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大脳皮質Cerebral cortex; Cortex of cerebrum(Cortex cerebri)

大脳皮質【だいのうひしつ】 It is 1.5-4.5 mm thick and consists of six layers in most places.(大脳皮質は終脳から発達し前脳の前方部を形づくる。大脳半球の表面をおおう灰白質で部位的に構造上、機能上の差違があり、一つの単位としての構造物とは考えられない。これらの差違に注目して、細胞構築学的、髄鞘構築学的(その他)に皮質分野に区分されるが、基本的には、主成分である神経細胞の分布の種類により、層構造を示す。大脳皮質は系統発生的に“古い”古皮質と原皮質とあり、両生類ではこれらの皮質部分のみが存在し、嗅覚系の機能に関連している。爬虫類になりはじめて新皮質が現れてくるが、哺乳類でとくに発達している。新皮質は系統発生的に新しい部分でしばしば等(同種)皮質(isocortex)ともよばれるが、個体発生の過程で少なくとも一度6層形成を示すことが特色である。高等哺乳類とくにヒトの大脳皮質の大部分は等皮質(新皮質)からなるが、そのうち、皮質の6層構造がそのまま完成した形として残る部分(同型皮質、homotypic cortex)と、錐体細胞層あるいは顆粒細胞層の二次的発達の程度により6層構造が不明瞭に形成される部分(異形皮質、heterotypic cortex)とに名称上区別される。これに対して、原始皮質および旧皮質は不等皮質(allocortex)とよばれ、個体発生のいかなる時期にも6層形成を示さない。これらの皮質の第2~4層に相当する部分の発達はきわめて悪く、ほとんど未形成である。なお、中間皮質(mesocortex)といわれる部分は、古皮質と新皮質との中間的・移行的構造を示す。以上に述べたように、大脳皮質の基本構造は6層構造にあるが、約110年前に、Mynertが、神経細胞間にみられる構造上の相違を基礎にして、分子層、外顆粒層、錐体層、内顆粒層および紡錘状細胞層の5層に区別し、その後、第5層が二分(Luys)または三分(Vogt)されたが、現在では1~6に皮質層を分け、それぞれ第一層(表在層、または分子層)、第2層(外顆粒層)、第3層(外錐体層または錐体細胞層)、第4層(内顆粒層)、第5層(内錐体層または神経細胞層)および第6層(多形細胞層)の名称を与えてる。一方、ヒトの大脳皮質の髄鞘染色標本で白質から上昇して皮質表面に放射状にすすむ髄縫線が通常第3~5層までみられる。これに対して表層に平行に走る線維束もみられる。これらには、第1層内の切線線維層、第2層と第3層間のKaes-Bechterew線条、さらにそれより深部に、第4層、第5層内に、それぞれ外および内Baillarger線がみられる。一般に内外Bailarger線は髄縫線と交わり、縫線間交織(supraradial feltwork)と称される。大脳半球は部位によって構造上大きな相違がある。大脳皮質といえるための必要条件としては次のような基準が考えられる(Pigache, R.M. 'The anatomy of "paleocortex". A critical review'. Ergeb. Anat. Entw. 43, 1970, 1-59)。①少なくとも3層からなること。つまり表層の神経線維層とそれに続く二つの細胞層があること。②各層は皮質表面に垂直方向異走る樹状突起や軸索により相互に連絡していること(柱状構造)。③接線方向と放射状方向の両方の結合があること。接線方向と放射状方向の2方向の結合があるということは、大脳皮質の細胞はまず脳軟膜面に垂直な円柱状に組織されており、さらにこれらの円柱がいっそう大きな機構に組み込まれているということである。大脳皮質と皮質とは同義ではない。大脳皮質は大脳の表面をおおう灰白質であり、皮質は一定の起立に従って組織された灰白質である。脳の嗅覚領域の一部には、上記の大脳皮質としての条件を満たしておらず単なる表層の灰白質にすぎない領域がある。大脳皮質の形成による主な成分は神経細胞体と神経線維であるが、そのほかの神経膠細胞、血管などがある。中心にした構造を細胞構築、有髄線維を中心にした層構造を髄鞘構築という。これらのうち細胞構築が特に重視される。皮質の厚さは1.5~4.5mmほどあり、脳回の縁の部分でもっとも厚く、脳溝の底で最も薄い。中枢神経の他の部位の灰白質と同様に、大脳皮質は神経細胞(錐体細胞、星状細胞、紡錘形細胞、カハールの水平細胞、マルチノッチ細胞)、神経線維、神経膠細胞および血管によって構成されている。大脳皮質は、(1)分子層、(2)外顆粒層、(3)外錐体細胞層、(4)内顆粒層、(5)神経細胞層(内錐体細胞層)、(6)多型細胞層の6層皮質を形成する。特定の領域の大脳皮質が、それぞれ特定の機能に関与するという大脳機能局在論cerebral localizationは、ウィーンの医師ガルFranz J. Gallを祖とする。ガルは大脳皮質の各部に様々な理性・感情・本能などの中枢を位置づけ、そのどれかが発達したヒトでは、その部分の頭蓋骨が外へ突出しているという理論から、知能や性格を頭蓋骨の外形によって判定できるとした(1786)。これが、ガルの骨相学である(ニセ科学と批判される)。ガルの死後30年の1816年のある日、パリの一病院に下肢を炎症で侵された老人が運び込まれた。診察に当たった外科医ブローカPierre P. Broca (1824-1880)を引きつけたのは、この男が言葉を理解し、手や指で応答は出来るのに、話すことは20年来全く不能だと言うことだった。タン・タンとしかいえないので、男はTanという名で呼ばれいた。タンは1週間で死ぬ。ブローカはタンの脳が言語中枢の局在に答えを与えてくれると思い、その脳を解剖したところ、左の前頭葉の後部、シルビウス裂溝のすぐ上に、脳軟化症の病巣が見られたのである。数ヶ月後にブローカは失語症の第2例を解剖する幸運に恵まれ、全例と全く同じ部分に脳出血巣を見いだし、「仰天にも近い驚き」を感じた。ブローカの運動性言語中枢の発見によって、大脳皮質の機能局在論は、実証的な根拠を得た。1870年にはE. HitzigとG. Fritzが、犬の脳の刺激実験によって運動領を発見し、局在説を決定的なものとした。大脳皮質の機能局在を人脳の手術の際に詳細に調べ上げたのは、カナダで(生まれと育ちは米国)、世界初の本格的な脳外科学を築いたペンフィールドWilder Penfield (1891-1976)だった。1928年にモントリオールのマックギル大学の外科学教授に着任した38歳のペンフィールドは、退職するまでの20年間に約2,000例の脳腫瘍や癲癇(てんかん)の手術を行った。彼は頭蓋骨を開き、脳を露出するときの痛みに対しての局所麻酔だけで手術し(脳そのものは痛覚がない)、患者と会話しながら、大脳皮質の機能局在を調べていった。当時のフィルムを見ると、ペンフィールドが露出された脳の表面に電極をあてて、何百カ所となく刺激しながら、患者に「これはどうだ?」「何か感じるか?」「今度はどうだ?」と尋ねていく。彼は医師なのか悪魔なのかわ

小解剖学図譜

人体局所解剖図譜 I巻

人体局所解剖図譜 IV巻

岡島解剖学

Pocket atlas of human anatomy

R.V. Krstić(HMA)

 

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