500
- 500_01【Gluteus medius muscle中殿筋;中臀筋 Musculus gluteus medius】 o: Lateral surface of ilium, i: Greater trochanter. Abduction, medial and lateral rotation, extension, and flexion at the hip joint. I: Superior gluteal nerve.
→(中臀筋は腸骨稜と前後の臀筋線に囲まれた腸骨翼領域から起こる。大転子先端外表面に停止する。中臀筋の線維束は大転子に集まり、外側から見ると三角形を呈する。大転子では腹側からきた線維短い停止腱に前に背側の筋束上に重なる。滑液包(中臀筋の転子包)が大転子と筋の間にある。中臀筋は大腿筋膜に被われ、大腿筋膜下面からも起始する。同筋の後部は大臀筋前縁部の深層に位置する。)
- 500_02【Gluteus maximus muscle大殿筋;大臀筋 Musculus gluteus maximus】 o: Ilium, behind the posterior gluteal line, sacrum, coccyx, thoracolumbar fascia, sacrotuberous ligament, i: Fascia lata, iliotibial tract, gluteal tuberosity, lateral femoral intermuscular septum, linea aspera. Extension, lateral rotation, abduction, and adduction at the hip joint. I: Inferior gluteal nerve.
→(大臀筋は大腿を伸展する主力筋で、とくに歩行の際重要である。中臀筋や小臀筋(小さな臀部の筋群)と同様、大きな臀部の筋である大臀筋も発生的には伸筋群である。仙骨と尾骨の辺縁、後臀筋線より後方の腸骨稜、胸腰筋膜、そして仙結節靭帯などから起始する。その厚い筋線維束は斜め下方へ走り、広い停止腱となる。その停止域は近位では大腿筋膜、腸脛靱帯に放散する。また、臀筋粗面よりも遠位で外側筋間中隔より上の粗線外側唇にも停止する。坐骨包坐骨結節と大臀筋下面の筋膜との間にある。慢性的刺激の結果として(機織工結節、抗夫結節)、臀部に敷物なしに座り仕事をする人々では同包に炎症が起こり、後大腿皮神経を圧迫する。大腿筋の停止腱は転子包によって大転子と離される。臀筋粗面では、大腿筋はふつう他の臀筋との間にあるいくつかの筋間包の上を滑走する。立位では大臀筋下部が坐骨結節をおおう。大腿を屈すると大臀筋下部は頭側に移動する。このため座位では坐骨結節は皮下脂肪上に位置し、皮膚を通して容易に触れる。臀溝はほぼ水平に走り、大臀筋収縮時には深くなるが、大臀筋の下縁をあらわしているわけではなく、同筋走行に対して鋭角的に交わる。)
- 500_03【Gluteal fold; Gluteal sulcus殿溝;臀溝 Sulcus glutealis】 Fold passing over the gluteus maximus muscle that forms the inferior boundary of the buttocks when the hip joint is extended.
→(臀溝は臀部(近位)と大腿後部(遠位)との境界線である。臀筋と脂肪層の作るふくらみ全体の下縁に作られる皮膚の深いくぼみで、この部の大腿筋膜の横走線維が真皮と固着するために生ずる。この溝は大臀筋の下縁とは一致しない。臀溝は坐骨結節から大転子に至る大腿筋膜中の弓状線維に体尾する。これらの線維は座索といわれ、筋性および筋膜性の張力によって臀部-大腿部間に生じたものである。座索からは皮膚に対して短い結合組織性線維がのびる。大臀筋収縮時、これらの線維は筋膜の緊張をを皮膚に伝え、臀溝を深くする。臀部はこれらの線維の頭側で膨隆する。)
- 500_04【Semitendinosus muscle半腱様筋 Musculus semitendinosus】 o: Ischial tuberosity. i: Medial surface of tibia. Extension at the hip joint. Flexion and medial rotation at the knee joint. I: Tibial nerve.
→(半腱様筋は大腿二頭筋長頭の起始近くの坐骨結節から起こり、鵞足を介して脛骨近位端内側面および下腿筋膜に終わる。半腱様筋は半膜様筋によってつくられた溝の中を遠位へ向かう。長い停止腱は大腿部ですでに始まり(ここから“半腱様”の名がつけられた)、鵞足の深層へと放散する。)
- 500_05【Biceps femoris muscle大腿二頭筋 Musculus biceps femoris】 Two-headed muscle arising from the pelvis and femur, i: Head of fibula. Flexion at the knee joint, lateral rotation.
→(大腿二頭筋は2関節性の長頭と1関節性の短頭から成る。長頭は坐骨結節で半腱様筋と総頭をつくって起こる。短頭は粗線の外側唇の中1/3と外側筋間中隔から起こる。これら両頭は合して2頭筋となり、腓骨頭に終わる。その際この筋と膝関節の外側側副靱帯との間に大腿二頭筋の下腱下包がある。股関節では長頭は大腿を後斜するように働く。膝関節では大腿二頭筋は屈曲するように働き、屈曲した状態では下腿を外旋する。この筋は膝関節における唯一の外旋筋であって、すべての内旋筋に匹敵する作用をもっている。)
- 500_06【Iliac crest; Iliocristale腸骨稜 Crista iliaca】
→(腸骨翼の上縁は腸骨稜であるが、これを上方から見るとS字状に弯曲し、中央1/3の部分はかなり薄くなっている。)
- 500_07【Anterior superior iliac spine; Iliospinale anterius上前腸骨棘;前腸骨棘 Spina iliaca anterior superior; Spina ilica ventralis】 Bony projection at the anterior border of the iliac crest giving origin to the sartorius muscle.
→(腸骨稜の前端は鈍円な突起として大きく突出し、上前腸骨棘として体表上からもよく触れる。大腿筋膜張筋および縫工筋が起こる。)
- 500_08【Sartorius muscle縫工筋 Musculus sartorius】 o: Anterior superior iliac spine, i: Medial to the tibial tuberosity. Flexion, abduction, lateral rotation at the hip joint; flexion and medial rotation at the knee joint. I: Femoral nerve.
→(縫工筋は大腿前部浅層の筋。上前腸骨棘からラセン状に大腿前面と内側面を走る。大腿筋膜がつくる筋膜の鞘に包まれている。その弓状走行により、同筋は背側にある膝関節の屈曲軸を横切ることになる。停止腱は遠位かつ腹側へ斜走し、脛骨内側面(脛骨粗面のうしろ)が鵞足に、また下腿筋膜に停止する。鵞足は縫工筋(浅層)、薄筋および半腱様筋(深層)の末広がりの停止腱が1カ所に集まってできる。その様子は鵞の足の水掻きが折れ重なったようにみえる。鵞足は内側側副靱帯とは鵞足包で隔てられ、その腱線維は脛骨内側面に放散する。また、浅層の線維は下腿筋膜に続く。かつて縫工(仕立屋)は作業をするときに、あぐらをかくように脚をむく姿勢をとった。このように、大腿を屈曲・外転・外旋し、かつ膝を屈曲するのに、縫工筋が働くと考え、名付けられた。)
- 500_09【Tensor fasciae latae muscle; Tensor muscle fasciae latae大腿筋膜張筋 Musculus tensor fasciae latae】 o: Near the anterior superior iliac spine, i: Above the iliotibial tract to the lateral tibial condyle. Tenses the fascia lata; flexion, abduction, medial rotation, and extension at the knee joint. I: Superior gluteal nerve.
→(大腿筋膜張筋は平行な線維からなる平らな筋で、上前腸骨棘の外側から起こり大腿筋膜に停止する。この筋は、その起始ではもともとあった中臀筋とのつながりを保っている。大腿筋膜中で、その線維は腸脛靱帯の一部を作り、脛骨外側顆および腓骨顆にまで達する。また、大腿骨へは外側筋膜中隔を介して達し、外側膝蓋支帯に放散する。)
- 500_10【Greater trochanter of femur大転子(大腿骨の) Trochanter major】 Large prominence on the superolateral aspect of the femur for attachment of the gluteus medius, gluteus minimus, and piriformis muscles.
→(大腿骨頚の上外側には大転子(中臀筋、小臀筋、梨状筋がつく)が突出している。転子とはハンドルのことで、その力学的な効用は、たとえば大転子につく中臀筋が大腿骨を外転させている。)
- 500_11【Rectus femoris muscle大腿直筋 Musculus rectus femoris】 Two-headed muscle. Also flexes the hip joint. Contributes fibers to the lateral and medial patellar retinacula.
→(大腿直筋は大腿前側の筋で大腿四頭筋の中央浅層にある。羽状筋の大腿直筋は下前腸骨棘から起こる直頭と寛骨臼上縁や股関節から起こる反転頭からなる。起始腱中心部からの線維は膝蓋骨の上縁に終わるが、膝蓋骨前面を通って膝蓋靱帯となる。両側方の線維は膝蓋骨の両側へ放散し、膝蓋支帯になる。)
- 500_12【Skin皮膚 Cutis】 Collective term for the epidermis and dermis.
→(皮膚は身体を保護しておおうもので、非常に異なる2成分、すなわち表層をなす表皮と深層をなす真皮よりなる。重層上皮である表皮を作る個々の上皮細胞は表皮の表面に近づくにつれて形が扁平となる。手掌や足底の皮膚では表皮の厚さが極端に大となっており、機械的刺激への抵抗力を増している。手掌と足底以外の部位では、例えば上腕や前腕の屈側面皮膚に見られるように表皮は薄い。真皮を作るのは密性結合組織であり、そこに血管、リンパ管、神経などが含まれている。真皮の厚さも体部位により異なるが、概して人体前面の真皮は人体後面の真皮よりも薄い。また、女性における真皮は男性における真皮よりも薄い。皮膚の真皮はその下の浅筋膜(皮下組織ともよばれる)を介して深筋膜、あるいは骨に連結する。真皮内では膠原線維がたがいに平行な配列を示すことが多い。外科的に皮膚を切開する場合に、膠原線維の走行に沿うように創を作れば膠原線維損傷が最も少なくすむことから、瘢痕の最も少ない創傷治癒が得られる。もしも膠原線維の走行を横断するような皮膚切開を行えば、多数の膠原線維の損傷を来たし、それに代わる再生線維群の存在のために大きな瘢痕が生じることになる。真皮内の膠原線維の走行の向きは、皮膚の裂隙線(ランゲルの線Langer's lines)の方向と一致するが、これは四肢では縦方向に、また体幹では横方向に走る傾向を示す。皮膚が可動関節を被うところではその一定部位に皮膚のヒダ(またはシワ)形成が見られる。皮膚のヒダあるいは皺の部位では皮膚は薄くなり、かつ真皮と皮下構造物との間での膠原線維性結合の強度が強まっている。皮膚に付属する機関として爪、毛包、皮脂腺、汗腺などをあげることができる。 [臨床]皮膚の裂隙線の方向についての知識は外科医が皮膚切開する場合のガイドとなり、手術後の瘢痕を最小にするために役立つ。特に女性の患者で手術創を通常は衣服で被われないような部分に作る場合に、このことは重要な意味をもつ。セールスマンでさえも場合によって彼の顔に大きな瘢痕が残ることで、彼の仕事を失うかも知れないのである。爪部、毛包、皮脂腺は黄色ブドウ球菌のような病原体が侵入しやすい場所である。爪部の炎症は爪周囲炎paronychiaとよばれ、毛包および皮脂腺の炎症はいわゆる「おできboil」の原因となる。ようcarbuncleというのは、ブドウ球菌感染による浅筋膜の炎症であるが項部にしばしば発生して、通常1個の毛包または毛包の1群の感染の状態から始まるものである。皮脂嚢胞sebaceous cystは皮脂腺導管の開口部が閉鎖されるために起こるが、この状態は頭毛をくしけずるときに生じた頭皮の損傷、あるいは皮脂腺の感染による。したがって皮脂嚢胞は頭皮にしばしばみられる。ショック状態にある患者の皮膚は蒼白で鳥肌状を呈するが、これは交感神経系の過剰な活動により皮膚の細動脈の狭窄ならびに立毛筋の収縮を来しているためである。皮膚の熱傷の際にはその深さが治療法とその予後を決める要素となる。熱傷が皮膚深層にまで達していないときは、傷面はやがて毛包、皮脂腺、汗腺をなす上皮細胞や傷周囲の表皮細胞の増殖により被われて治癒する。しかし汗腺の腺体よりも深い部位までの熱傷のときには傷周囲の表皮細胞からの、おしか上皮の被覆は得られず、治癒は著しく遅くなることともに、線維組織による傷面の収縮がかなりの強さで起こる。深い熱傷を治癒を早め、かつ収縮の起こるのを防ぐためには皮膚移植が必要となる。皮膚移植法は浅層皮膚移植と全層皮膚移植との2種に大別される。前者は表皮の大部分(真皮乳頭尖部をも含めて)を切り取って移植するもので、切り取られた残りの皮膚部位には真皮乳頭周囲の表皮細胞群が毛包細胞、汗腺細胞とともに残留するために、これらが切り取られた皮膚部分の修復にあずかることになる。全層皮膚移植の場合は表皮と真皮全層を移植するために、移植後に新しい血管循環路が早く成立することが移植成功のために必要となる。また、皮膚全層が切り取られた部位には通常さらに他の部位からの浅層皮膚片が移植される。状況によっては全層皮膚移植は有茎切除皮膚片を用いて行われる。すなわち、その際には弁状の全層皮膚がその基部を経由する血流を受けたままの状態で必要部位に植え込まれる。そして、移植された有茎皮膚片への新しい血流が確立したのちに、はじめて茎部切断を行う。)
- 500_13【Vastus lateralis muscle外側広筋;腓側広筋 Musculus vastus lateralis; Musculus vastus fibularis】 o: Greater trochanter, lateral lip of linea aspera.
→(外側広筋は4頭のうち最大で、大転子基部、粗線外側唇および大転子から発する表在性腱膜から起こる。膝蓋骨よりも近位で腱となり、大腿四頭筋の共通腱に合流する。また、一部の腱線維は膝蓋支帯へ放散する。)
Maissiat, Bandelette of
- 500_14Maissiat, Bandelette of【Iliotibial tract腸脛靱帯 Tractus iliotibialis】 Vertically oriented lateral thickening of the fascia lata extending from the anterior part of the iliac crest to the lateral condyle of the tibia. It receives fibers from the tensor muscle of the fascia lata and the gluteus maximus.
→(腸脛靱帯は大腿筋膜の補強層として腸骨稜から大腿外側を下行し、股関節と膝関節をこえて脛骨外側顆に至る。大腿筋膜張筋、大腿筋、中臀筋の腱性線維から起こり、脛骨への停止以外では、外側筋間中隔を介して大腿骨に付着する。また、腓骨頭や外側膝蓋支帯への線維もある。腸脛靱帯は大腿骨の牽引帯である。立脚期には体重が大腿骨を内側にくぼませる曲げの力として働く。腸脛靱帯の緊張は大腿骨を逆方向に曲げる力を生じ、大腿骨内側に加わる圧力と外側に加わる張力を大きく軽減する。中臀筋の収縮は骨盤の落込みを防ぐとともに腸脛靱帯を緊張させ、支持脚側への荷重が増すにしたがって牽引帯としての作用を発揮させる。)