893
- 893_01【Pyramidal tract錐体路 Tractus pyramidalis】 Tract arising from the cerebral cortex, especially from regions in the frontal and parietal lobes. It transmits activating and inhibiting impulses for voluntary motor function.
→(錐体路本来の定義に従えば、起始領域、終枝部位に関係なく延髄の錐体(pyramis)を通るすべての神経線維群をいう。鳥類以下には見られず、哺乳類とくにヒトでよく発達しており意識的運動を司る。これらの大部分の線維は大脳皮質からおこり脊髄におわる皮質脊髄線維(または路)からなるが、若干の線維は錐体の経過中またはそれよりも前方のレベルでの神経路から離れて脳幹にある反対側の運動性の脳神経核および付近の毛様体(皮質網様体線維)におわる。これらの皮質核線維とよばれるものは厳密には錐体路に含まれないが、しばしば両者(皮質脊髄線維と皮質核線維)を一緒にして錐体路とよばれる。錐体路の起始細胞は、昔からの考えによれば起始細胞は、運動領皮質(4野)の第5層の巨大錐体細胞(Betz)で、その経路は、終脳の内包、中脳の大脳脚、橋の橋縦束、さらに延髄の錐体を下行し、脊髄前角にいたる有髄線維の集まりの長下行路である。その経路中、橋核、脳幹の網様体や運動核、またおそらく大脳基底核などに一部側枝を与え、延髄下端で大部分(91~97%)の線維が交叉し(これを錐体交叉という)これらは対側の脊髄側索(錐体側索路、外側皮質脊髄路)を下るが、小部分はそのまま同側の前索(錐体前索路、前皮質脊髄路)を下行する。しかし、錐体路の大脳皮質の起始領野をみれば、運動領(4野)のみでなく知覚領や連合領を含む他の領野まで包括される。起始ニューロンもBetzの巨大細胞のみならず、第5層に、みられる中型・小型の錐体細胞も証明されている。さらに脊髄の終枝部位についても前角の運動ニューロンに直接おわるものは動物による実験的研究で判明した限りではむしろ少なく、大部分は中間帯や後核基部におわり、介在ニューロンを介して運動ニューロンに影響を与えると思われる(間接皮質運動路)。錐体路の起始・終枝の問題だけでなく、錐体を構成する軸索には、古典的な錐体路以外の錐体外路系の線維も少量ながら含まれており、厳密には、延髄の錐体を通る線維群(錐体路)とそれ以外の運動系(錐体外路)とに分けることはむずかしい。)
- 893_02【Secondary optic radiation二次視放線 Radiatio optica secundarius】
→(皮質視蓋路)
Gratiolet's radiation
- 893_02aGratiolet's radiation【Optic radiation視放線;後頭視床放線 Radiatio optica; Radiatio occipitothalamica】 Portion of the visual pathway leaving the lateral geniculate body. It passes through the occipital portion of the posterior limb of internal capsule around the posterior horn of the lateral ventricle to the visual cortex.
→(外側膝状体鳥距線維は外側膝状体の小細胞性部の細胞から起こり、内包のレンズ後部を通って視放線を形成する。これらの線維は鳥距溝の上、下両側で、有線野の皮質に終枝する。視放線のすべての線維が最短経路を通って皮質に達するわけではない。最も背方にある線維はほとんどまっすぐに後方に進み有線野に達するが、より腹方にある線維はまず前方、かつ下方に向きを変えて側頭葉の中に入って、側脳室の下角の吻側部の上に拡がり次いで後方に曲がり、側脳室の外壁に接して走り(外矢状層)、後頭葉の皮質に達する。最も腹方の線維が最も長い弧状の経路をとる。網膜の各領域は外側膝状体と正確な点対点の対応関係をもち、網膜の各部分は外側膝状体の局所的に限局された特殊な部分に投射する。網膜の上内側および上外側の両1/4の領域(視野の下半分に該当する)からの線維は外側膝状体の内側半に、また下内側および下外側の両1/4の領域からの線維は外側膝状体の外側半に終止する。黄斑からは、水平経線を通る面の両側で、外側膝状体尾尾側部において、クサビ形を領域に投射する。単眼視による三日月形の視野も含めて、周辺視野からの投射は、外側膝状体の吻側方に終わり、水平経緯線を越えて連続している。同様な点対点の関係は外側膝状体と有線野の皮質の間にも存在する。上外束の両1/4の領域(視野の下半分)に対応する外側膝状体の内側半は鳥距溝の上唇に投射し、しかも、これらの線維は視放線の下部を占める。黄斑からの線維は視放線の中間部を構成し、鳥距溝を囲む大脳皮質の尾方1/3の領域に終止する。網膜の中心傍野および周辺部からの線維はそれぞれ、更に吻側方の部位に終わる。網膜の一定のの場所に光点を停止させた実験的研究によって、次のことが明らかにされた。すなわち、網膜における視神経節細胞の受容野は同心円上に配列している。網膜においては、受容野は受容器である杆状体と錐状体ならびに単一神経節細胞の興奮性に影響を与える網膜の他のニューロンと関係している。網膜は、そこに存在する神経節細胞の数と同じほどの多くの受容野はいずれも次の2つの領域に分けられる。すなわち、①円形の小さい中心領域および②それを取り囲む同心性の領域で、周辺部、あるいは包囲部とよばれる部分である。これら2つの領域は機能的には拮抗している。受容野には一般に次の2型が記載されている。すなわち、①“開”を中心に“閉”を周辺に有する受容野および②“閉”領域を照射すると、神経細胞は活発に発火することになろう。もし、光刺激が、互いに抑制作用を示す“開”および“閉”の両領域を照射すると、それらの刺激は互いに無効になる。網膜の連絡は神経節細胞のレベルにおける同心円上受容野によく一致する。中心部からのインパルスは受容細胞、双極細胞および神経節細胞の間の直接結合によって伝達されるといわれ、他方、おれと拮抗的に働く周辺の領域は、無軸索細胞によって仲介される結合(すなわち、双極細胞と神経細胞の間の結合)を有する。外側膝状体のニューロンの受容野は光りの点を網膜の一定の場所に停止させた場所と類似しているように思われる。しかし、外側膝状体のニューロンは周辺の受容野に比較的大きな抑制を示す。外側膝状体の各層にある細胞は、同側、あるいは反対側、いずれかの一眼の受容野からの投射を受ける。外側膝状体の中の細胞で、両眼からの影響を受けるものは、たとえあるとしても、きわめて少ない。外側膝状体と有線野の細胞との間には受容野固有の重要な変形が生じる。有線野の細胞が“裂隙”光、あるいは、特定の方向に働く視覚模様に敏感である。有線野の中で起こる変形は、いろいろな作動様式をもった皮質細胞の柱状配列によるものであり、これらのはたらきによって、垂直形と水平形の中でのいろいろな変化が記号化される。)
- 893_02b【Corticotectal tract皮質視蓋路 Tractus corticotectalis】
→()
- 893_03【Frontopontine fibres前頭橋線維;前頭橋核線維 Fibrae frontopontinae】 Fibers from the frontal lobe lying in the medial part of the cerebral cms.
→(前頭橋核線維は大脳脚の内側1/6のところにある。前頭葉と橋をむすぶ線維。)
- 893_04【Temporopontine fibres; Temporopontine tract側頭橋線維;側頭橋核線維;側頭橋路;側頭橋核路;側頭部(皮質橋核路の) Fibrae temporopontinae; Tractus temporopontinus】 Fibers from the temporal lobe lying in the lateral part of the cerebral crura.
→(頭頂、後頭および側頭橋線維で、頭頂葉、後頭葉および側頭葉をなどから出て内方を通って下行し、大脳脚をへて同側の橋核終わる。)
- 893_05【Acoustic radiation聴放線;膝状体皮質路 Radiatio acustica; Tractus geniculocorticalis】 Part of the auditory pathway passing from the medial geniculate body to the transverse temporal gyri. It runs through the occipital part of the posterior limb of internal capsule.
→(聴胞線の線維は内側膝状体から内方の後脚の下部を横切って走り、側頭葉の中を垂直に上って行き聴覚皮質に達する。これらの線維はその際ある局在的配列を守っており、それに伴って内側膝状体の個々の部分は聴覚領の特定の領域へ投射している。聴放線聴放線の経過中にラセンを描く回旋が起こるために、内側膝状体の吻側部は聴覚領の尾側部へ、内側膝状体の尾側部は聴覚領の吻側部へ投射することになる。この回旋はサルでは実験的に、ヒトでは髄鞘形成の経過を追うことによって証明されている。)
- 893_06【Primary optic radiation一次視放線 Radiatio optica primarius】
→(膝状体皮質路+視床枕皮質路)
- 893_06a【Acoustic radiation; Geniculotemporal fibres; Auditory radiation聴放線;膝状体側頭葉線維;膝状体皮質路線維 Radiatio acustica; Fibrae geniculotemporales】 Portion of acoustic pathway from the medial geniculate body to the transverse temporal gyri (Heschl's transverse convolutions).
→(聴胞線の線維は内側膝状体から内方の後脚の下部を横切って走り、側頭葉の中を垂直に上って行き聴覚皮質に達する。これらの線維はその際ある局在的配列を守っており、それに伴って内側膝状体の個々の部分は聴覚領の特定の領域へ投射している。聴放線聴放線の経過中にラセンを描く回旋が起こるために、内側膝状体の吻側部は聴覚領の尾側部へ、内側膝状体の尾側部は聴覚領の吻側部へ投射することになる。この回旋はサルでは実験的に、ヒトでは髄鞘形成の経過を追うことによって証明されている。)
- 893_06b【視床枕皮質路 Tractus pulvinocorticalis radiatio optica】
→()
- 893_07【Anterior radiation of thalamus前視床脚;前視床放線 Radiatio anterior thalami】
→(前視床放線は視床ならびに前頭葉および帯状回の間の線維群。内包前脚を通る。)
- 893_08【Superior cerebellar peduncle (Brachium conjunctivum)上小脳脚;結合腕;小脳大脳脚 Pedunculus cerebellaris superior; Brachium conjunctivum; Crus cerebellocerebrale】
→(上小脳脚(結合腕Brachium conjunctivum)は主として小脳を出る線維からなる。その主体をなす線維は小脳視床路と小脳赤核路である。これらは主として歯状核から出て、腹内側方に進んで深部に入り、中脳下半で大部分交叉し、上小脳脚交叉(結合腕交叉)を作り、反対側の中脳被蓋を上行し、一部は赤核に終わるが(小脳赤核路)、一部はさらに視床の前外側腹側核に至る(小脳視床路)。なお上小脳脚の表面を前脊髄小脳路が逆行して小脳に入り、主としてその前葉に分布する。また鈎状束は室頂核から出て大部分交叉し、上小脳脚の背外側をへて鈎状に曲がり、下小脳脚内側部の上部に来て前庭神経各核にならびに橋、延髄の網様体内側部に分布する。)
- 893_09【Ventral lateral complex of thalamus; VL外側腹側核群(視床の) Nuclei ventrales laterales thalami】 Ventrolateral nuclear complex situated between the reticular nucleus of thalamus and the dorsomedial nucleus.
→(VL核とも呼ばれる。外側腹側核は前腹側核の尾方にあり、大、小のニューロンから成る。これらのニューロンは、この核の中における部位によって著しく異なる。この核は、これまでに更に、主要な次の2部に分けられていた。すなわち、①吻側部(VLo)、②尾側部(VLc)である。この中で最も大きな吻側部(VLo)には多数の濃宣する細胞が集塊をなして配列する。尾側部(VLc)には、細胞は少ないが、大型の細胞が散在する。サルで、前腹側核の大細胞部の尾方で外側腹側核の吻側部の内側方にある三日月形の視床領域は、”X野”と名づけられていて、線維結合に基づいて考えると、外側腹側核群の統合部であるらしい。外側腹側核の尾側部、”X野”および後外側腹側核の前部(VPLo)は、”細胞がまばらな”苔状の部分として呼ばれ、細胞学的に外側腹側核の吻側部、後外側腹側核の尾側部および後内側腹側核とは異なるものである。淡蒼球の内節から起こる神経線維は、視床束を経て、視床の外側腹側核に投射する。淡蒼球からの投射の大部分は、この核の前部、外側腹側核の吻側部に達する。淡蒼球から出る線維はまた吻側方には、前腹側核に投射し、中心正中核(CM)に側副線維をだす。これらの投射は、部位局在的に配列している。小脳核から起こり反対側の赤核を越えて上行する遠心性線維は視床束に入り外側腹側核の”細胞がまばらな”帯状部分(外側腹側核の尾側部、後外側腹側核の前部、X野)を構成している核群に投射している。単一ニューロンの研究では小脳核内のはっきりした体部位的機構を表さなかった。これらの遠心性線維をうける視床核では視床の体性感覚中継核のものと類似の体部位的表現をもっている。体の異なる部分は、内側方に、体の尾側の部分は外側方にと、系統的に表されている、四肢は腹側に表される。歯状核視床線にと中位核視床線維は同じ部位に終止するらしいが、それらの終末は重ならずに、組合わさった形式である。室頂核視床投射路は後交連の部位と視床の髄板内核の部位の両方かあるいはどちらか一方の部位で交叉する線維で、両側性である。視床の外側腹側核は中心前回の皮質からかなり多くの線維を受ける。サルにおける研究によって、大脳皮質の4野は、外側腹側核の吻側部、外側腹側核の尾側部および後外側腹側核の前部、ならびに中心正中核、中心傍核と外側中心核に投射することが証明された。大脳皮質4野から外側腹側核の尾側部への投射は、大脳皮質6野からの投射ほど多くない。6野は”X野”にも投射する。系統的な分析によれば後外側腹側核の前部と外側腹側核の尾側部からなる視床外側腹側核の”細胞がまばらな”帯状の部分は、4野に部位局在的に踏査していることがわかる。この核の内側部分からの線維が皮質の顔面野、外側部分からの線維が下肢野、また、中間部分からの線維が下肢野、また、中間部分からの線維が上肢および体幹腹現領域に至る。かくして、歯状核、栓状核および室頂核から視床への終止域は、ほとんど同じであって、一次運動野へのインパルスを中継する。淡蒼球の内節から入力を受ける外側腹側核の吻側部への皮質投射帯は外側腹側核の吻側部が補足運動野へ投射し、また運動前野に投射するのとは異なっているらしい。視床の外側腹側領域の、細胞構築学的に分けられたそれぞれの部分は、運動機能のいろいろな面に関係した皮質野へ投射している。)