Rauber Kopsch Band2. 143   

2. 披裂喉頭蓋ヒダPlica aryepiglottica(図84, 86, 87, 192, 194)

 これは両側において喉頭蓋の側縁から披裂軟骨にのびるもので,喉頭の入口を側方から囲んでいる.左右のヒダの下1/4のところにはやや長い形の突出部があって,楔状結節Tuberculum cuneiformeという.それよりもっと後内側に小角結節Tuberculum corniculatumという第2の結節がある.これらの結節には同名の軟骨が存在する.左右の披裂軟骨のあいだに張っている粘膜のひだは正中面において切れこみをもっている.これは狭いものであるが横の方向に強くひろがることのできるもので披裂間切痕Incisura interarytaenoideaという(図87).

3. 室ヒダ Plica ventricularis, Taschenfalte(Taschenband, falsches Stimmband)

 喉頭の内部に強く隆起する粘膜のひだで対をなしており,脂肪組織・筋線維・腺を包んでいる.甲状軟骨から披裂軟骨に向かって前後の方向にのびている(図84, 194, 198, 201).

4. 声帯ヒダPlica vocalis, Stim mfalte (Stimmband) (図84, 194, 198, 201)

 これも対をなしており,鋭い縁をもって縦走する粘膜のひだで自みがかった色をしていて室ヒダの下方にあり,甲状軟骨からやはり披裂軟骨に達している.これは三角プリズムの形の声帯唇Labium vocaleという高まりの自由縁に相当している.声帯唇はそのなかに声帯靱帯と声帯筋をふくむのである.黄色をした声帯靱帯の結節がこのひだの中でわずかにすいて見えるが,そこを黄斑Macula flavaというのである.また披裂軟骨の声帯突起の先端も黄色くすいて見えるが,ここは特別に名前がついていない.声帯ヒダの自由縁が振動することによって音声が発せられる.

[図198]喉頭の前半部 前額断してその後半分を除去してある(1/1)

 1 喉頭蓋;2 喉頭蓋結節;3 甲状軟骨の板;4 輪状軟骨;5 第1気管軟骨;6 室ヒダ;7声帯ヒダ;8 喉頭室;9 喉頭腔の下部;10 甲状披裂筋.

喉頭粘膜の構造

 粘膜は全体として薄くて,白っぽいバラ色,ないし黄紅色を呈している.固有層は弾性線維に富んでいて,所により量に相違はあるがリンパ球が存在し,それがかなり大量に集まって喉頭リンパ小節Lymphonoduli laryngiciとよばれる孤立リンパ小節をなしている.上皮はほとんどすべてが多列絨毛上皮で,その線毛は咽頭の方に運動するのである.喉頭蓋の後面と披裂軟骨の内面,および声帯ヒダ(図201)のところだけには重層扁平上皮が存在する.声帯ヒダの固有層には縦走する高まりがたくさんあるので,この鐵嚢を横断して見ると,その高まりが乳頭と間違えられることがある.喉頭蓋の前面には多数の乳頭がある.これら2つのところは横断してみるとガラスの様に明るい繊細な基礎膜が上皮のすぐドにある.喉頭蓋の上皮には味蕾が少数に散在することが知られている.

 喉頭蓋の後面と披裂軟骨の内側では粘膜がしっかりと動かないようにくつづいている.側方部の下面ではそのくっつき方が弱くて特に披裂喉頭蓋厳嚢のところがそうである.

 ここでは粘膜は多量の疎性結合組織を被っており,これは窒息を突然にもたらす危険な浸潤の起る場所となる傾向をもつのである(声門水腫Glottisödem).

 喉頭粘膜の粘膜下組織は弾性組織に富み,その全体が喉頭弾性膜Membrana elastica laryngisと総称される(139頁参照).

 喉頭の粘膜には多数の喉頭腺Glandulae laryngicaeがある.

S.143   

最終更新日13/02/03

 

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