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指背腱膜DorsalAponeurose der Finger. (図544)

 指背腱膜は上に述べたことで分るように複雑なものである.つまりその組成には総指伸筋,虫様筋ならびに骨間筋の腱線維が関与しているわけである.

 総指伸筋の腱は次のような状態にある.すなわち中央にある1つの線維束(尖頭Zipfel)は中節骨の底に達するが,側方の2つの線維束は末節骨の底に固着している.これらの側方の腱束には,骨間筋(この筋が遊離しているかぎりでは)および虫様筋の腱の大部分が接着し,且つそれと融合し,かくして末節骨の底において停止するのである.しかしまた,これらの線維の一部は側方の筋束の下をへて中央の腱束に達し,これと合している.そのうえ基節骨の背面には関節包壁に続く弓状の結合線維が存在する.

 指背腱膜は指骨の骨膜とはただ疎性結合組織によって結合しているだけであるが,関節包の薄い後壁とは固くくつづいている.

上肢の筋膜Fasciae extremitatis thoracicae, Binden der oberen Extremität

 皮下の浅い筋膜はここでは問題外として,上肢の筋は1つの固い腱性の筋膜で包まれているが,この筋膜はこれに隣接する体幹部の筋膜と続き,いくつかの特徴を示している.

 肩部の筋膜Fascie der Schultergegendは肩甲棘,肩峰および鎖骨に始まり,背方では浅背筋膜と,前方では浅胸筋膜と直接に続いている.棘上窩と棘下窩とはそれそれ肩甲骨の縁と癒着する.1つの特別な筋膜板,すなわち棘上および棘下筋膜Fascia supra spinam et infra spinam(図484)に被われている.棘上筋と棘下筋はこれらの筋膜のすぐ下にあって,その一部はこれらの筋膜から起っている.

 肩甲下筋膜Fascia subscapularisは肩甲下筋を被っている.腋窩筋膜Fascia axillarisは胸部の筋膜の項ですでに述べた(390頁参照).

 上腕筋膜Fascia brachii, Fascie des Oberarmesは上腕のすべての筋を包んでいる強い線維性の鞘で,これらの筋からは容易に分離することができる.これは上腕骨の幹および両顆とは2つの筋間中隔によって結合している.橈側上腕筋間中隔Septum intermusculare brachii radialeは三角筋の停止部から下方に上腕骨の橈側上顆までのび,一方では上腕三頭筋と,他方では腕橈骨筋および上腕筋との間を深部に入る.橈骨神経および上腕深動脈はうしろからこれを貫いている.

 これよりいっそう強い尺側上腕筋間中隔Septum intermusculare brachii ulnareは烏口腕筋の停止部から上腕骨の尺側上顆までのびて,上腕三頭筋と上腕筋とのあいだに入りこんでいる.

 前腕筋膜Fascia antebrachiiは,肘部では浅層の屈筋および伸筋と固くくつづいている.肘頭,尺骨の後方の骨稜,および皮下にあって筋に被われていない橈骨の部分ではこれは骨と固く結合している.この筋膜の表面にはいくつかの細い,白い線が認められるが,これらは筋肉のあいだをわかついっそう小さい中隔のあらわれである.肘窩では上腕二頭筋腱膜の線維の集まりが屈筋の起始を被う筋膜の部分に放散している(図554).

 この筋膜は手関節の近くでその伸側に非常に強くなっている1つの線条部があって,これが背側手根靱帯Lig. carpi dorsaleである(図543, 544).この靱帯は力強い腱性の条からなり,この条は橈骨の掌側縁の下端から斜めの方向に尺骨の茎状突起, 三角骨および豆状骨に達している.

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最終更新日13/02/03

 

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