Rauber Kopsch Band2. 255   

輪走筋は尿道膨大部のところでもなおよく発達しているが,これがまず消失する.そして海綿体部の前部では斜走および縦走する束からなる網だけがみられるのである.

 前立腺部と隔膜部においてもすでに少量ながら海綿組織が形成されている.ところが海綿体部ではこの組織が著しい発達を示して,大きい場所をしめている(図322).

それゆえ尿道の海綿体部の海綿組織からなりたっている部分を尿道海綿体Corpus cavernosum urethraeというのである.

 この海綿体は初めと終りが太くなっている.後方の太い部分は棍棒状で,先に述べた尿道[海綿体]Bulbus corporis cavernosi urethraeをもってはじまる(図325).

前方の太い部分が陰茎亀頭である.これらの間にある中央の部分は亀頭に向かって少しずつ縮小している.

 尿道球はその上面をもって尿生殖隔膜に接着している.またその自由面は球海綿体筋で包まれている(図262, 266, 324, 333).なお正中部には線維性の隔壁,すなわち尿道球中隔Septum bulbi urethraeがあって,これは子供の陰茎ではよく発達しているが,前方にはあまり続いていない.尿道は尿生殖隔膜を通り抜けてから球の後部に上方から斜めに入りこんでいる(図266).

 前方の太い部分は釣鐘のような形をしていて,その外形は陰茎亀頭に一致している.またそこには正中線に隔壁があって,これを亀頭中隔Septum glandisという.

この太い部分の後面が深くへこんでいて,ここにはまず尿道海綿体の中央部が続いており,ついで陰茎海綿体の細くて丸い前端部をうけ入れている(図267, 325, 331).

c)陰茎海綿体Corpus cavernosum penis

 陰茎海綿体は陰茎体の大部分をなしていて,陰茎体の形と固さは主としてこれによって定まるのである.その後端はたがいに離開する2つの部分,すなわち[陰茎海綿体]Crura corporis cavernosi penisに分れている.脚はとがって終り,恥骨枝の結合部と坐骨枝の恥骨部に付着している(図267, 325, 333, 335).

 後部ではそれより前方の部分にくらべて線維性の被膜がそれほど丈夫ではない.それゆえ脚は充満されるといっそう容易にかつ強く広がり,あちらこちらに軽いふくらみを作る.海綿体の前端はとがっていて亀頭の凹面に囲まれており,固い結合組織によって亀頭に固く着いている.

 陰茎海綿体の尿道面には正中に沿ってかなり目立った縦の溝があって,尿道の海綿体部の大部分をうけ入れており,これと固着している.それより弱い正中の溝が陰茎背にある.この背面の溝の中央には筋膜下陰茎背静脈があり,その両側に陰茎背動脈があり,さらにもっと外側には陰茎背神経がある(図329, 330).

 陰茎海綿体の正中面には(不完全な)隔壁がある.これを[陰茎海綿体]櫛状中隔Septum pectiniforme corporis cavernosi penisという.これは後方では厚くて,とぎれていないが,前方になるとだんだん薄くなり,左右2つの空所を不完全に仕切っている.ここでは多数の垂直方向の裂け目があって,それが両側の各半の海綿組織がたがいに自由につながる場所となっている(図267, 334).

 外方をここにむ線維性の被膜,すなわち陰茎海綿体白膜Tunica albuginea corporis cavernosi penisは緻密な結合組織であって,白色をしており,厚さは1~2cmである.この厚さは陰茎の緊張する度合によって変化する.陰茎の勃起のときは1/4またはそれ以下に薄くなる.この白膜は浅層の縦走する束と,深層の輪走する束とからなり,その何れもが線維性結合組織で,これに多量の弾性線維をまじっている.

 陰茎提靱帯Lig. suspensorium penisと陰茎係蹄靱帯Lig. fundiforme penisについては図262第I巻図492を参照されたい.

S.256   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る