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3. 胸内筋膜Fascia bndothoracica.

 これは肋骨と内肋間筋との内面を被っている繊細な結合組織性の膜であり,横隔膜の上面に移行している.胸郭の上部および背方部ではいくらかよく発達して厚くなっている.胸内筋膜は胸膜Pleura, Brustfellに被われ,腹壁の腹横筋膜に相当するものである.

第4群:頚部の筋Musculi colli, Muskeln des Halses, Halsmuskeln

1. 広頚筋Platysma. (図506, 512, 513)

 広頚筋(日本人の広頚筋を森田は129体について観察し,これをI(12.4%),II(7.1%), III(18.6%), IV(14.2%),V(10.6%),VI(19.5%), VII(15.9%), VIII(1.8%)の各型に分類した(森田信:解剖学雑誌 21巻,755~760,1943).)は薄い平たい皮膚筋であって,これは顔面にはじまり下顎骨の縁を越えて頚部に向い,皮下組織のすぐ下にあって,第2あるいは第3肋骨のところまで延びている.それゆえこの筋に頭部と頚部とを区別する.この筋の頚部は下顎骨の縁から線維が下方に向って分散し,鎖骨を越えて第2肋骨のあたりにまで延び,そこで皮膚に固着する.最も内側にある線維はオトガイ部で鋭角をなして交わっている.中頚部Regio colli mediaはこの筋に被われていない.その線維束は背方では肩部に達する.

 --広頚筋の顔面部については頭部の筋の項, 399頁410頁を参照せよ.

 神経支配:顔面神経による.

 変異:この筋は全部または一部が欠けていることがある.部分的な欠如の場合は筋の下部を欠いている(Gegenbaur, Chudzindsky, Bluntschli).両側の線維束の交叉はオトガイ部よりもさらに上の方にあることもあり,またもっと下の方にあることもある.これより深層にある第2の筋層がみられることはいっそうまれであり,そういう深層線維はもともと縦の方向に走り,耳介あるいは耳下腺咬筋部とのつながりをもつのである.

 広頚筋は哺乳類ではさらに広く発達している皮膚筋の残りとして現われているものであって,皮膚筋は皮膚の運動こあずかり,肉性被層Panniculus carnosusと呼ばれる.かくして広頚筋が少数の筋束をもって,この筋の普通に存在する範囲を越えて延びている場合が理解されるのである.このような例では広頚筋が頬骨弓にまで,または僧帽筋の停止にまで,あるいは第4肋骨にまでも広がっているのである.肉性被層に由来するところの過剰筋の発現形およびその機能ははなはだ広く大きいのである.

 Bluntschli, H., Morph. Jhrb., 40. Bd.,1909.

 --G. Ruge, 同上, 41. Bd.,1910, 43. Bd.,1911.

2. 胸鎖乳突筋M. sternocleidomastoideus, Brustschlüsselbeii muskel, Kopfwender. (図506, 508)

 僧帽筋は頭蓋を上肢帯の後部と結合させ,胸鎖乳突筋は(頭蓋を)上肢帯の前部と胸骨とに結合させている.

 この筋は力つよく発達していて,頚部を斜めの方向に走り,2頭をもってはじまる,すなわち胸骨部Pars sternalisをもって胸骨柄から,鎖骨部Pars clavicularisをもって鎖骨の胸骨端から起っている.鎖骨部は胸鎖関節の外側で鎖骨にはじまり,次第にその位置が胸骨部の下に移りこれといっしょになって乳様突起の外面および分界項線に沿って停止する.

 鎖骨部と胸骨部ならびに鎖骨とのあいだにある三角は,また皮膚の上でもくぼみとして見ることも触れることもできる.このくぼみは小鎖骨上窩Fossa supraclavicularis minorと名づけられている(図151).この三角の底には内頚静脈と総頚動脈とがある.

 神経支配:副神経ならびに頚神経叢によるのであって,つまりこの筋と由来を同じくする僧帽筋と同じ神経支配である.

 脊髄節との関係:副神経,C. II, III.

 作用:この筋が両側性にはたらくときには願を軽く上方にあげつつ後頭を前方に引く.(それゆえ主として空間における頭の位置を変えるが,頚部脊柱に対する頭の位置関係の変化はこれにくらべると少ない.)一側性にはたらくときには頭を反対がわに回し,かつ傾ける.頭を固定しているときには,吸気筋として作用する.

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最終更新日13/02/03

 

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