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毛細管;毛細血管Capillary; Blood capillary(Vas capillare)

毛細管;毛細血管【もうさいけっかん;もうさいかん】 (毛細血管は、細動脈と細静脈の間にあって、多くの分枝、吻合を繰り返し、組織中を網目状に走行する、非常に細い血管である。その直径は8~10μmで、赤血球より幾分大きい程度である。毛細血管壁は内腔をつつむ1~3個の内皮細胞と、その外側にまばらに分布する周皮細胞とから構成されている。細動脈から毛細血管への移行は、中膜における平滑筋細胞の有無により、はっきりと区別されるが、毛細血管から細静脈への移行は徐々に生じ、両者を明確に区別することは困難である。多くの分枝吻合により、毛細血管網における血管表面積は、非常な増大を示す。表面積の増大とともに、血流に対する抵抗も大となり、血液はこの部位を、非常にゆっくり流れることになる。大動脈では血液は、平均320mm/sで流れるのに対し、毛細血管ではその約1/1000程度の速さでしかない。血液はゆっくりと流れながら、増大した血管内腔面に十分ふれ、薄い血管壁を介して、十分な物質交換を行うことになる。毛細血管壁の構造は、光顕による観察から、すべて同じと考えられていたが、電顕的には、主として内皮細胞の違いから、さらに3つに分けられることがわかった。それらは、連続型毛細血管、有窓型毛細血管、洞様毛細血管である。①連続型毛細血管continuous capillaryは最も普通にみられる毛細血管である。筋肉や結合組織、脳など、体の多くの部位に分布する。内皮細胞の核は核の部位でのみ厚く、その周囲は、連続した薄い細胞質よりなる。その厚さは通常0.1~0.2μm程度である。細胞質には細胞膜の陥入や、これらが中へ落ち込んで生じたと思われ60~70nm径の小胞がほとんどみられないものもある。血管壁の浸透性と関係があるようである。細胞と細胞の連結部では、細胞膜は一定の間隙を隔てて、まっすぐに、あるいはジグザグにかみ合っている。内腔側には閉鎖結合もみられる。またこの連結部には、内腔に向かって突出する、内皮細胞のヒダが時に観察される。これは辺縁ヒダmarginal foldとよばれるが、その機能については明確でない。基底膜は、内皮細胞の外側を完全におおっている。②有窓型毛細血管fenestrated capillaryは、内皮細胞の核部以外の、周囲に伸びる細胞質は連続型のものよりもっと薄く、かつ、その部位に、直径60~80nm程度の多くの孔が存在する。時にはもっと大きな径を示すものもある。腎臓、内分泌腺、超粘膜など、物質透過の盛んな部位に多く見られる。腎糸球体における毛細血管では、孔は、血管腔側と基底側の間を完全に通過するが、普通は、孔の途中に非常に薄い1層の隔膜が横切り、孔を閉ざしている。この隔膜の性質および機能については明らかでない。物質透過の際のフィルターの役割を果たしているのかも知れない。孔は、一定間隔に規則正しく配列するが、内皮細胞全体に一様に分布するのではなく、幾分細胞質の厚い、全く孔の存在しない部位が帯状に伸び、細胞表面を幾つかに区切っている。孔の分布の状態、数は組織により多様である。内皮細胞の外側にある基底膜は、連続型の場合と同様、孔に関係なく全体をつつむ。③洞様毛細血管は類洞ともよばれ、内皮細胞は器官を作る実質細胞に沿うようにして並び、したがって、その横断像は必ずしもまるくなく、不規則な形を示す。太さは多様であるが、他の型の毛細血管に比べ、かなり広い管腔をもち、その中を血液は、ゆっくりと流れることができる。内皮細胞には、その細胞質を貫通する、かなり大きな孔を有するものや、かなり開いた細胞間隙を示すものがあって、それらの部位を、巨大な物質も容易に通過することができる。基底膜はあまり発達せず、不連続な物やあるいは全く欠くもものもある。洞様毛細血管は、肝臓、脾臓、骨髄などでしられるが、内皮細胞は、各組織に固有の形態を示す。④毛細血管の透過性と構造との関係は毛細血管およびこれにつづく細静脈は、血管壁を通して、血液と組織の間で物質交換を行う部位である。心臓から毛細血管に至るまでの動脈、そして心臓へと戻る静脈は、いわば血液の通路であり、毛細血管網および細静脈の領域において初めて、血液循環の本質的な機能が含まれることになる。毛細血管では、内腔表面積は非常に増大し、総表面積が6,000m2、横断面績の総和は、大動脈のほぼ800倍にも相当するという。血液はこの広い内宮面にふれながら、うすい内皮細胞と、基底膜を通して、物質の交換を行うことになる。水や電解質など低分子物質は、これらの部位を静水圧や浸透圧、濃度勾配の差によって、自由に通過しうるが、これだけでは、組織を維持するのに十分とはいえない。蛋白質のような高分子物質は、直接膜を通過することはできず、これらが膜を通過するためには、特殊な機構が必要である。)

Rauber Kopsch

Band1(498; 513)

岡島解剖学

Pocket atlas of human anatomy

406(General terms一般用語)

現代の組織学171; 185; 189

R.V. Krstić(HMA)

 

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