mammarii mediales,および第4~第6肋間神経の外側皮枝の外側乳腺枝Rr. mammarii lateralesから来て,皮膚のなかを放射状に乳頭に向かって走り,また腺体じしんにも達している.動脈とともにその交感神経叢も腺の内部に達している.--乳頭の真皮乳頭のなかには触覚小体が,また乳頭の基部には少数のファーテル層板小体がみられる.W. Krauseは大きい乳腺管に接して棍状小体を見いだした.

 Horn, A., Das Epithel der Ausführungsgänge der weiblichen Milchdrlise. Anat. Anz., 70. Bd.,1930.

 乳頭は勃起性erektilであり,その皮膚神経が刺激されると伸びることができるのである.ただしその勃起は乳頭の平滑筋だけの作用であって,静脈腔はこれに関与しない.

 異常な形成状態:乳腺そのものには変化がなくて乳頭が重複していることがある.第3の乳房といわれるものもこの系列に属する.しかし乳頭(とおそらくは乳腺も)が対称的な2つの縦列をなしてできている状態はこれと別のものである.すなわち正常な乳房の上または下に,さらに1つ過剰の乳房があらわれることがあり,そのようなものが2つ以上存在することもある(副乳Mammae accessoriae,小乳房Micromammae).最高記録として8つの副乳頭accessorische Brustwarzenが観察され,そのうち3つは正常にできている乳房の上方に,1つはその下方にあった.霊長類はすべて乳腺器官を1対しかもっていない.従って過剰乳頭の出現は人類と最も近いところで半猿頚その他に見られる状態に結びついている.これについてはWiedersheim, Bau des Menschen, 4. . Aufl.1908, Abb.12~18を参照せよ.--乳腺と乳頭とが全く存在しない状態は無乳[]Amastiaとよばれる.また乳腺はないけれども,乳頭はたとえ色素斑としてでも存在する場合は,形成不全Aplasiaということになる.多乳房症Hypermastiaというのは完全に発達した副乳腺のみられる場合で,多乳頭症Hypertheliaというのは完全または不完全に形成された余計の乳頭があるが,それに乳腺組織はない場合である.また乳頭がなくて乳腺組織だけ発達し,個々の乳管が皮膚表面に独立の開口をもっている状態に対して,v. Eggelingは多乳腺症Hyperadeniaという名前を提唱している.--過剰の乳腺は乳腺堤Milchleisteの領域ばかりでなく,ほかの場所にも,たとえば大腿・陰部・臀・背なかなどにも生ずることがある(図761).

[図761] 今日まで知られている過剰乳腺の位置の概観(Sürmontによる,Fischel から引用)

男の乳房Mamma masculina

 乳腺は最初の原基のときは男女両性とも全く同じで,その後も性的成熟の時期までは両性において同様の発達をしている.しかし男の乳房は性的成熟の時期以後にもそれ以上発達しないのが普通である.乳輪と乳頭はあるにはあるけれども,周径が小さいし,乳頭の高さは2~5mmしかない.男の乳頭は成人では第4肋間隙にあり,正中線から平均12cmはなれている.腺体はおよそ幅1.5cm厚さO. 5cmで,白色調を呈し,壊されにくくできている.小葉や導管は小さく短い.

 血管とリンパ管は女の場合と同様である.乳頭の神経は乳頭の小さいわりには非常に豊富で,その一部は触覚小体に終わっている.

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最終更新日10/08/31

 

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