Rauber Kopsch Band2.657   

2. 前庭Vestibulum, Vorhof(図689691, 695697)

 骨迷路の前庭は前方では蝸牛に,後方では半規管につながっている.前庭の内側壁は内耳道底に属する一方,外側壁は鼓室の内側壁に当たっている.

 外側壁では2つの孔が目立っている.これらは鼓室の観察(649頁)のときすでに外方から見たもので,上方の1つは腎臓形であり,下方のは円または三角に近い形である.前者は前庭窓Fenestra vestibuliで前庭腔に通じ,後者は蝸牛窓Fenestra cochleaeで蝸牛腔に通じる孔である.

 内側壁でまず目につくのは上下の方向に走る1本の隆線によって分けられた2つの浅いくぼみである.そのうち前方のくぼみの方が境界が鮮明で位置がやや低い.これは球形嚢陥凹Recessus sacculiとよばれて球形嚢をいれている.後方のくぼみはそれより大きくて卵形嚢陥凹Recessus utriculiとよばれ,卵形嚢がここにある.また上下の方向に走る隆線は前庭稜Crista vestibuliとよばれ,その上端は多少強く高まって前庭錐体Pyramis vestibuliをなしている.前庭稜の下方でやや後方に1つの浅い溝があって,これが1つの孔に通じている.この孔は前庭小管の内方の開口であって,前庭小管の前庭口Apertura vestibularis canaliculi vestibuliとよばれる.球形嚢陥凹のすぐ下前方には蝸牛への入口があって蝸牛陥凹Recessus cochlearisとよばれる.

 三つの半規管は5つの口をもって前庭の後壁に開いている. 図689にはそれが全部みえている.

 前庭錐体のところにはフルイのように孔があいていて卵形嚢膨大部篩状野Area cribriformis utriculoampullarisとよばれる.これは内耳道底の卵形嚢膨大部前庭野に対応している.球形嚢陥凹も1つの篩状野を呈し,これは球形嚢篩状野Area cribriformis saccularisとよばれて,内耳道の球形嚢前庭野に対応するところにある.

[図689]左側の骨迷路を開いたところ(×5)

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最終更新日13/02/03

 

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