Rauber Kopsch Band2. 426   

この核の細胞は直径60µまでの大きさであり,その神経突起を舌下神経の根線維束のなかに送りだしている.これらの神経突起の一部はおそらくは交叉して正中線を越え,反対がわの根に入るのであろう.この核の腹側面で10~15本の根線維束が集まって腹方かつわずかに外側に向かって延髄を貫いて走り,前外側溝でその表面に達する.

脳と脊髄とにおける伝導路の概観

(この章はBechterewが第7版のために書き改めた.その後の版ではいつもわずかしか変えなかったのであるが,第15版の第3巻を新しく印刷するときにかなり大きい変更をなし,第16版ではR. Richter (Potsdam)の価値甚大な共同執筆により本文および図が特に大きく改められたのである.(原著註))

A. 大脳皮質の中枢

 大脳皮質の個々の領域の解剖学的構造は細胞の層形成(細胞構築Cytoarchitektonik)からも神経線維の分布(髄構築Myeloarchitektonik)からも決して一様ではなくて,場所によって大なり小なりの差異が存在する(412頁参照).さらに個々の伝導路の経過を研究することによって,大脳皮質の一定の領域はこれに入り(求皮質性の)またこれから出てゆく(遠皮質性の)一定り伝導路をもつことが明かにされている.

 個々の感覚器と一定の筋群には大脳皮質の空間的に境された一定の領域が対応している.この領域は領域Sphären,皮質領Rindenfelder,(精神作用のPsychisch)中枢Zentrenと呼ばれる.そのはたらきによって運動性の中枢motorische Zentrenと知覚性の中枢sensorische Zentrenとを区別することができる.また位置によって中心部,後頭部,側頭部および海馬部を区別し,これらの各部のあいだをたがいに隔てている広い区域のはたらきは目下のところまだわかっていない.その広い区域をFlechsigは皮質性連合中枢kortikate Assoziationszentrenと名づけたのである.

1. 中心部(前頭頭頂部)zentrale(frontoparietale) Zone

 これは中心前,後両回と中心勇小葉ならびに上,中,下3つの前頭回の後部および上頭頂小葉を包含している.そのうちで中心前回Gyrus praecentralis,中心傍小葉,これらと境を接する3つの前頭回の後部と頭頂弁蓋は筋運動中枢moromotorische Zentrenを有っている.くわしくいうとこの中枢は次のように分れる.中心勇小葉の前方部(図495)と中心前回の上部(図494)とには下肢の筋肉のための中枢があり,次いで上から下へ順次に体幹の筋,上肢,前腕,手,指の諸筋,口の筋,舌の筋の中枢がならんでいる.頭頂弁蓋には喉頭筋,咀嚼筋,咽頭筋の中枢がある.

 中前頭回の後部には字を書くときに必要な腕と手の筋の細かい運動の中枢がある.同じ中前頭回でさらに前方には頭の運動と眼球運動との中枢がある.

 別の意見によると書字中枢は中心前回で,手と指の運動の中枢のなかにあるという.しかし字を書くときには手と指の筋だけが活動するのではないということを考えるべきである.

 運動性言語中枢motorisches Sprachzentrum(ブローカの中枢Brocasche Stelte)は外側大脳裂の上行枝の周囲にあり,しかも右利きの人では左の半球に,左利きの人では右の半球にある.

 これが発音に必要なロ唇,口蓋,舌,喉頭の諸筋の比較的繊細な運動の中枢であるが,これらの筋の比較的粗大な運動の中枢は中心前回と頭頂弁蓋とにある.

 中心後回と上頭頂小葉とには筋覚の中枢があり,これが体感覚領域Körperfühlsphäreである.

 中心部の求皮質性の伝導路としては次のものがある:すなわち求心性の後根線維の続き,求心性の迷走神経線維の続きならびに舌咽神経,三叉神経,前庭神経の求心性線維の続きであり,これらの線維は脊髄,延髄,小脳,脳幹においてそれぞれ相当する核でニューロンを変えて上行し大脳皮質に達する.

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最終更新日13/02/03

 

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